2010年11月29日,ギタリストのセルジュ・テッソ=ゲーが脱退表明。ヴォーカリスト,ベルトラン・カンタとの「情動的、人間的、音楽的な不一致 désaccords émotionnels, humains et musicaux」が原因と言いました。それに加えてセルジュはこの数年間にバンドの中に存在した「ある種の露骨な感情 un sentiment d'indécence」という言葉も使っています。おそらく獄中および出獄後のベルトランの挙動に、もう理解不能のものを見ていたのだ,と解釈できます。 この時点でメディア(ラジオ,新聞雑誌のインターネット速報サイト等)は、もうノワール・デジールの最後を予告していました。単にギタリストの脱退ではなく、バンドがもう立ち行かないことは明白だったようです。 翌日11月30日,ドラマーのドニ・バルトが、他の二人(ベルトラン・カンタとベーシストのジャン=ポール・ロワ)の意向をも代弁する形で、3人からの正式発表として開口一番「Noir Désir, c'est terminé ノワール・デジールは終わった」と告げたのでした。「明白でない理由のために、人工心肺を使ってノワール・デジールを延命させることは不可能だ」と。
平年気温より7度低い数日間で、朝は零下,昼の最高気温でも2度〜4度というのが先週から続いていて,それが今週一杯続くという予報です。私は雪国育ちの分際で寒さにからきし弱く(実は暑さにはもっと弱い)、こういう天気の時は、ヴィヴァルディ『四季』の「冬」を聞きながらこたつで丸くなる、というのが常です。最近,日本茶の茶請けに「ダット」(干しナツメ。北アフリカ系のエピシエで良く売っている)がよく合うというのを発見して、渋茶とダットが午後4時頃の習慣になりました。 昨日の日曜日は午後いっぱいかけて,ゼラニウムやあじさいやラベンダーなどのベランダの鉢植えに越冬用の覆いをかけてやりました。この覆いをかけてやっても、ゼラニウムは翌春まで延命したためしがないのですが、3季節がんばって咲いててくれたんだから、愛情だけはかけてあげませんと。 マルセル・カンピオンがラジオのコマーシャル・スポットで、今年も大観覧車,クリスマス市,氷の彫像館「アイスマジック」があるから,シャンゼリゼにおいで、と宣伝しています。シャンゼリゼは電飾ライトアップがかねてから世界的に有名ですけど、このカンピオンの「クリスマス村 Village de Noel」企画が始まって以来,わしら西洋かぶれだった東北田舎のガキどもが夢見た,まさにそのままの「ウィンターワンダーランド」が現出してしまったのです。 そう言えば,わが家の向かいのドメーヌ・ド・サン・クルーの(冬に何度か雪化粧する)白い森も、ガキの私が夢見ていた「ウィンターワンダーランド」に似ているでしょうね。たぶん雪の精が棲んでたりするんですよね。
PAPET J vs RIT "PAPET J POINT RIT"
パペー・ジ vs リ『パペー・ジ ポワン・リ』
まずニュースから。
マッシリア・サウンドシステムのライヴアルバムが2011年4月4日に出ます。CD+DVDのセットで、CDは1996年の未発表ライヴ、DVDは2008年7月のカルパントラでのライヴ映像。
タトゥー(ムッスー・T)と共にマッシリアの双頭リーダーでMCのジャリ(パペー・J。本名ルネ・マッザリーノ)の、サイド・プロジェクトで「パペー・J & ソレイ FX」に続くアルバムです。ソレイ FXと言っても実体はバンドはないのでほとんどソロ・プロジェクト(機械じかけのラガ)であった前作に対して,今回はマルセイユ1974年生れの若きマルチ・インストルメンタリスト,Rit(リ)とのデュオです。アルバムのタイトル字の大きさや,ジャケの顔写真の大きさから判断しても、リ君の方が同格以上の目立ち方です。
リ君の経歴を見ますと、ブルース/ロックをベースにしながら、ベナンのバンドと共にベナン,ギネア,アルジェリアなどを回ったこともあり、楽器テクとスタジオワークに長けた「ひとりオーケストラ」的なミュージシャンで,ギター使いやオーケストレーションで"-M-”(マチュー・シェディド)に近いものを感じさせます。
