2025年12月31日水曜日

2025年の1曲:鼻で笑う

Théodora "Ils me rient tous au nez" (Live version, feat. Chilly Gonzales)
テオドラ「みんな私を鼻で笑う」(ライヴ・ヴァージョン、feat. チリー・ゴンザレス)


From mixtape "MEGA BBL" (Réédition)
(2025年5月29日リリース)


テオドラは今22歳。コンゴ民主共和国(RDC)出身の両親のもと、ルッツェルン(スイス)生まれ、RDCコンゴとフランスの二重国籍、17歳の時から音楽アーチストとして活動しているが、大ブレイクは2024年、TikTokに端を発した"Kongolese Sous BBL"の大ヒット。この"BBL"とは3つの意味で使っているが、この歌では Brazilian Butt Liftという臀部のヴォリュームを大きくする整形手術の意味で、肉感セクシーを誇示する女性たちをあっけらかんと体現してしまっている。またテオドラの別源氏名で Big Boss Ladyを自称しているのだが、奇天烈エキセントリックなイデタチのアフロ黒人女性たちのリーダー格を自認している所以。そして初アルバムで連作として展開される Bad Boy Lovestory もBBLのひとつ。
  この”Bad Boy Lovestory”をタイトルにした13曲33分のテオドラ初のアルバム(彼女はアルバムではなく Mixtape と呼んでいる)がリリースされたのが2024年11月1日。これに「みんな私を鼻で笑う Ils me rient tous au nez」のオリジナルヴァージョンが収められている。それはそれで悪くないのであるが。
 その7ヶ月後、(フランス最高の人気を誇るマルセイユのラッパー)JUL、今や中堅大物女性SSWジュリエット・アルマネなどを招いて、12トラック31分を追加した増補版アルバム”MEGA BBL"(25トラック66分)を2025年5月29日にリリースしている。これがまた大ブレイクで、フランスのアーバンミュージック専門アワード”Les Flammes"賞で最優秀新人女性アーチストに選出され、さらに2026年4月の4日間のパリ・ゼニット(キャパ7千)のコンサートチケットを15分で完売した。世界的には(ビルボードによると)”フランス語”アーチストとしてアイヤ・ナカムラに次ぐ第二位のリスナー数を獲得している。いやはや、短期間で大変な出世を成し遂げたのである。
 さてこの"MEGA BBL”の最終の25トラックめに収めされているのが、チリー・ゴンザレスによるピアノ+ストリングスアレンジ+プロデュースで録音された「みんな私を鼻で笑う Ils me rient tous au nez」のライヴヴァージョン(3分)なのである。


J'ai souvent trop donné
私はしょっちゅうやりすぎるのよ
Ils me rient tous au nez
みんな私を鼻で笑う
Quand je les traite d'ingrats
彼らのことをつまらない奴らとあしらうと
Ils disent qu'ils m'avaient pas sonné
おまえのことなんか何とも思わないと言われる
Pourtant, j'suis juste passionnelle
でも私は激情的なのよ
Au point d'en perdre sommeil
眠気を失ってしまうほどに
Si j't'aime et que ça va pas
あなたが好きで何かうまく行かないんだったら
Sans demander, je te passe mon aide
頼まれなくても、私はあなたに助け舟を出すわ
Mais comme moi, personne n'aime
でも私と同じように、誰も好きじゃないの
Toi non plus, rien de personnel
あなたも同じ、全然個性的じゃない
Tes messages donnent hyper sommeil
あなたのメッセージは過剰に眠気を誘うのよ
Donc j'ai le plaide et le bon sommier
だから私にはブランケットとベッドが要るの
Pourtant, j'suis juste passionnelle
でも私は激情的なのよ
Au point d'en perdre sommeil
眠気を失ってしまうほどに
Si j't'aime et que ça va pas
あなたが好きで何かうまく行かないんだったら
Sans demander, je te passe mon aide
頼まれなくても、私はあなたに助け舟を出すわ

Les super vilains l'sont pour une raison
超タチ悪がそうなのは理由あってのこと
Moi, j'suis une garce née, un peu trop garçonnée
私は生まれついてのあばずれ、ちょっと男勝りすぎた
Méchante à cause de la pression qui me monte au nez
むかつくプレッシャーのせいで意地悪になるのよ
Trop gentille, tous me frappent
優しすぎると、みんなに叩かれる
C'est moi qu'ai tendu le putain de bâtonnet
私がその忌々しい棒を差し出したのよ
Stationne devant mon cœur, évite de sonner
私の心の真ん前に立って、音を出さないで
Les problèmes m'ont déjà fait perdre sommeil
既にいろんな問題が私の眠気を失せてしまったの
Mon cœur est resté seul plusieurs longues semaines
私の心はもう何週間も孤独のまま
Pourtant, j'ai pleuré, personne m'a tendu sa main (mh-mh)
でも私は泣いたのよ、それでも誰も手を差し伸べてくれなかった
Mais comme moi, personne n'aime
でも私と同じように、誰も好きじゃないの
Toi non plus, rien de personnel
あなたも同じ、全然個性的じゃない
Tes messages donnent hyper sommeil
あなたのメッセージは過剰に眠気を誘うのよ
Donc j'ai le plaide et le bon sommier
だから私にはブランケットとベッドが要るの
Pourtant, j'suis juste passionnelle
でも私は激情的なのよ
Au point d'en perdre sommeil
眠気を失ってしまうほどに
Si j't'aime et que ça va pas
あなたが好きで何かうまく行かないんだったら
Sans demander, je te passe mon aide
頼まれなくても、私はあなたに助け舟を出すわ
Pourtant, j'suis juste passionnelle
でも私は激情的なだけなのよ
Au point d'en perdre sommeil
眠気を失ってしまうほどに

何度聴いても、この2行のところで涙が迸り出る。これはこういう歌なのだ。ゴンザレスのピアノとストリングスもおおいに泣かせる。そしてテオドラの歌も泣いている。2025年、私はこの歌で何度泣いたことだろう。バス/地下鉄の中のヘッドフォンでやってしまったこともある。
(↓)YouTubeに載ってたゴンザレス+テオドラのアコースティック・ヴァージョン。



テオドラ、エモーションをありがっとう。2025年はこの歌の年だった。

0 件のコメント: