La Talvera "Bolega la camba"
ラ・タルヴェーロ『ボレゴ・ラ・カンボ(片脚を揺らしましょう)』
2021年12月、オクシタニア、タルン県の天空の町コルド・シュル・シエルのラ・タルヴェーロから届いた新しいCDは、子供たちのための(オクシタニア)フォークダンス音楽集27曲。というわけでオリジナル新譜ではないが、ラ・タルヴェーロの新録音ということに変わりはない。ダニエル・ロッドーとセリーヌ・リカールが主宰するオクシタニア文化振興団体CORDAE/LA TALVERAは1979年に設立され、音楽と書籍出版とオック語普及活動などで広範囲なオクシタニア文化圏の現在をフランスおよび世界に紹介している。その中でフォークダンスは大きな比重を占めていて、ラ・タルヴェーロという音楽バンドはいわゆる”バレティ(Balèti)"すなわちオクシタニアの大衆バル(ダンスパーティー)での演奏活動をメインとしている。トゥールーズの「ブラジル+オクシタニア」系のバンド、レ・ボンブ・ド・バル(Les Bombes 2 Bal)も踊りのためのバンドであり、ダンスの手ほどきをしながら踊りの輪をどんどん拡大させていく。ラ・タルヴェーロもセリーヌ・リカールがダンス指導しながらステージを進行させていくが、舞台から降りてダンスをリードしてまた舞台に戻ってヴォーカルで歌ったりとたいへんな忙しさだった。今は娘のアエリス・ロッドーと二人になったので少しは楽になったのかな。
さて今回の新作は子供たちにダンスを覚えてもらおうというもので、ワイン産地として名高いタルン県の町ガイヤック(Gaillac)の観光振興団体TAGとの共同企画となっていて、制作費はTAGが出している。ラ・タルヴェーロとTAGはかれこれ40年にわたるコラボレーション関係で、ガイヤック市内の学校を回ってオクシタニアの音楽やダンスなどの芸能を子供たちに親しんでもらう行事を行ってきた。ブルトン語バスク語コルシカ語など少数言語に風当たりがきつかった頃からの草の根活動の積み重ねで今日のオック語文化リヴァイヴァルはあるが、学校が理解を示してくれて、子供たちに土地の歴史的言語/文化芸能に触れて遊戯感覚で体験してもらうというのはすごくいいこと。子供たちが好きになってくれたら郷土民衆文化はおおいに若返ってくれるだろう。ジジババしか集まらなかった地元のバレティに若い世代や子供たちが喜んで行くようになったら、土地は土地としての息吹を取り戻せる。お立ち会い、これはおおいに政治的な意味があるのだよ。中央メディアから次々に送り込まれるビジネス芸能だけに全国津々浦々が占領されることなく、土地の芸能で自ら心底楽しめ、体を動かして土地の喜怒哀楽をダンスの輪で表現する。民衆がさまざまな土地で大きな輪となって熱狂してダンスに興じている姿、これは中央権力が怖がっているものなのだよ。
CDブックレットにおおまかな教則対象年齢の目安が曲ごとに書かれていて、フランスの学校制度のC1(幼年 2歳から6歳)、C2(小学低学年 6歳から9歳)、C3(小学高学年 9歳から12歳)でダンスの難易度が異なる。まあ、C1向けというのは、NHK「おかあさんといっしょ」のおゆうぎ並みなのだけど、曲も動物の鳴き声やジャンプの擬態語などを多用したわらべ歌風。C2、C3向けとなると、ロンドやポルカやカドリルなどそれなりにコレグラフィーがついたフォークダンス。曲はオクシタニア・トラッドとダニエル・ロッドーのオリジナルの半々ほどで歌詞はオック語(子供たちが自然に覚えてくれたらいいな)。振付はセリーヌ・リカールとTAGのメンバーがつけていて、インターネット上で公開されているそうだが... あれあれ見つからないぞ、まだ準備できてないのかな?
(↓)この動画はこのCDとは関係ないのだけど、オクシタニアのわらべ歌"Joan Petit que dansa"を用いてラングドック地方ガール県のフォークグループ Sors Les Mains d'Tes Poches が幼稚園児たちにダンスを教えている図。なんとほほえましい。ラ・タルヴェーロのこのアルバムにはこの歌の別ヴァージョンが入っている。
27曲のフォークダンス曲を演奏するラ・タルヴェーロのメンメンは
ダニエル・ロッドー:ディアトニック・アコーディオン、コルヌミューズ3種、バンジョー、カヴァキーニョ、口琴、パーカッションアエリス・ロッドー:ヴォーカル、ヴァイオリン、ヴィオラセリーヌ・リカール:ヴォーカル、フィフル、フルート、オーボエ、トライアングル
ファブリス・ルージエ:クラリネット、バリトン・サックスジャン=ピエール・ヴィヴァン:ドラムス、ザルブ、パーカッション
ズィノ・ムージェブ:バンジョー、カルカブー、デルブーカ、グンブリフロリアン・ロッドー:ドラムス、シンセサイザー、サンザ、コンガニコラ・リュモー:ベース
手抜きなしのラ・タルヴェーロそろい踏みで、イマジナティヴなオクシタン・フォーク・サウンドを展開している。牧歌的で中世的でもあるが、ダンスステップのためのカッチリした曲ばかりである。
<<< トラックリスト >>>
1. Bolega la camba (片脚を揺らして)(詞曲ダニエル・ロッドー)
2. Lo pinçon e la lauseta (あとりとひばり)(トラッド)
4. Lo virolet (ぼんやり者)(詞ロッドー/曲トラッド)
6. Pimponet (ピンプーネ)(詞ロッドー/曲セリーヌ・リカール)
7. Planta un caul (キャベツを植える)(詞ロッドー/曲トラッド)
8. Tombèt(転んだ)(詞ロッドー/曲トラッド)
9. Ai vist lo lop (狼を見た)(詞曲ロッドー)
10. Bonjorn d'Occitania (オクシタニアからこんにちわ)(詞ロッドー/曲トラッド+アエリス・ロッドー)
11. Dancem la trompusa (だましっこ踊り)(トラッド)
12. L'Autre jorn sus la montanha (ある日山で)(トラッド)
13. Chiborlin (シボルリン)(詞ロッドー/曲トラッド)
14. Faguem la ronda (丸をつくろう)(詞曲ロッドー)
15. Sus mon caval (馬に乗って)(詞曲ロッドー)
16. Lo tustet de joanet (ジャネットのノッカー)(詞ロッドー/曲トラッド)
17. Los dalhaires (草刈り人)(トラッド)
18. I ! I ! I ! Borriquet (ヒンヒンヒン 子ロバ)(トラッド)
19. La grimacièira (グリマシエイラ)(詞ロッドー/曲トラッド)
20. Vira vira lo molin (風車を回せ)(詞曲ロッドー)
21. Pichonet que dança (ちびっこのダンス)(トラッド)
22. Lo Filoset(フィロゼ)(トラッド)
23. Lo tusta pal (手を叩こう)(詞曲ロッドー)
24. La calha (つぐみ)(トラッド)
26. La civada(オート麦)(トラッド)
27. Lo galant de la catin (カティの優男)(詞曲ロッドー)
LA TALVERA "BOLEGA LA CAMBA"
CD CORDAE/LA TALVERA TAL23
フランスでのリリース:2021年12月
カストール爺の採点:次作を待とう
(↓)本アルバムとは無関係だが、2021年夏、シルヴァネス修道院(アヴェロン県シルヴァネス)でのラ・タルヴェーロのライヴのダイジェスト動画。
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