アルバムは10曲めの"PAUVRE DE NOUS"(マッシリアの2001年アルバム"3968CR13"の中の1曲でジャリ/タトゥーの作品)のリプリーズを除いて,全曲パペー・J/リの共作ということになっています。タトゥー/ブルー組(ムッスー・T&レイ・ジューヴェン)に触発されたのでしょうか、ギターが良く鳴るブルース・ロックが3曲あります。(私の先入観では、ジャリの守備範囲とはちょっと違うような気がします)。
マッシリア流儀に近い「港町シャンソン」系の9曲め「カバノン」(マルセイユ海浜地区の小別荘というよりむしろ小屋住宅)が美しいし、これもマッシリア流儀である世相批判の曲が3曲(3. "PRESSEIONS/REPRESSION", 4. "HUMANITY", 7. "A QUOI BON")。そして前述の"PAUVRE DE NOUS"(10曲め)あたりが、怒れる「マッシリアのジャリ」をモロに感じさせてくれます。
しかしその他は、リ君と全く新しい冒険に挑んでいるような、新しいサウンドに遊ぶジャリの顔です。そりゃあマシーンだらけのラガ仕立てだった「ソレイFX」に比べたら,たいへん多種多様な音楽で、ひとえにリ君の力なんでしょうが、そのヴァラエティーにおいてはムッスー・T&レイ・ジューヴェンとレヴェル的に近いように思えます。願わくば,パペー・ジャリがもっとはっきりした主導権を発揮してくれないと、リ君のサウンド遊びにジャリのキャラクターが希薄化されることになりかねません。
終盤4曲(9-10-11-12)すべて好きです。
<<< トラックリスト >>>
1. RUELLES
2. FIN DE SEMAINE
3. PRESSION / REPRESSION
4. HUMANITY
5. SUR CETTE TERRE
6. JE REVE
7. A QUOI BON
8. VOODOO CHILD'S
9. CABANON
10. PAUVRE DE NOUS / POURQUOI? (VERSION 2010)
11. HEY GUS
12. JE M'ESCAPE
PAPET J vs RIT "PAPET J POINT RIT"
CD ROKER PROMOCION RP1003
フランスでのリリース 2010年10月18日
(↓)『パペー・ジ・ポワン・リ』のオフィシャル・ヴィデオクリップ "FIN DE SEMAINE" Fin de semaine - PapetJ.Rit | Clip officiel envoyé par visiontrouble. - Regardez la dernière sélection musicale.
FAMILY OF THE YEAR "OUR SONGBOOK" ファミリー・オブ・ザ・イヤー『アワ・ソングブック』
タイトルの出典は1971年のコカ・コーラ社のキャンペーンソング"I'd Like To Teach The World To Sing (In Perfect Harmony)"の日本語題で、ザ・ニュー・シーカーズ等が歌っておりました。今聞くと虫酸が走りますが。 ファミリー・オブ・ザ・イヤーは加州のバンドです。中心人物のジョセフとセバスチャンのキーフ(Keefe)兄弟はウェールズ系らしいです。この「キーフ」という名前に、フランスの某音楽雑誌は(こじつけで)反応して、現代フランスの若い衆言葉である「Kif」(キフ = 好き,愛する)と同じ語幹を見取って,新しい時代の「ラヴ&ピース」にふさわしい名前である,なんて言うんですね。 第一音を聞いた時から,けばいフラワー・ペインティングを施したVWミニバスで行く、陽光あふれる加州で出会うインド綿チュニック着た長髪族男女が,半分眠ったような目で微笑みかけてきて、花をめしませ、めしませ花を、なんていう世界へトリップさせる音楽です。スティーヴン・タイラー(エアロスミス)は、このバンドを称して「アシッドをやっているママス&パパス」とたとえました。まさに。この男性4人+女性2人のアコースティック・バンドの第一の武器は混声コーラスハーモニーです。ママス&パパス,ビーチ・ボーイズ,(転向後の)フリートウッド・マック、(転向後の)ジェファーソン・スターシップ,すなわち加州のポリフォニー。 