2012年8月31日金曜日

女性器の反逆と書いてプッシー・ライオット

 プッシー・ライオットの事件は、大体のところは日本でも報道されたし、日本語版ウィキペディアにも詳しく記述されているので、ここでは詳しく述べません。2012年2月21日、モスクワのロシア正教・聖救世主教会大聖堂に、この反体制闘士のパンク・バンドが闖入し、パンク的に聖母マリアへの祈りとして「プーチンを放逐したまへ」と歌うパフォーマンスを挙行したというのが、この事件の発端です。1分ほどで警備員に取り押さえられてしまったこのパフォーマンスの映像は YouTube を介して世界中に伝播されました。
 その結果バンドのフロントウィメンたる目だし帽の3人の女性、マリア・アリョーヒナ (Мария Алёхина) 、ナジェージダ・トロコンニコワ (Надежда Толоконникова)、エカチェリーナ・サムツェヴィッチ (Екатерина Самуцевич)が逮捕され、6ヶ月の拘置の末、8月17日の裁判で「破壊活動」と「宗教的憎悪煽動」の罪で2年間の収容所での強制労働刑の判決が出ました。アムネスティー・インターナショナルをはじめ世界の人権団体がこの不当に重い判決に抗議し、マドンナ、ビョーク、ポール・マッカートニー、スティング、小野洋子などの著名アーチストたちもプッシー・ライオット支援の声明を上げています。
 では一体この覆面ねえちゃんたちは何を歌って重刑判決を受けたのでしょうか。ロシア語からではなく、フランス語訳からの又訳になりますが、以下に訳出します。
聖処女よ、プーチンを追い出したまへ
神の母たる乙女よ、プーチンを追い出したまへ
プーチンを追い出したまへ、プーチンを追い出したまへ
黒の僧衣に金色の肩飾りをつけた男に
すべての信者たちは這いつくばって頭を垂れる
自由の亡霊は空の彼方
ゲイ・プライドはシベリアに送られて鉄格子の中
KGBの長官こそが彼らの聖者
異議を申し立てる者たちを護衛つきで牢屋に送り
聖なる教会会議の決定に背かないために
女たちは黙って子供を産み、愛さなければならない
糞、糞、神の糞
糞、糞、神の糞
神の母たる乙女よ、フェミニストになりたまへ
フェミニストになりたまへ、フェミニストになりたまへ
腐敗した指導者たちへの教会のへつらい
黒塗りリムジンの中での宗教儀式
説教者はおまえの学校にやってくる
授業にやってくる - 彼に金を持たせてやれ!
総主教グーンディエフはプーチンを信じている
卑劣なやつ、そんなものより神を信じられないなんて
聖母の帯は政治集会の役はしないぞ
聖母マリアは私たちと共にあって抗議している
神の母たる乙女よ、プーチンを追い出したまへ
プーチンを追い出したまへ、プーチンを追い出したまへ

 権力におもねる正教会の腐敗、プーチンの圧政を手助けする正教会、これを告発するために聖母マリアに祈ったわけですね。これをロシアの司法当局は "Hooliganisme"(スポーツ競技の過度に熱狂した観衆が起こす破壊行為。転じてこの場合は単純に破壊行為)と断定したのです。
 
ナント生まれの女性シンガー・ソングライター、ジャンヌ・シェラル(1978 -   )が先週緊急でプッシー・ライオットに捧げる曲を作り、ワン・テイクで録音して YouTubeに公開しました。これも祈りの歌です。プッシー・ライオットが聖母マリアに祈ったやり方とは全く違う祈り方ですが、これは女の祈りです。

おお、ピンク色の目だし帽をかぶった私の姉妹たち
大胆にもモスクワっ子
この祈りはあなたたちのため
あなたたちの怒りと嫌悪のため
あなたたちの毒のこもった詩のため
あなたたちのおまんこの叫び
あなたたちの狂ったダンス
身内としてあなたたちに喝采と感謝を言うため
女戦士たち、解放された女たち
そんなプッシーたちがいる限り
乱暴でセクシーなヒロインたちがいる限り
女戦士たち、解放された女たち
憤激する女たち、屈服しない女たちがいる限り
希望は約束されたものよ
あなたたちのために私は祈るわ
心と性器と頭と中指を使って祈るわ
あなたたちのために私は祈るわ
心とおまんこと頭と中指を使って祈るわ

 女の反逆を「プッシー」で。ジャンヌ・シェラルは女として性器の反逆に連帯したのですね。すばらしい連帯でしょ。フェミニスト万歳。

(↓ジャンヌ・シェラル『プッシーたちがいる限り』)