2007年11月3日土曜日

綱渡りの歌





 スタニスラス『あやうい平衡』
 STANISLAS "L'EQUILIBRE INSTABLE"


 世界一のレコード会社Uとは日頃親しい関係ではなく、長年のつきあいにも関わらず爺がやっていたような小さな会社などどうでもいいという態度があって、あれをしたいこれをしたいというプロポーザルがあっても真剣に応えてくれたためしがありません。彼らとはこういうつきあいが20年も続いています。それでもプロとして、爺は彼らのニューリリースの情報を1ヶ月以上前に受け取るシステムの中に入っているので、人様よりは早く「音」が聞ける特権があります。とかくヴァリエテ系はほとんど興味がなくなってしまったので、毎週の情報は来てもほとんどうっちゃっておくのですが、10月の上旬にリストに載ってきたこのスタニスラスは、なにか惹かれるものがあって、バイオグラフィーもちゃんと読んで、試聴の4曲もしっかり聞いたのでした。
 スタニスラス・ルヌー、35歳、クラシック教育をしっかり受けた名門学校出で、指揮法を有名マエストロに師事したのち、クラシックオーケストラ(オペラ・ド・マッシー管弦楽団)の指揮者に就任し、音楽高等師範校(エコル・ノルマル)で教授もしています。こういう人が若くしてポップ・ミュージックに「天下り」きたわけですが、本来ならば爺ならいくらでも悪口を言いたくなるようなこのキャリアの前に、シングル曲予定になっていた「ル・マネージュ(回転木馬)」の第一音を聞いたとたん、胸がキューンとなったのでした。
 確信犯的なロマン主義です。クラシカルでセンチメンタルで夢見心地で、声楽系でない高音少年ヴォイス(若き日の岩沢兄弟のような声に聞こえる)で、大空に上昇していくようなワルツ曲が展開されます。
 爺は何年ぶりかで世界一のレコード会社Uのディレクターにメールを書いて、スタニスラスのデビューアルバム全曲聞きたいので、必ず必ずアルバム送れとお願いしたのでした。何年かぶりでそのディレクターが直々に電話をくれて「私もこのアーチストの才能には賭けているものがある。きみが目をつけてくれたのはとてもうれしい」と急に "tu"(きみよばわり)で話したのでした。
 それから3週間、何も音沙汰がなかったのに、今朝、スタニスラスの6曲入りサンプラーが届きました。ディレクターの手書きのメモで「アルバム製品は上がっていないので、ストック入り次第送る」と書いてありました。なにか愛情物語の始まりのようなふんいきがあります。ネット上の試聴と違って、CD盤は大音量で聞いたら、コンサートホール感覚でした。
 クラシックとポップの狭間と言うよりは、これは古き良き少女マンガ時代のロマンが香り、劇団四季ミュージカルのようでもあります。ディヴァイン・コメディーが高音ヴォイスになって、もっともっとクラシック寄りになった感じです。
 これはですね、爺の持っている少女ゴコロを直撃するのです。隠れていたわけではないのですが、中学/高校と少女マンガを読みあさった頃の記憶がふ〜っと蘇ってきます。
 全曲版(製品アルバムは11月12日リリースです)が届いたら、もう一度総合的に紹介してみたいと思います。
 
 マイスペースに4曲公開されていますが、肝心の「ル・マネージュ」が載っていないのが残念です。
 http://www.myspace.com/stanislaslequilibreinstable
 (公開ヴィデオもぜひごらんください。ちょっと神経質そうな人柄がよくわかります)

 続報をお待ちください。
 しかし、しかし、ひさしぶりに興奮するヴァリエテであります。
 

1 件のコメント:

Pere Castor さんのコメント...

後日談その1。
かっち。君が"LE MANEGE"のヴィデオクリップを見つけてくれました。C'est magique !
Stanislas - Le manège - Clip
長年のクセなのでしょうが、両腕が上がった時は「指揮者の図」になります。顔をズームする図柄の部分はジャン・ミッシェル・ジャールのやり方と似た感じですが、現代音楽出身(ということになっている)ジャン・ミと、クラシック指揮者出身のスタン、なにやらの因縁があるやもしれません。どちらもナルシストであることは明白ではありますが。
しかし掛け値なしに美しい曲です。楽曲の魔力みたいなものがたくさんの人たちをひきつけると思います。