2007年10月12日金曜日

俺のDNAに手を出すな(Touche pas a mon ADN)





 サルコジが選挙公約としていた移民対策専用の省庁が5月に創設され,その初代担当大臣となったブリス・オルトフーによる新しい移民法案が出され,そこにヴォークルーズ県選出の保守UMP党議員ティエリー・マリアニが修正案として,移民労働者の家族呼び寄せの不正(家族と称して他人を呼び寄せる)を防止するために親子関係を証明するために家族呼び寄せ申請者にDNAテストを義務づける,という条項を追加します。下院上院とも絶対多数議席を持つUMP党はこれを両院で通過させようとしますが,UMP党内にもこのマリアニ修正案に疑問を抱く議員があり,特に上院ではこの修正案が何カ所も項目を削られたものの,DNAテストは残りました。下院→上院→下院と戻ってきたこの修正案はこのまま可決されそうな情勢ではあります。しかし,私たち移民/外国人居住者たちだけではなく,多くのフランス人たちもこのDNAテスト法案に反対しています。
 週刊紙シャルリー・エブド,日刊紙リベラシオン,市民団体SOSラシスムが共同で10月3日からこの法案に反対する署名運動を始めました。http://www.touchepasamonadn.com スローガンは "TOUCHE PAS A MON ADN"(私のDNAに手を出すな)。1週間で12万人の署名が集まり,私たち家族も昨日署名しました。
 なぜ私たちがこのDNAテスト法案に反対するのかという理由はたくさんあります。まず外国人の居住権をDNAで決定するということ自体が問題だと思います。住む権利とDNAに因果関係はあってはならないと思います。次に外国人の親子関係をDNAで決定するという考え方です。フランス人の親子関係はDNAテストで証明されるものではありません。出生を役所に届け出を出し,その母欄と父欄に名前を登録した者がその子の父母です。その際DNAテストは要求されません。それがどうして外国人にだけ要求されるのですか?
 DNA検査の結果,遺伝子縁が認められなかった子供はその父母の子供ではないのですか?それは基本的な個人の自由の範疇に属する問題ではないのですか? 養子や連れ子やその他複雑な事情のある親子関係というのは外国人にはあってはならないという考え方ですか?
 これまで犯罪捜査に使うことは許されていたこのDNA鑑定が,外国人の,しかも合法居住者(!)の家族呼び寄せ申請の審査に使われるということの裏には,外国人を最初から疑っている差別意識と排外意識がはっきりと見えるではないですか。
 そしてこれは外国人だけでなくフランス人にとっても重要な問題です。この法案は国家行政による住民管理に初めてDNAという管理方法を導入したものだからです。これが認められれば,次々にDNAによる国民管理が出てくるでしょう。サルコジは将来的な凶悪犯罪者を未然に防ぐために,幼児期にDNA鑑定をして凶悪犯罪者の遺伝子胤のある者を発見してしまおう,という考えを大統領選挙キャンペーン中に公言しています。幼稚園入学時のDNAテストや,公務員(特に警察と軍隊)採用時のDNAテストといったものも出てくるでしょう。
 私はこの法案にひとりの外国人居住者として反対します。反対署名者は野党議員や市民団体や左翼系知識人や移民出身アーチストたちだけではなく,前首相(保守UMP党)ドミニク・ド・ヴィルパン,元大臣(中道保守UDF党)フランソワ・レオタール,詩人エーメ・セゼール,ベルギー人作家アメリー・ノトンブ等の名前が見えます。音楽アーチストではアケナトン(I AM),ベナバール,カリ,ジャンヌ・シェラル,ティケン・ジャー・ファコリー,トマ・フェルセン,マニュ・ディバンゴ,マリアンヌ・ジェイムス,ルノーなど,映画演劇人では女優イザベル・アジャーニ,ジャンヌ・モロー,ミッシェル・ピコリ,先日このブログに書いたフェラーグなども署名しています。
 10月14日(日曜日)18時から,パリのゼニットでマリアニ修正案撤回要求の集会が開かれます。出演者としてレ・テット・レッド,ティケン・ジャー・ファコリー,ベナバール,ルノー,イザベル・アジャーニ等の名前が上がっています。私は社会党第一書記フランソワ・オランドと哲学者ベルナール・アンリ・レヴィーの話を聞きたくないので,行かないと思います。それでも,多くの人たちが集まって大きな反対の声になるよう願っています。がんばろう!
 

1 件のコメント:

Pere Castor さんのコメント...

18時からのゼニット集会を Liberation.fr が生中継していました。イザベル・アジャーニも素敵でしたが、やはり集まって会場を満杯にしてくれた6千人の人たちが一番素敵でした。人権宣言発祥の地は絶対にこの法案を許さないのだ、ということが信じられる一夜でした。素敵な集会をありがっとう。司会のドキュメンタリージャーナリスト、セルジュ・モワッティは、これは最初の集会で、法案が撤回されるまで、何度でもこの集会を繰り返すと言っていました。次は行こうと思っています。俺のDNAに手を出すな。私たちの家族の絆に手を出すな!