2009年に加州のWashashore Recordsというインディーレーベルから出た4曲入りEP"Through the Trees"とフルアルバム"Songbook"からセレクトした14曲を、フランスのインディーレーベルVOLVOXが新しいジャケットアートで包んで2010年11月にリリースしたのが,この『アワ・ソングブック』というアルバム。 この2〜3年,MGMTやアーケイド・ファイアの台頭をうれしい思いで見ていた爺のような愛サイケの人たちが飛びついたアルバムです。これは決してザ・ニュー・シーカーズあたりにノスタルジー持っている人たちが買ったアルバムではありません。RADIO NOVAは夏頃からエレクトロ・サイケな "PSYCHE OR LIKE SCOPE"をヘヴィー・ローテーションで、このバンドをいち早くフランスで紹介しました。もろビーチ・ボーイズな"SUMMER GIRL"も夏の終わりに聞いたら涙ものでしょう。来年夏,ROCK EN SEINEに来てくれたらなあ、と密かに期待しております。
<<< トラックリスト >>> 1. LET'S GO DOWN 2. INTERVENTION (STAPLE JEANS) 3. STUPIDLAND 4. PSYCHE OR LIKE SCOPE 5. FEEL GOOD TRACK OF ROSEMEAD 6. SUMMER GIRL 7. THE PRINCESS & THE PEA 8. CASTOFF 9. TREEHOUSE 10. SURPRISE 11. CHUGJUG 12. THE BARN 13. NO GOOD AT NOTHING 14. HERO
FAMILY OF THE YEAR "OUR SONGBOOK" CD VOLVOX VOL1008 フランスでのリリース:2010年11月
(↓ "STUPIDLAND" オフィシャル・ヴィデオクリップ)
PS : 2011年1月10日。 Radio Novaで昨秋おおいに流行った「サイケ・オア・ライク・スコープ」のオフィシャル・クリップが完成。往年のニュー・エイジっぽさが...。マジなんでしょうか。
早いものです。バベットのソロアルバム『Drôle d'Oiseau奇妙な鳥』は3年前(2007年)のことだったのですね。その年最も印象に残ったアルバムの1枚なのに、ブログに紹介されていなかったのは、このブログ開設前に出ていたアルバムだったからでした。
ディオニゾスのヴァイオリン奏者。最初はなぜこんなノイジーなバンドに、普通の娘っぽい佇まいのヴァイオリニストがいるのか、とても不思議でした。超強烈な個性とエゴと才能の持ち主マチアス・マルジウ(ディオニゾスのリーダー)の影で,10年も一緒にやっているのはよっぽどのことだと思いますよ。その間にマルジウはオリヴィア・ルイーズの公私とものパートナーになってしまいましたし。オリヴィア・ルイーズの才能の開花というのはマルジウに超ラジカルに触発されてのこと,というのは疑いの余地がありません。私はオリヴィア&マルジウのカップルは、今フランスで最も輝いているように見ています。
そう言えばマチアス・マルジウの小説『時計じかけの心臓』が,リュック・ベッソンのプロデュースで3Dアニメーション映画化が進行していて、2012年公開だそうです。亡くなったバシュングを除いて、CDアルバムに出演した人たち(オリヴィア・ルイーズ,マチアス・マルジウ,グラン・コール・マラード,エミリー・ロワゾー、ロッシー・デ・パロマ,ジャン・ロッシュフォール...もちろんバベットも)が全部そのまま声優となって出るようです。その映画サントラの音楽の一部をバベットも担当するのだそうです。(リュック・ベッソンという偏見を捨てて)この映画非常に楽しみです。
さてバベットは、そういうマルジウ路線とはっきりと一線を画する,さわやかなフォーク・アルバムをソロ第一作として発表したのですが、2010年のこのセカンドアルバム『ピアノ怪獣』は、ポップで物語性があり、なにか『時計じかけの心臓』にも近いものを感じさせるアルバムになっています。近いもの、と言うよりは、マチアスには『時計じかけの心臓』みたいな大作ができたけれど、私には鼻歌でこんなのができちゃったのよぉ、というお茶目な対抗意識みたいなものが感じられます。
