2008年3月31日月曜日

それでも地球は回っている



 ラフェエル『ラファエル天動説』
 Raphael "Je sais que la terre est plate"


 ラファエル・アロッシュ(1975- )の4枚目のスタジオアルバムのはずです。2005年の『キャラヴァン』の後で2枚ライヴアルバム出してますが,聞いていません。2007年1月には"Les aventuriers d'un autre monde"(別世界の冒険者たち)(ジャン=ルイ・オーベール,リシャール・コランカ,アラン・バシュング,ダニエル・ダルク,カリ...)のツアーに参加してますが,見ていません。オーベール,バシュング,ジェラール・マンセ,ステファン・エシェールなどからチヤホヤされる人で,テレビにもかなり良く出ますし,スターアカデミーも出ましたし,ラジオはNRJ(80年代から聴取率最高を続ける音楽FMネットです)が強力プッシュです。一体どうしてこんなことになったのでしょうか。
 爺がラファエルのことが気になるのは,何をさておいても「きれいな子」だからです。それだけかもしれません。それだけでも十分に価値はあるはずなんですが。
 ミリオンセラー『キャラヴァン』の次なので,ある種黙っていてもある程度は売れるアルバムのはずです。11曲35分(!)。そのうち1曲はインスト(11曲目 "Transsbérien"),テレラマ誌ヴァレリー・ルウーは,このインスト曲が一番いい,なんていうちょっと皮肉な評で採点は「ff」でした。この音楽にこんなに贅を凝らしていいのか,というようなメンツです。プロデュースがトニー・ヴィスコンティ3曲,ルノー・レタン3曲,ラファエル4曲となっています。前作に引き続きデヴィッド・ボウイのギタリスト,カルロス・アロマール,同ベーシスト,ゲイル・アン・ドーシー。ピアノにスティーヴ・ニーヴ(エルヴィス・コステロ),ドラムスにリシャール・コランカ(テレフォヌ),トニー・アレン(フェラ・クティ),パーカッションにミノ・シネルー,ゲストヴォーカルにトゥーツ&メイタルズのトゥーツ aka フレデリック・イベール,ギター&コーラスその他でステファン・エシェール...。ミュージシャンリストだけで29人います。
 そういうアルバムだと思って聞きますよね。たしかにいろいろ繊細なサウンドが聞こえてきて,スラヴ風味もあれば,カントリー風味や東洋趣味もあります。ラファエルにおなじみのテーマである「旅への誘い」であります。ただ,毎回のボロンボロン・ギターのマイナー3コード進行,メジャー3コード進行,少年系鼻声のナイーヴなヴォーカル,この子は限界ありますよ。
 その限界というのがこのアルバムでは「世界の限界」なのです。ラファエルにとって世界は平らなのです。"Je sais que la terre est plate"(地球は平らだということを僕は知っている)。どこかに世界の果てがあって,そこまで行ったらストーンと落ちてしまうんですね。こういうテーマで始まっておいて,10曲目"Les Limites du Monde"(世界の限界)では,最終的に「地球は丸い」ということに同意してしまいます。少年のナイーヴさと言うには,なにか,これ,とても... バカにすんなよ,という気持ちになってしまいます。
 娘(13歳)にこのアルバムを聞かせました。『キャラヴァン』は娘は大好きだったので,期待して聞いたようですが,聞き終わっていみじくも言いました。

  C'est limite-limite.

 この繰り返しがいいですね。Limite-limite(リミットリミット)は,日本語の繰り返し語と同じニュアンスで「すれすれ」「ぎりぎり」なんですね。好きか嫌いかと言われたら,私は嫌いと言ってもいいんだけど,なんか許していいか,という限界のところですね。


<<< トラックリスト >>>
1. Le vent de l'hiver
2. Je sais que la terre est plate
3. Adieu Haiti (featuring Toots)
4. Le petit train
5. Sixième étage
6. La jonque
7. Quand c'est toi qui conduis
8. Concordia
9. Tess
10. Les limites du monde
11. Transsibérien (instrumental)

CD DELABEL 5201020
フランスでのリリース:2008年3月10日

ラファエル・オフィシャルサイト

 
 

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ご無沙汰しております。某fanサイト管理人です(^^)
ラファエルの話題がありましたので(自分のBLOGも忙しさのあまりほったらかしなのに)つい出てきてしまいました・・(^^;

カストール様にご提供頂きました音源でラファエルを、CARAVANを初めて知った私ですが、あの曲には聴くたびに、心の深い所を抉られるような強い切なさと郷愁感、果ては虚無感・諦観みたいな感情さえ覚えます。毎回3分30秒ほどの心の旅に出かけております(^^)。大、大好きな曲となりました。

今回のレビューを拝見して、なつかしいトニー・ヴィスコンティなどの名前を見て興味津々な私ですが内容は・・・な感じなのですね。創造の世界においてアーティストが自分を超えて行くのは本当に大変なのですね・・・。

Pere Castor さんのコメント...

某ファンサイト管理人さん,
コメントありがとうございます。
このエントリー書いた後で知ったんですが,このアルバムの日本盤が出るようです。日本盤ボーナスで「キャラヴァン」の日本語ヴァージョン(辻仁成という人が日本語詞を書いて,ラファエルに歌唱指導をしたのだそうです)が入っているという話です。耳にする機会がありましたら感想お聞かせください。

匿名 さんのコメント...

こんにちは ラファエル君、ふ〜ん新作出たのかと思ってますが、よく考えると日本でもライヴに行っているしオランピアでも見ているから僕はファンなのかもしれません。それで贔屓目で見ているのかもしれませんが、今回のアルバムそんなに悪くないし、特にシングル曲を聴いたときは期待大!でした。ポーリーヌ・クローズのセカンドもそうだけれども、話題作や売れたのの次って地味になりがちではないでしょか。それで後年になるとマニア受けのカルトなアルバムになったりするの。たとえが大物過ぎるけれどもベートーベンの交響曲8番とか。

匿名 さんのコメント...

カストール様、レスをありがとうございます(^^)

日本語バージョンが出るとはちょっと驚きです。それも辻仁成さんとはっ。私も一応この方の名前だけは知っておりますが(中山美穂さんの旦那さんでパリ在住という事も(^^;)、ただ彼の在籍したバンドは私のテイストとはちょっと違っていたため正直あまり興味はありませんでした(^^;。

でも作家として成功されている方ですし、元々音楽から出てこられた方のはずですので今からちょっと期待しております(^^)。

話は飛びますが、これもカストール様からの情報で知ることが出来ましたあの映画「コーラス」があまりに気に入ってしまったため、今まで映画のDVDを買うことなどめったになかった私でもこのDVD(スペシャル・エディション)をどうしても手元に置きたくなって購入してしまいました。カストール様のお陰で私の人生に新たな彩りが加わりました。どうもありがとうございましたm( )m


かっち。様、はじめまして。
ラファエルさんて来日してたのですね。全然知りませんでした・・・。