2017年12月23日土曜日

2017年のアルバム With a little help from my friend

Orelsan "La fête est finie"
オレルサン  『あとのまつり』

 のアルバムを評するレ・ザンロキュプティーブル誌のレヴューがイントロで「ラップは今やヌーヴェル・シャンソン・フランセーズになった。オレルサンはそれに乗じていて、この分野の最も才能ある作者の一人であることは明白だ」と言うのですよ。新しいシャンソン・フランセーズかぁ。この呼称は90年代にミオセックやドミニク・アが出てきた時に言われたものだけど、「シャンソン性」とは今日どんなものなのだろうか。例えばストロマエが出てきた時にもろにジャック・ブレルと比較されたのは、その叙情表現性によるものだと思う。哀愁や悲嘆や悔恨や苦悩がエレクトロに乗ったら、それはシャンソンと呼ばれても不思議ではない。最初から極めて文学的だったクロード・MC・ソラールが、シャンソンと呼ばれたのを聞いたことがないが。で、オレルサンである。これをシャンソンと呼ぶとすれば、それはその「物語性」によるものだと思う。
 この物語性やシナリオ性に関するオレルサンにまつわる避けて通れないことは、かの裁判沙汰である。その女性蔑視的表現、性暴力的表現を含むライムが訴訟となって争われたわけだが、オレルサンは一審でも二審でも無罪となっている。なぜ? それはフィクションだからである。映画や小説の中と同じように、その作中人物は卑劣漢やレイシストやセクシストであり得るし、その発言は創作的表現であり、作者の思想や性向を直接表現するものではない。作中に登場するナチス将校が極めてナチス的な反ユダヤ表現をしても、その作者は罰せられることはない。オレルサンのラップに登場する暴漢が暴力的表現をしようが、創作においては...という理屈なのである。この訴訟によって女性蔑視者のレッテルを貼られたオレルサンは、名誉回復の権利があるが、いたずらにその方面で刺激的な表現はしなくなったようだ。そりゃそうだろう。
 ノルマンディー地方オルヌ県アランソンから出てきた35歳。本名をオーレリアン・コタンタン。日本語版ウィキペディアにも載っているが、ひどい日本語なので見ない方がいい。
オレルサン名義の3枚目のアルバム。この人日本のマンガが大好きで(このアルバムの中の"Christophe"という歌の中で "J'aime que les mangas"という歌詞あり)、その手の日本語は結構知ってて、「オレルサン」というのは「オーレリアンさん」のつづまったものらしい。アルバム冒頭の「San」という曲で「"さん"とは3のこと、"さん”とはムッシューのこと」と言っている。このアルバムは三部作の最終章だ、とも。

OK 俺、新しいアルバム出すぞ。
だけどその前に基礎の復習が必要だ。
俺、単純なヴィデオ作って、そん中で単純なこと言うぞ
あんたたちときたらアホすぎるんだから
シンプルでベーシックなやつさ、オーケイ?

最も聡明な人間というのは必ずしも最も話し上手というわけではない(シンプル)
政治家たちは嘘をつかなければならない、じゃなきゃきみは彼らに投票しないだろう(ベーシック)
きみがしょっちゅうアルコールの問題はないって言うのは、問題ありってこと(シンプル)
よく知らない相手と子供を作ってはならない(ベーシック)

FNのやつらは映画の悪役と同じようなツラがまえだ(シンプル)
信念を持つことと卑劣漢であることの間の境界線は極めて細い(ベーシック)
Hugo Bossはナチスの制服を作っていた、スタイルってのは重要なんだ(シンプル)
イルカは凶暴な動物だ、外見に惑わされるな(ベーシック)

ベーシック、シンプル、ベーシック、シンプル
あんたたち基礎がなってない、あんたたち基礎がなってない
あんたたち基礎がなってない、あんたたち基礎がなってない

インターネットに載ってることはひょっとして嘘かもしれないがひょっとして真実かも(シンプル)
イルミナティ かどうかなんてどうでもいい、きみは乗っ取られてる(ベーシック)
外国に行ったらきみは外国人さ、レイシストであることは何の役にも立たない(シンプル)
最も気のふれたやつって往々にして最も悲しいやつなんだ(ベーシック)
100人の人間が地球の財産の半分を所有している(シンプル)
5連勝単式馬券というのは必ず1頭か2頭は当たっているもんだ(ベーシック)
きみがいつも問題を一人で抱えているっていうのは、その問題ってきみのことだからなんだ(シンプル)
どんな世代でも言うんだ、俺たちの後の世代はデタラメだって(クリッシェ)