13曲中6曲がデュエット曲(12曲め"TES YEUX DANS CE BAR"では、マチアス・マルジウとアンディー・メストルとバベットの掛け合いなのでトリオ曲ですね)という構成では、どうしてもソロアルバムというより,ミュージカル仕立て/昔のジャック・ドミー映画風な雰囲気がまさります。前作のような生ギター主導のフォーク風な音が後退して、ピアノ(まあ一種の主役ですから)やストリングスが小アンサンブルとなってバックを固め,その上に少女の物語がモノローグやダイアローグになって歌われる,という作りです。ディヴァイン・コメディー(ニール・ハノン)みたいでもあり、小劇場のオペレッタみたいな雰囲気もあります。
ピアノ弾きの少女はたった一度の弾き間違いのために、ピアノ怪獣に囚われてしまいます。アルバムはこう始まります。こういう始まりですと、少女がさまざまな知恵を働かせて,いろいろな人たちの助けを借りて,このピアノ怪獣から逃げ出す冒険物語のようなものを期待するじゃないですか。ところが進行していく歌の歌詞を追っていくと、そういう筋書きのはっきりしたストーリーではなくて、夢の中の話のように、いろんなところに飛んでしまうので、絵本的結末などなく、拡散してしまうのです。あるいは、このアルバムは来るべき大作『ピアノ怪獣』物語の断片的挿入歌集なのかもしれません。
共演するメンツはヒュー・コルトマン(英国のフォーク・アーチスト,元THE HOAX)、アンディー・メストル(モンペリエのバンド,フーディーニのリーダー)、男優エドゥアール・ベール,アルチュール・アッシュ,そしてディオニゾスのマチアス・マルジウ。
ベース(ステファン・ベルトリオ)とドラムス(エリック・セラ=トジオ)はディオニゾスのメンバー。そしてこのアルバムのバベットに次ぐ準主役とでも言うべきピアニスト氏はシルヴァン・グリオット(クラシック/コンテンポラリー/エクスペリメンタル系のピアニスト/作曲家のようです)。プロデューサー(フランス語で言うところのréalisateur)は超売れっ子のジャン・ラモート(バシュング,ラファエル,ノワール・デジール,ヴァネッサ・パラディ,サリフ・ケイタ....)。
マルジウの『時計じかけの心臓』に比べてはいけないのでしょうが、物語という点では全然弱いものの、不思議の国のアリスみたいな飛び方はバベットの個性とよくマッチしていると思います。この個性的な鼻歌ヴォーカルと、マルジウより豊かであろう楽識がしっかり裏打ちしたようなメロディーが、バベットという不思議なキャラクターを作っています。
ベストトラックはエドゥアール・ベールとのデュエット『Le Miroir』(7曲め)。11-12-13曲は3つともとても好きな曲ですが、もっと工夫があってほしい(もっとドラマティックであってほしい)。ひょっとしてバベットはソングライター/コンポーザーとしての方が資質がもっとはっきり発揮できるかもしれない、とも思いました。これは前々からケレン・アン・ゼイデルに対して思っていたことでもあります。
<<< トラックリスト >>>
1. PIANO MONSTRE
2. LES AMOURATIQUES (feat. HUGH COLTMAN)
3. LA COULEUR DE LA NUIT
4. JE PENSE A NOUS
5. CIEL DE SOIE (feat. ARTHUR H)
6. LA CHAMBRE DES TOUJOURS
7. LE MIROIR (feat. EDOUARD BAER)
8. MEXICO (feat. ANDY MAISTRE)
9. LAIKA (feat. ARTHUR H)
10. LONDON INEDITE
11. LE BEL ETE
12. TES YEUX DANS CE BAR (feat. MATHIAS MALZIEU, ANDY MAISTRE)
13. UNDERWATER SONG
BABET "PIANO MONSTRE" CD V2 / UNIVERSAL MUSIC FRANCE 2749783 フランスでのリリース 2010年9月27日
