2010年11月8日月曜日

最後に愛は勝つ



ARESKI BELKACEM "LE TRIOMPHE DE L'AMOUR"
アレスキー・ベルカセム 『愛の勝利』


 (これから12月末までのカテゴリー<<新譜を聞く>>はすべて今年のベストアルバムですから)

 ブリジット・フォンテーヌの伴侶にして「共犯者」のアレスキー・ベルカセム(70歳)の40年ぶりのソロアルバムです。40年に2枚のアルバムを作る。どうして急に? という質問には,それまで作ろうという気がなかっただけで,なんとなく楽しそうだから,作る気になった,というような,この朴訥で「なんとなく」な人柄をよく伝える理由をぼそっと言ったりします。
 この人,ヴェルサイユで生まれてるんです。信じられないでしょ? 単にこの「生地」のことだけでも,アレスキーという謎めいた人の意外性を浮き出させますよね。どこで生まれたの? - 「ヴェルサイユ。」 - ええぇっ!? となりますよね。
 この人,ちゃんとコンセルヴァトワールで音楽を学んでいて,ミュージシャンとしてデビューしているんですね。これも意外ですよね。なんとなく学ばなくても生まれた時からのほほんとした音楽を身につけていたような感じがするのです。
 すごい偏見ですかね。ブリジット・フォンテーヌは少女の頃から岸田今日子みたいだったはず,という偏見と同じですね。
 優しい前衛,人肌の温度の前衛,アレスキー/フォンテーヌの持つヒューマンなイメージって一体何だったんだろうか,という問いへの答がこの70歳アレスキーのアルバムにわかりやすく展開されているように聞きました。
 だって,このアルバムを聞かなければ,ブリジット・フォンテーヌのレパートリーの多くがシャービを土台にしていた,なんてこと気がつきませんでしたよ。これはもうシャービなんて言葉じゃなくても,70年代からこの人たちとつきあっているうちに染み込んでしまったわれらが内なるオリエント/アラブ・アンダルーズなんだなあ,と思いました。
 夫唱婦随,ブリジットと同じような抑揚で,同じような声で,同じようなエモーションで歌うアレスキー・ベルカセム。実はリーダーシップはこっちだったんだなあ,と納得する11曲。ほとんどスタジオライヴ状態で録音された,とライナーに書かれていますが,演っている人たちが実に良い音を出してます。マルセル・ロフルールのアコーディオン/バンドネオン,ヴァンサン・セガル(ブンチェロ)のチェロ,ディディエ・マレルブ(ゴング)の笛,ハキム・ハマドゥーシュのマンドリュート,ヤン・ペシャンのディストーション・ギター...みんなアレスキー節を演るためにミュージシャンになったような感じの音ばかり出すんですよ。すごいなあ。老成した音楽ばかり。アレスキーが磁場を作っているのですねえ。10曲めの幻覚トリップの詩"CE SOIR-LA"のサウンドデザインをジャン=フィリップ・リキエルがしてるんですが,なんともサイケデリック。ああ,われらがセヴンティーズという感じがします。
 そして最終曲のフォンテーヌ作詞の「愛の勝利」。勝利しちゃってますよぉぉぉ。

<<< トラックリスト >>>
1. MAGICIEN MAGICIENNE
2. L'AIR DE RIEN
3. LES FRAISES
4. LE ROCKER
5. SALOME
6. LA SEINE
7. LES BABOUCHES
8. LE BILLET
9. ON N'A QU'A DIRE COMME CA
10. CE SOIR-LA
11. LE TRIOMPHE DE L'AMOUR

ARESKI BELKACEM "LE TRIOMPHE DE L'AMOUR"
CD UNIVERSAL CLASSICS & JAZZ FRANCE 4764135
フランスでのリリース:2010年10月25日


(↓ 2010年10月26日,パリ,カフェ・ド・ラ・ダンスでのアレスキーのライヴの一部)

Areski Belkacem live
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