2008年12月9日火曜日
クレズマー・クラリネットの新王
今夜はバスチーユ近くのカフェ・ド・ラ・ダンスで、クレズマー・クラリネットの新王ヨム君のクワルテットのコンサートでした。カフェ・ド・ラ・ダンス超満員で、私は袖口で立って見てました。ヨム君は28歳の若造クラリネット奏者ですが、1920年代ニューヨークのクレズマー・クラリネットの王と呼ばれたナフトゥール・ブランドワインに敬意を表して、ナフトゥールの曲ばかりを録音したアルバムを制作しました。ナフトゥールはクラリネットのヴィルツオーゾだっただけでなく、その派手なステージアクションや奇抜なステージ衣装でも知られていて、なおかつベースケで酒好きだったので「ナスティー・ドランク」の異名も取っていました。ヨム君はナフトゥールの後継者を自認して、みずから「新王」を僭称しますが、派手好き、ベースケ、酒好きなところは旧王に負けないと言いたい風です。件のアルバムのジャケ写に見えるような、サルコジ風のブリンブリン(Bling bling)なサングラス、ジャラジャラの金ピカアクセサリー、アフリカ独裁者のような衣装と王冠... このコンサートの第一曲めは本当にこのイデタチで演奏しました。
クレズマーはもともと東欧ジューイッシュ(アシュケナージュ)の音楽で、15世紀くらいから東欧でユダヤ人の冠婚葬祭を彩る音楽として演奏されてきました。それが新大陸アメリカに渡ったアシュケナージュが伝え、ニューヨークなどの大都会のユダヤ人コミュニティーで演奏されていたんですね。"Klei"と"Zemer"の合成語で「歌の伴奏楽器」を意味するのですが、本来はインストルメンタル・ミュージックです。クレズマーの楽団または楽器のことをクレズモリムと言いますが、花形リード楽器は何と言ってもクラリネットです。
ヨム君のクワルテットは、ピアノ(クレズマー・ピアノの第一人者ドニ・キュニオ)、チューバ&トロンボーン(ブノワ・ジファール)、パーカッション(アレクサンドル・ジファール)、そしてヨム君(クラリネット)の布陣で、今夜はゲストでトランペットのイブラヒム・マールーフが参加しました。
ワンパターンと言えないこともないですが、ゆっくりと始まって、超高速で終わるクレッシェンド・トランスミュージックです。会場は踊る人こそいませんでしたが、かなりの陶酔度だったと思います。ヨム君はMCがうまい。ジューイッシュ・ジョークなんでしょうね。巧みな話術と笑わせどころにメリハリのある、達者な芸人です。楽しい1時間半でした。
(↓またちょっとだけディジカメでヴィデオ撮影しました)
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3 件のコメント:
仏クラシック界のクラリネット奏者は著名な方がいっぱい居るのは知ってましたが、こちらのジャンルも名人技ですね。
フランス=クラリネット名人多い のは、教育者としても素晴らしい人が沢山居るのでしょうね。
と、ちょっと「いい子」の書込みしましたが、ご無沙汰しております。
もう3週間後なのに、今仕事が(このご時勢だから、売り込み中心で)超忙しくて、成田から飛行機に乗る実感がまだ湧きませんが、よしのさんとまた2人でお邪魔しますね。
美味しいお昼がたべれるところ、ご紹介下さい(学校でフォアグラの歴史の話を聞いて、今とっても食べたい気分です)
すみません、匿名でなく書いたのはTomiです。大変失礼致しました。
Tomiさん
おひさしぶりぶりっ!
さすがに元クラリネット奏者,見るところが違うねえ。ヨム君のクラリネットの先生はパリ高等音楽院(コンセルヴァトワール)のリシャール・ヴィエイユ Richard Vieilleという巨匠です。日本にも行ってマスタークラスを行っているらしい。このクラスでヨム君は17歳で首席になってます。
それからクレズマー楽団で10年間。
ヨム君がクレズマーにもたらした新風というのは,"グルーヴ"と言うか,ロックフィーリングに近いノリだと思うんですね。YouTubeにも載ってるので見てみてね。
http://jp.youtube.com/watch?v=oS_swwKApX4
パリで食べましょうね。
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