Abd Al Malik "CHATEAU ROUGE"
アブダル・マリック『シャトー・ルージュ』
2007年の大統領選挙で社会党セゴレーヌ・ロワイヤル候補が負けた時に、敗因のひとつに彼女の「声」があった,という説がありました。ロワイヤルの声に魅力が乏しい。仮に全く同じ演説を,サルコジの声で聞くのとロワイヤルの声で聞くのでは、サルコジの声の方がはるかに人を説得させるものがあるだろう、という説でした。たしかにそういうものがあると思います。しかし,その説に触れて,元TVジャーナリストでベルナール・クーシュネール現外相の夫人,クリスティーヌ・オックランは「声は訓練で直すことができる」と言ったのです。すなわちセゴレーヌ・ロワイヤルはその訓練を怠って,声を修正しないまま選挙に臨んで負けた,と。
アブダル・マリックがラップでもスラムでもなく、「歌」を歌う時,私はあの声はどこに行ったのだ?と戸惑ったのです。スラムでビロードの声が出せても、歌うとそれが出ない。非常に奇妙な感じがしたのです。これではMCソラールではないか,と。
そしてこれには賛否両論が出るであろう,ということは前もってアブダル・マリック自身が知っていました。テレラマ誌のシャンソン欄ジャーナリスト,ヴァレリー・ルウーのインタヴューに答えて,アブダル・マリックは自身の大転換を「初めてエレクトリック・ギターを持ったボブ・ディラン」になぞらえたのです。おいおいおい!
前2作のアルバムに比べれば,確かにラジカルな変化です。しかし彼が「歌う」ことは、ボブ・ディランがエレキを持つことではないでしょうに。そして,もっと「歌う声」を形成してからの方がよかったのではないか、という気がします。
不満はあれど、新しい方向に踏み出たアブダル・マリックはやっぱり面白いのです。彼にとっての「ヒップホップ」は、あらゆるものが溶け込んでもいい音楽であり、彼がジャズやポエトリー・リーディング(スラム)やシャンソン(グレコ,ブレル)をその中に溶け込ませたように、また哲学やヒューマニズム全体への考察をライムに溶け込ませたように、今度は「歌」(ポップ〜ヴァリエテ)とエレクトロとダンスビートを大胆に溶け込ませたのです。
共犯者としてプロデューサーにチリー・ゴンザレス。効果的かつ小気味よいポップに仕上げるには、今日ゴンザレスほどの適任者はいないかもしれません。それがアブダル・マリックの持ち味とうまく調和するか,というのが問題ですが、私はすべてが成功したとは思えません。
英語を混ぜるのは、やはりこの人の本領ではないのではないか、と思います。モリエールの言語だけでやってほしいなあ。
14曲のアルバムで,新奇のグルーヴや、異種交配実験や,歌うエレポップみたいなもの中で,祖父の死でルーツ回帰してしまう「ヴァランタン」(1曲め)、ガキの頃の自転車競争で事故った思い出「ディナモ」(6曲め。自転車なのでどことなくクラフトワーク"Tour de France"みたいなバックトラックが妙におセンチで)などスラムものが私にはやはり一番しっくりくるようです。そしてアルバムタイトル曲の14曲め「シャトー・ルージュ」は、ジェラール・ジュアネスト(ジャック・ブレルのピアニスト,ジュリエット・グレコの夫)との再会で,ジュアネストのピアノ(作曲はジュアネスト自身)を伴奏にした12分の散文詩(叙事詩)リーディングです。雨の音やドアのしまる音や往来の音,想像したら簡単に絵が見えてしまうラジオドラマのような、懐かしくも情感も語彙も豊かな詩人の世界。絶対これが本領でしょうに、と納得させるための曲でしょうか。それとも「俺は何も変わっていない」という証拠を残したかったんでしょうか。
<<< トラックリスト >>>
1. VALENTIN (Abd Al Malik / Bilal)
2. MA JOLIE (Abd Al Malik / Wallen)
3. MISS AMERICA (Abd Al Malik / Bilal)
4. MON AMOUR feat. Wallen (Abd Al Malik / Wallen)
5. LE MEILLEUR DES MONDES / BRAVE NEW WORLD feat. Primary 1 (Abd Al Malik, Primary 1 / Bilal)
