
フランス語でも日本語でも娘(13歳)がちゃんとした文章を書けないということを私はずっと気にしていました。書けないということは自分の中に何も書くことがないということなのか。友だちへの手紙でも、学校の作文でも、どうやって書いていいのかわからない、というのがそれまでの娘で、しかたなく私は手伝ったりヒントを与えたりして、なんとか自分で書くということの糸口を見つけてやろうとしていました。この夏の終わり、やっと本を読む喜びを少し覚えたらしく、今読んでいる本(ハリー・ポッターの少女篇のような、魔女見習いの少女のラヴストーリー)が面白いと盛んに言うので、「そういうストーリーって自分で考えられない? 自分で自由に物語を作ってみれば?」と勧めたら、2日かかって短い3頁くらいの創作ストーリーを手書きで書き上げました。
私は娘を祝福し、今度はこのストーリーをもっとふくらませて書こうね、と「ロングヴァージョン」をお願いしています。30秒フィルムから2分フィルムぐらいにするように、シナリオに細部の出来事を足して行こうね、と。
親ばかと言われてもかまいません。私はここに娘の初めての創作作品を公開します。そしてそれが数日後、数週間後にどれだけシナリオとして肉付けされるかも公開したいと思います。これは娘セシル・カストールのプロトタイプ作品です。原文はフランス語です。日本語訳は私がしました。
『リラのヴァカンス』 − 文:セシル・カストール
その日、私がコロニー(ヴァカンスの集団旅行)に行くということを母は寂しがった。そして父も。でも私はそこに行かなければならないかのようにその申込みをしたのだ。引率者がアルファベット順に子供たちの名前を呼んだ。私の名前が呼ばれ、私はバスに乗り込んだが、その前に私の父母と妹に別れのあいさつをした。バスの中でひとりの少女が私に手で、自分の隣においでと合図をした。バスでの道中、私たちは知り合いになった。
私たちのキャンプ地に着いて、カミーユという名のその友だちはシャレーの寝室で同室になった。そして同じ部屋にジュリー、アニー、アナイス、ジョアンナという子たちがいた。部屋の中には二つのシングルベッドと二つの二段ベッドがあった。
「私が端っこのベッドを取ってもいい?」とジュリーが私に聞いた。
「別にいいわよ。でもそこにいる子は誰?」と私は少女たちに聞いた。
「あれはニーナよ。でもあの子はちょっといやな子なの。私たちにとってはね」とジョアンナが言った。
私たちの引率員はセリーヌという名前で私たちは「セセ」とあだ名していたが、彼女は私たちに食堂で夕食を取るように告げた。私はそこで可愛い男の子を見つけ、アニーにその子の名前を聞いたら、ジョスランという名前よ、と答えた。ジョスランは私たちのテーブルの女の子たちを知っているから、女の子たちに寄ってあいさつをし、そして私にもボンジュールを言った。ジョスランは私の目をまっすぐに見つめた。それは私にとって雷の一撃のようだった。そしてそれは彼にとっても同じであってほしい、と私は思った。
次の日、私たちはジョスランの部屋の子たちと一緒にフットボールをした。その午後はみんなで浜辺に行った。ジョアンナとアニーが海に行っている間、私たちは日光浴をしていた。
ジョスランとその友だちが私たちに寄ってきて、ビーチヴァレーをしないかと誘ってきた。もちろんチームは男女混合で、私はジョスランのチームに入った。やった!私たちのチームが勝った。そして私は坐って休もうとその場を離れたら、ジョスランがもう一回試合をしようと私に言った。もちろん私は断らなかった。
数週間して、自由時間にセセが私たちに手紙を配っていた。その時ニーナがやってきた。「何が欲しいの?」と意地悪にアナイスが言った。すると彼女は「私の両親に手紙を書きたいから、誰か紙をわけてくれない?」と言った。アナイスは「残念だけど誰も持ち合わせていないわ」と言った。アナイスは「ニーナは何か違うことをたくらんでいるのよ」と小声で私に言った。
その夜はダンスパーティー(ラ・ブーム)、ジョスランはそれまで何も私に聞かなかったのに、噂をすれば影、彼は私の方に向かってきて「僕とダンスしてくれない?」と聞いた。私は「OKよ、素敵だわ」とジョスランに言った。
次の日は出発の日だった。私は身の回り品をトランクに詰めていたら、ジョスランが近づいてきた。そして帰りのバスの中で隣の席に坐ってもいいかい?と聞いた。私はもちろんOKよと言った。
引率員が全員の名前をアルファベット順に呼んで、私はバスに乗り込みジョスランの隣に坐った。
バスが着き、辺りを見たら父がいないのに気がついた。バスを降りる前、私はジョスランの顔をじっと見つめた。そしてバスを降りて母と妹のところへ駈けて行った。「お母さん、お父さんはどこにいるの?」すると母は「お父さんは仕事の遅れでまだ事務所にいるのよ」と言った。私たちは家に向かって歩きだした。とても悲しくて、同時にとても満足だった。
- Fin -