7月16日、JCが66歳で亡くなった。"白いズールー”と呼ばれた男の「アシンボナンガ」は私にとって20世紀で最も美しかった歌のひとつだった。合掌。
JCがすい臓ガンと診断されたのは2015年のことだった。その日から死を覚悟して、最後のアルバム("King of Time" 2018年)も作ったし、最後のコンサートツアーもした。"最後の”と銘打っても、アルバムを買う人もコンサートに来る人も、当人が亡くなるまで"最後”は実感しない。しっかりとそれを悟っていたのは本人だけだ。4年間の闘病だった。この孤独な闘いのことを、2018年9月にパリ・マッチ誌のインタヴューで語っていて、そのインタヴュー記事全文がJCの死の直後ウェブ版パリ・マッチに再録された。そのうち、最後の2つの質問の部分だけ、以下に翻訳する。
(パリ・マッチ:今日あなたにとって最も気がかりなことは何ですか?)
JC - 私の家族にとって私の病気がどれほどつらいものか知っている。2015年に家族は私の旅立ちを覚悟していたが、私は生き残ることができた。今日みんなが私の最後が近いことを知っている。最悪なら数ヶ月、最良でも数年のことだ。意志に反したこととは言え、私は家族にいつもプレッシャーをかけていたんだ。「パパはいつ逝ってしまうの?」「彼にはどれくらいの時間が残されているの?」ー 最も耐えられないのはその答えを知らないことだ。私はこの病気が私の体の中で爆発してしまうだろう瞬間のことを恐れている。こういった問題を自問すると私は混乱を起こしてしまう。なぜなら私はこの病気に勝つことはないのだから。私は絶壁から飛び降りる前の、執行猶予状態にあるのだ。
(パリ・マッチ:この試練の中にあって、音楽はあなたを支えていますか?)
JC - コンサートをしている時はもちろんそうだ。私は世界と再びコネクトした状態にあり、私は自分の仕事をしているんだから。でもそれは以前と同じ感触ではない。私は死を背負っていて、そのことを人々は知っている。彼らは私にお別れを言いに来てるんだ。今はとても甘美さと苦味の混じった時期だ。でも、前に進まなければいけない。世界中から送られてくるメッセージのすべてに私はありがとうと答えることはできない。彼らはこの最後の段階に立っている私にとても良いことをしてくれたのに、私はこの段階への準備がまだ出来ていないんだ。私は多くの人々に知られた公のパーソナリテイーかもしれないが、私は今、いまだかつて経験したことのない最も孤独な瞬間を生きている、と悟っている。死神に向かって私はたった一人だ。つまるところこの立ち位置はとてもズールー的なんだ….
(↓)「アシンボナンガ」1997年フランクフルトでのコンサート。ネルソン・マンデラがサープライズでステージに現れる。アパルトヘイトは終わった。
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