ベーシック、シンプル、ベーシック、シンプル
あんたたち基礎がなってない、あんたたち基礎がなってない
あんたたち基礎がなってない、あんたたち基礎がなってない

(↑ "Basique" オフシャルクリップ)
 これ、学校の先生の常套句なの。数学とかフランス語の授業で、先生は必ず言うのですよ「あんたたち基礎がなってない、もう1回基礎からやり直して来い」ってね。おお、いやだ、いやだ...。これがアルバムの3曲め。
 続く4曲めは、オレルサン作詞+ストロマエ作曲の「ヌーヴェル・シャンソン・フランセーズ」。オフィシャルクリップ制作もストロマエ。アルバムには12曲めにオレルサン+ストロマエ作詞、ストロマエ作曲、ヴォーカルフィーチャリングストロマエという"La Pluie"という佳曲も含まれている。オレルサンの才能を疑うものではないが、ストロマエ初め、強力な友人たち(メートル・ギムス、イベイ、ネクフー...)のサポートでこのアルバムは「すごいこと」になったんだと思う。では、その4曲め "Tout va bien (万事良好)"。

おやすみ
おやすみ

あのムッシューが外で寝ているのは、車の音が好きだからなんだ
死人のふりしているのは、銅像の真似して遊んでいるんだ
いつかあのおじさんがいなくなったとしたら、それは百万長者になったということさ
きっと棕梠の木の島にいて、ビールを飲んでいるにちがいない

すべてはうまく行っている
坊や、すべてはうまく行っている
万事良好だ、坊や
すべてはうまく行っている

隣のおばさんが大声で叫んでいるのは、おばさん耳が遠いからなんだ
おばさん体に青いものがあるのは、絵の具で遊んでたからなんだ
いつかあのおばさんがいなくなったとしたら、それはきっとハネムーンで出かけたのさ
雨が降ってくれないかなぁと言いながら、サングラスをかけているよ

すべてはうまく行っている
坊や、すべてはうまく行っている
万事良好だ、坊や
すべてはうまく行っている

人間たちが銃で撃ち合いをしているのは、銃弾の中にワクチンが入っているからなんだ
建物が爆破されても、それは星を作るためなんだ
いつかこの兵隊たちがいなくなったら、あんまり楽しく遊んだから
遠くに行ってみんなで輪踊りをしようってことになったからさ
みんな束になって、手に手をとって

すべてはうまく行っている
坊や、すべてはうまく行っている
万事良好だ、坊や
すべてはうまく行っている

おやすみ
おやすみ

(↑ "Tout va bien" オフシャルクリップ)

 ストロマエ制作のクリップはウクライナで撮影されたそう。オレルサンの隣の少年が最後にボソボソっと言うのは"не вірте все, що написано"(そんなこと僕は信用しないよ)。

PS:このアルバム、2017年のベストですから、この後他の曲のオフィシャルクリップが発表されたら、随時対訳つきで紹介していきます。
 
<<< トラックリスト >>>
1. SAN
2. LA FETE EST FINIE
3. BASIQUE
4. TOUT VA BIEN
5. DEFAITE DE FAMILLE
6. LA LUMIERE
7. BONNE MEUF
8. QUAND EST-CE QUE CA S'ARRETE
9. CHRISTOPHE (feat MAITRE GIMS)
10. ZONE (feat NEKFEU & DIZZE RASCAL)
11. DANS LA VILLE, ON TRANE
12. LA PLUIE (feat STROMAE)
13. PARADIS
14. NOTES POUR TROP TARD (feat IBEYI)

CD/LP 7TH MAGNITUDE - WAGRAM
フランスでのリリース:2017年10月20日

カストール爺の採点:★★★★★

(↓アルバムオープニング曲 "SAN" - ラジオSkyRock スタジオライヴ。エモーショナル!)

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