2007年9月18日火曜日
セーヴルの午後
9月16日(日曜日),天気予報は「今季最後の夏の陽気ですから大切に」と言うのでした。最後の夏の光,こういう詩的でメランコリックなことを言われると,その日は太陽を慈しんで一日外にいたくなります。実際素晴らしい晴天でした。私は3週間前から始めた日曜朝のフッティングのために早起きをして,一緒に走ってくれる娘を起こそうとしたのですが,起きてくれまっせん。学校の勉強(今学期からスペイン語も始まりました。娘がちゃんと学習している言語は仏語,英語,日本語,スペイン語と4カ国語になりました。)も忙しいし,ピアノやフィギュアスケートも忙しいし,週末くらいゆっくり寝かせてあげたら,とタカコバー・ママは言うのでした。You are quite right, my dear。私はしかたなくドミノ師だけを連れて,向かいのサン・クルー公園へ行きました。
いつものように公園敷地内に入ったところでドミノ師から鎖を外して自由の身にしてあげます。普段は娘と一緒なのにこの朝は私と犬様だけです。娘は犬様を自分の弟のように思っているから,命令も監視の目もちゃんとしていますが,私は犬様と同じように娘やタカコバー・ママに命令されたり管理される側なので,犬様は私を同類のように思っているかもしれまっせん。さあ,走り始めました。私は自分の中高年リズムでストライド走法で走ります。サン・クルー公園はマロニエの大木並木や噴水やたくさんの石膏立像や見事な階段滝池があったりで,走っていて周りを見るだけで目は全然飽きません。私は一度振り返ってみました。するとドミノ師はずっと遠くにいて,走らずにこちらに向かってトコトコ歩いてくるのです。垂れ耳を蝶々のようにひらひら揺らしながら,トコトコトコトコ歩いてくるのです。こらあっ,先生,ちゃんと走ってくださいよぉっ!!! と声をかけると,ちょっと早足で走り気味になるのですが,かりそめにも猟犬種に生まれた犬ならば,獲物追うような走りを見せてもらいたいものです。師が5メートルぐらいの距離に近づいた時に,私は前方に向き直し,再び走り始めました。
約3分間,私は私のコースを進んで行ったら,前方の大きな草地(8月末にROCK EN SEINE フェスが開かれたところです)に移動遊園地が来ていて,射的スタンドや種々のアミューズメントができていました。私はそれを避けて右にコースを変え,丘の方に昇っていきました。そして振り返ると,なんたることかドミノ師の姿がないのです! 私は来た道を引き返し,その周囲の草地や林の中を探しまわったのですが,その姿はありませんでした。センセ〜〜〜〜イっ!!!! 私は大声で何度もその名を呼びました。J'ai crie, crie, センセイ! pour qu'il revienne。「すみません,ちょっと太めのジャック・ラッセル犬見ませんでしたか?」私はいろいろな人に聞きましたが,ネガティヴなお答えばかりでした。
私はパニック状態に陥り,タカコバー・ママと娘に電話をしてすぐにこっちに来て一緒に探してくれるよう頼みました。そして走ったコースをもう一度往復してみたのですが,結果は同じでした。かれこれ15分ほど探していたでしょうか。ひょっとして,と思って,私が行かなかった移動遊園地の敷地内に入っていきました。そこは午後開場なので午前中は客はいません。屋台スタンドの裏側に留められたキャラバンに住んでいる移動遊園地で働く人たち(これをフランス語では forains フォランと言い,辞書には縁日興行師,露天商人といった訳語が載っています)が朝食を取っていたりしました。「すみません,だいぶ太めの白黒犬を見ませんでしたか?」そうやって聞いた3人目の人が,look there, maaan ! にこっと笑って指差した方向を見ると,師はなに喰わぬ顔をして,垂れ耳を蝶々のようにひらひら揺らしながら,トコトコトコトコこちらに歩いてくるのでした。私はすべての神と悪魔の名において,この犬様に呪いの言葉をかけ,ポケットに入れていたドッグ・ビスケットひとかけをさしあげたのでした。..... バ カ ヤ ロ ー .....
二度と犬様とフッティングはするまじ,と心に決めた日の午後,年に一度の Journees europeennnes du Patrimoine (欧州文化財の日)で,博物館・美術館・議事堂・官邸などが無料でガイドつきで見れる日だったので,私たちはわが家からセーヌ川を挟んだ向こう岸の町,セーヴルに行き,この辺りでは珍しい仏教寺院(Pagode de Tinh Tah 静心禅寺)を見に行きました。お数珠を持って,その気で行ったのですが,訪問する人たちも少なく,ちょっと珍妙なお寺様で,私たちの心が清まらず,お賽銭も小額にして退散しました。その後,焼き物の町セーヴルの大モニュメント,国立セーヴル陶芸博物館(↑写真はその入口です)に行きました。ここは博物館の後ろに昔からのセーヴル焼きの大工房を保存しているところで,今でも19世紀から残っている窯炉を使って陶器を焼いています。その焼き物の工程をひとつひとつ,アトリエで働く職人さんたちの説明を聞きながら見ていきました。いいですねえ,伝統の巧に,こんなに近距離で触れられるなんて。アメリーさんよりずっと心が豊かになりますね。
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2 件のコメント:
大変ご無沙汰しております。
5年分位の色々があった夏がやっと過ぎました。 我が家の犬は寝たきりになって早2ヶ月です。 昔はドミノ師同様に散歩の途中で勝手にコースアウトしたり、家出して一晩帰って来なかったり、大変でしたけど、lこうやって寝たままで起き上がることが出来ない姿を見ていると、「少しぐらい飼い主を困らせてもいいから、好きなだけ走り回っておいで」と、思います。 だから、余りドミノ師を叱らないでね、ツシマさん。
Tomiさん,コメントありがとうございます。わが家の犬様はてんかん,アトピー他いろいろ持病があるので,ずっと甘やかしていたのが,猟犬タイプをアパルトマンで飼うということ自体が最初の間違いだったかもしれません。いろいろとストレスはためているようです。思いっきり走ったという姿はこのところ本当に見ていません。草っ原でほんの数秒間ぐるぐる回って走る程度です。人間の走るスピードというのは,犬には難しい速度でもあるようです。
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