2007年11月11日日曜日

コーシュマール、コーシュマール!(でっかいわ...)



 (← 前立腺ガンの早期発見のキャンペーンにヨーロッパではブリュッセルの小便小僧マヌカン・ピスが広告イメージとして採用されています。「出にくくなったらすぐ検診」というのがそのココロです)

 9日の金曜日の成田からパリまでのフライト中、激しい頭痛があって、客室乗務員の方からバッファリンを2錠いただき、それでもおさまらなかったのですが、1時間もしたら眠ってしまってそのまま到着2時間前まで寝ていたようです。5泊6日の日本ツアーの後半3夜は暴飲気味で、たいへん楽しかったのですが、体にはたいへん良くないことをしていたと思います。おまけに宿酔気味でホテルに帰ったあとは、半錠の誘眠剤を寝入りに飲み、2〜3時間後にトイレに起きて(これが問題!)また半錠の誘眠剤を飲み、という無理矢理の時差矯正をしていたので、おとといで薬が切れてしまいました。
 時差のマジックで9日の午後にはパリに到着して、空港にはタカコバー・ママが待っていました。こういう図は久しくなかったものです。いつもは爺が空港で待つ役で、当然その前にタカコバー・ママや娘が旅行に発つ時もいつも爺が空港に残されて、Everytime you go away, you take a piece of me with you... (ポール若、またはホール大津)を泣きながら歌っていたのです。
 税関出口から駈けて行ってタカコバー・ママを抱きしめたら、開口一番「あなた口臭がひどいわよ」と言われました。

 口臭は自覚できませんからやっかいです。私も人の口臭が大嫌いなので、そういう人と遭遇するとできることなら二度とお会いしたくないと思ってしまう側の人間でした。中学の時の国語の先生(女性)がものすごかったのですが、ある日勇気ある子が無言で「エチケット・ライオン」を進呈したのでした。その先生はその意味がよくわからなかったと思います。本人にはわからないのですから。次の日からも状態は変わりませんでしたから、使わなかったか、ライオン歯磨きの宣伝に嘘があったかのどちらかだったのでしょう。
 この年齢なので何が起こったっておかしくないのですが、旅行前の10月前半に主治医の内科先生に診察してもらった時に、夜のトイレの回数が多くなったことを言いましたら、前立腺肥大の可能性があるので、検査を受けなさいと言われていたのでした。日本から帰ってから、と思っていたら、出発の2日前にクルマの運転中に2本脚の付け根のさる部分に急に痛みが来てしまったので、あああ、来ましたね、来ましたね、と何がやってきたのかわからないけれど、あるものが爺の体の中に到来していることを感じたのでした。
 青森ではどうだったのか覚えていません。たぶんそれほどではなかったのではないかな。3日めの東京から、普段クルマ生活者で歩くことをほとんどしない私が、これほど歩いたのは何年ぶりのことだろうと思うくらい、駅通路や「駅から徒歩8分」や「駅から徒歩10分」(これって不動産屋の用語でしたよね。大体が実際よりも大幅に少なめの時間になってますよね)を歩いて歩いて歩いたのでした。
 昼はひとりの時は富士そばや某カレースタンドを利用する、賢明な外国人旅行者だったのですが、夜は今回全部相手方が出してくれたので、喰うわ呑むわ。東京はどこでも食べるものが美味い。何を呑んでもお酒は美味い。おごられていただくものはすべて美味い。
 夜中に口腔がざらざらに乾いた感じがあったり、胃で何かが消化されていない感じがあったり、朝起きるとふらふらで平衡を取り戻すのに時間がかかったり...。たぶん東京での3日間は爺の何かを壊すには十分にハードなことの連続だったのでしょう。

 で、私はいつ頃からこのひどい口臭を人様に吹きかけていたのでしょうか。タカコバー・ママは出発前はそんなことはなかったと言っているので、日本に行ってからということですね。青森の友だちがもうおつきあいを考えさせてください、と言ったら、その時からすでにそうだったのでしょう。東京で商談した相手から、注文がぱったり来なくなったら、その時もそうだったのでしょう。東京の飲み屋で、まわりの騒音に負けじと顔寄せ合って大声で談笑しあったあの彼、あの彼女は、もう私と会ってくれないかもしれません。
 その時に、相手から何も言わずにす〜っとエチケット・ライオンのチューブが出てきたり、仁丹の容器をカシャカシャ振ってくれたりしたら、それとなく爺はわかったでしょうか。たぶんわからなかったでしょうね。
 口臭の悪夢(コーシュマール)は自分ではわからないことであり、人はなかなか言ってくれないことですね。娘ははっきりと Ta bouche pueと言ってくれたので、帰仏第一夜は「火吹き怪獣遊び」で娘を追い回したのでした。

 しかしコーシュマールは続き、口臭だけでなく、飛行機から始まった頭痛は時折再発し、眠る薬が切れたとたん、帰国第一夜からトイレに2時間おきに行くようになって、ほとんど眠れなくなってしまいました。これは時差ボケだけではないのです。おまけに膀胱部分は痛みこそないのですがいつも張っているような感じで気になってしかたがない。
 翌日薬局で口臭止めは買うことができました。眠る薬は処方箋がないと買えないので月曜日までお預けです。2日め(土曜日)の夜、やはり眠ることができず、元気にこんなことを書いています。眠れないので、ダニエル・ペナックの最新小説『学校の悲しみ Chagrin d'Ecole』を読み終えましたが、さっぱりわかりませんでした。ちなみにこの小説は爺が日本に行っている間に、今年のルノードー賞を獲得していました。ゴンクール賞作品はジル・ルロワの『アラバマ・ソング』で、きのうわが町のフナックで買いました。わが町のフナックには日本語を話す気だての良い女性店員の方がいて、いつもその人のレジで買うことにしています。昨日は娘と二人で買い物をしたのですが、そのレジに列を作っていた時に、娘が「パパ、口臭消しのスプレー使って!早く!」と言ってくれたのでした。よく気がつく娘です。レジで私たちの番になって、いつものように日本語で迎えてくれた彼女から微笑みが消えず「日本はいかがでしたか?」なんて優しく言ってくれたもんだから、この時私の口臭は消えていたものと確信しています。ああ、娘のおかげで、次もこの女性と会うことができる。ありがっとう、ありがっとう。
 『アラバマ・ソング』はニール・ヤングとは何の関係もありまっせん。米国の大作家スコット・フィッツジェラルドの妻、ゼルダ・フィッツジェラルドの生涯を描いた、生涯夫の影で尽くし通して生きた女性の(と書くと山内一豊の妻のようですが)伝記小説です。これを「ゼルダの伝説」と訳すと、話はまったく違ってしまいます。次回の「新刊を読む」で紹介いたします。しかし読み始めましたが、やっぱり下腹部が気がかりで、全然読み込めていないのです。コーシュマール、コーシュマール...。
 

1 件のコメント:

Pere Castor さんのコメント...

11月14日,血液検査の結果が出て,主治医の先生に判定してもらいました。
血糖値が標準値よりも若干高めなのは,先生の言葉では「許容範囲内」だそうで,よく歩いて,糖分塩分およぶアルコールを自分でコントロールすればよい,という「おとがめなし」の判決でした。
前立腺の方は,ガンの兆候全くなしで,前立腺肥大程度は飲み薬で治りますから,これも「おとがめなし」の無罪判決でした。

さあ,今夜はボージョレ・ヌーヴォーで!!!