6. DYNAMO feat. Ezra Koenig (Abd Al Malik, Ezra Koenig / Wallen)
7. CENTRE VILLE (Abd Al Malik / Wallen)
8. GOODBYE GUANTANAMO (Abd Al Malik / Bilal)
9. NEON feat Mattéo Falkone (Abd Al Malik, Mattéo Falkone / Bilal)
10. WE ARE STILL KINGS (Abd Al Malik / Wallen)
11. ROCK THE PLANET feat. Cocknbullkid (Abd Al Malik, Cocknbullkid / Wallen)
12. SYNDI SKA LISTE (Abd Al Malik / Wallen)
13. GROUND ZERO (ODE TO LOVE) feat. Papa Wemba (Abd Al Malik, Papa Wemba / Wallen)
14. CHATEAU ROUGE (Abd Al Malik / Gérard Jouannest)
Abd Al Malik "CHATEAU ROUGE"
BARCLAY / UNIVERSAL FRANCE CD 2753875
フランスでのリリース:2010年11月8日
(↓アルバム『シャトー・ルージュ』のティーザー)
PS : 12月4日
2010年11月9日、パリ・ゼニットでのアブダル・マリック "Ma Jolie"。アコースティック・ギターにテテ。
月が複数に見えるのは、酩酊状態のことでしょう。私はそう解釈しました。アルコール(またはその他)なしで酩酊は可能か、というと、それは可能でしょう。5年前のアルバム『ロング・ディスタンス』の頃,ヴェロさんは重度のアルコール中毒から抜け出すために、非常に苦しんでいました。当時のインタヴューでそれを救ってくれたのは、息子のクリストファー・スティルスだったということを何度も言ってました。
『ロング・ディスタンス』はそういう時期(おまけに、現代医学では手のほどこしようがない血液の病気を宣告された時期でもありました)の、たくさんの人たちに支えられたアルバムでした。詞も曲も半分は人に書いてもらっていて、ヴェロさんの曲よりもジャン=ノエル・シャレアの曲の方が「ヴェロニク・サンソン風」だったり、という不満もややありました。
そのたいへんな時期から5年を経て,ずいぶん変わったでしょう。今年ヴェロさんは61歳になりました。その間に2010年春のヒット映画『輝くものはすべて』(TOUT CE QUI BRILLE)の中でヒロイン二人に歌われたヴェロさん1973年の曲"Une drole de vie"が若い人たちの間でヒットして、(後年はどうでも)1972-73年頃のヴェロニク・サンソンというのはメロディーとリズムがふんだんに溢れ出ていたすごい才能だったのだ,ということを人々に再認識させたのでした。
そうなんですよ。多くのヴェロニク・サンソンのファンたちと同様に、私も72-73年頃のヴェロさんが最高だと思ってますし、あの頃のヴェロさんというのはもう帰ってこない、というのを悔やんでいるのです。
アルコールなし。それでも酩酊しているヴェロニク・サンソン。新アルバムはそんな意味だと思います。
制作の経緯を見ますと、最初に2009年夏からトリエル・シュル・セーヌの自宅にミュージシャンを招集して、真ん中にピアノを置き,バジル・ルルー(ギター)、ドミニク・ベルタム(ベース)、ロイック・ポンチュー(ドラムス)、メーディ・ベンジェルーン(キーボード,コーラスアレンジメント)などが見守る中で、1曲1曲ダイレクトに作詞作曲していったそうです。籠るのではなく,友人たちに囲まれた状態で曲作りをしたわけです。一人でなくて,チームでやろう、という姿勢が,アルバムの統一感に大きな効果があったようです。
コンピューターなどの手を借りずに、昔ながらの方法でひとつひとつ曲を仕上げたわけです。みんなでわいわい話しながら。
『ロング・ディスタンス』に比べたら,たくさん曲を書いてます。14曲中,自分が作詞作曲に関わっていない曲は3曲しかありません。姉ヴィオレーヌ・サンソン=トリカールの曲「私を許して QU'ON ME PARDONNE」(4曲め)は、ヴィオレーヌがジョニー・アリデイのために書いた曲ですが、ジョニーから拒否されたのだそうです。なにか人生の終わりを感じさせる歌です。10曲め「すべてはそれ次第 TOUT DEPEND D'ELLE」も、この"それ(ELLE)"は、"死神(LA MORT)"なのです。死と隣合わせに今日を生きているヴェロさんの胸の内でしょう。
そういう歌は少数派で,1曲めのサルサ仕立ての「夜には待ってもらって LA NUIT SE FAIT ATTENDRE」から、なにかあの頃のメロディーの宝箱だったヴェロさんが帰ってきたかのようなうれしさです。あの「うなり歌唱」だけはなんとかならないものか、と思うムキも多いでしょうけど、5曲ぐらいで登場しますが大目に見てください。あれがなければヴェロさんじゃなくなっちゃいますし。もう高音域の声は出ませんが,音符数の多い歌ばかりです。デビュー当時はガーシュウィンと比較されたメロディストでしたから。
13曲め「地平線奪い VOLS D'HORIZONS」は、1989年の「アッラー」に続いて,イスラム原理主義へのプロテスト・ソングです。やる気あるなあ。
そりゃあ72-73年のヴェロさんではありません。しかし『ロング・ディスタンス』よりは格段に「ヴェロニク・サンソン風」になっています。酩酊,陶酔は、来年2月のオランピアの時にヴェロさんと共にしたいと思ってます。私は一生ヴェロさんのファンですから。
<<< トラックリスト >>>
1. LA NUIT SE FAIT ATTENDRE (V.SANSON)
2. JE VEUX ETRE UN HOMME (V.SANSON / M. BENJELLOUN)
3. PAS BO PAS BIEN (V.SANSON, M. BENJELLOUN, D. BERTHAM / V.SANSON)
4. QU'ON ME PARDONNE (VIOLAINE SANSON-TRICARD)
5. CLIQUES CLAQUES (V. SANSON)
6. JUSTE POUR TOI (V.SANSON / M. BENJELLOUN)
7. SALE P'TITE MELODIE (V. SANSON)
8. SI TOUTES LES SAISON (V. SANSON)
9. SAY MY LAST GOODBYE (duet with CHRISTOPHER STILLS) (C.STILLS)
10. JE ME FOUS DE TOUT (V. SANSON / C. STILLS)
11. YAYABO (aka YAYAVO) (A SANCHEZ REYES)
12. TOUT DEPEND D'ELLE (V. SANSON)
13. VOLS D'HORIZONS (V.SANSON / V.SANSON, M.BENJELLOUN)
14. AAH... ENFIN ! (instrumental) (V.SANSON)
VERONIQUE SANSON "PLUSIEURS LUNES" WARNER MUSIC FRANCE CD 2564678504
フランスでのリリース 2010年10月25日
<<< トラックリスト >>> 1. MAGICIEN MAGICIENNE 2. L'AIR DE RIEN
3. LES FRAISES
4. LE ROCKER
5. SALOME
6. LA SEINE
7. LES BABOUCHES
8. LE BILLET
9. ON N'A QU'A DIRE COMME CA
10. CE SOIR-LA
11. LE TRIOMPHE DE L'AMOUR
ARESKI BELKACEM "LE TRIOMPHE DE L'AMOUR"
CD UNIVERSAL CLASSICS & JAZZ FRANCE 4764135
フランスでのリリース:2010年10月25日