2009年9月30日水曜日

I don't know OAI?




OAI STAR "MANIFESTA"
ワイスター『マニフェスタ』


 同志たち,マッシリア・サウンド・システムの別働隊ワイスターの新譜が届きました。マッシリアのMCガリ・グレウとリュックス・ボテを中心に結成された「ロックバンド」でしたが,2008年7月にリュックスが病死し,バンドの存続が危ぶまれていたところ,ガリの不屈の心意気で新フォーメーションでバンドを立て直し,2009年からライヴ活動も再開しました。
 マッシリアが3つに分かれ,タトゥー/ムッスーTがシャンソン・マルセイエーズ,ジャリ/パペーJがエレクトロ・ラガの方向に進んだのに対して,ワイスターは最初からロックと決めていました。それはリュックスの持っていたパンク性と,クラッシュからレゲエに入ったガリのロック回帰願望によるものでした。中高年化してワビサビ趣味となったタトゥーとジャリの反対方向へ,轟音ギターとタテ乗りビートへと進んで行ったのですね。とりわけ若いというわけではないガリとリュックスのリファレンスからすると,ラモーンズとビースティー・ボーイズだったのです。
 前作『ルールドへ行け』が2006年。その後にサルコジが大統領になり,マッシリアの再結成アルバム『ワイと自由』とツアーがあり,リュックスが病死し,という事件がありました。リュックスとガリの掛け合い/チャーチュがバンドの核であったわけですから,ガリは当然の帰結としてワイスターの消滅を考えました。そこに現われたのがダブムード(DUBMOOD)という若造で,CHIP MUSICチップ・ミュージックの達人でした。これはコンピュータ・チップによるプログラミング・ミュージックで,ゲームボーイやアタリのゲーム発振音を使います。ちょっとマニュ・チャオが使っているゲーム音みたいなもんですね。これをガリはワイスターの轟音ロックンロールと合わせることによって,リュックスのパンク性に代わるインパクトとなって縦横無尽にポゴダンスへと若い衆を誘う強力な武器になるのではないか,と考えたのです。
 ワイスターの新フォーメーションは
 DJ カヤリック(from マッシリア。ターンテーブル係)
 ダブムード(ゲームボーイ,アタリ)
 ブズブズ(ギター)
 ガリ(MC)

で,マッシリアのギタリスト,ブルーはタトゥーのバンド「レイ・ジューヴェン」とマッシリアのみの掛け持ちになって,ワイスターには参加していません。
 
 唐突ですが,なぜ私がオクシタニアの連中に強烈な魅力を感じたのかを思い起こしてみると,その一番の要因は「訛りのある音楽」だったからです。歌詞だけではなく出て来る音楽そのものに強烈な訛りがある。それはフランスの中央で(ひいてはテレビやラジオで)聞かされる音楽とは全く違う,訛りと地方の町の臭いがしみついた音楽でした。マッシリアやファビュルス・トロバドールは中央で受けることなど眼中に入れていないかのように,地方の若い衆を地方訛りのまんまで煽って乗せまくっているように見えました。土地にあるなにか,訛りの中にあるなにかに強烈にヴァイブすることによって,若い衆をぐんぐん引きずり込んでいったようなところがあります。ボルドー,トゥールーズ,マルセイユ,ニース...それぞれの訛りがうなりをあげてダンスの輪になっていくようなシーンに見えたのです。
 マッシリア・サウンド・システムというバンドはアイオリ(大蒜マヨネーズ),パスティス酒,ペタンク球戯,OM(プロサッカーチーム:オランピック・ド・マルセイユ)といった土地のフォークロアをレゲエ・ビートにシンクロさせることによって,マッシリア独自の訛りのある音楽を作ったのです。その強烈な訛りでもって4人のMCがマイクを握って若い衆(ミノ)を煽っていたわけです。このマルセイユ訛りということに限って言えば,あえて4人に順番をつけるとすると,私には 1.リュックス・B,2.ジャリ,3.タトゥー,4.ガリという順位になります。死んだリュックス・Bが,ステージでの「ワイ」のぶちまけ方にしても,言動にしても,飲酒量にしても,4人で最もマルセイユ的だったのではないか,と私は思うのです。
 マッシリアもそうですが,ワイスターはこの過激なマルセイユ人キャラクターを失ったのです。これはかけがえのないもので,誰もリュックスの代役はできません。
 で,酷なことを言いますと,ガリはこの訛りの重さがまだわかっていないのではないか,と思ってしまったのです。リュックスの穴埋めに,この機械音(アタリ,ゲームボーイ)はないんではないの? 
 ちがう問題を出します。機械音は訛りを持てるか? - これはできると思います。私たちが80年代に初めてアルジェリアのライを聞いた時,この人たちのシンセサイザーの音は全然違うと思ったものですが,これも訛りでしょう。リズムボックスだって訛る。ターンテーブルも訛ると思います。
 新生ワイスターはこの訛りを軽んじたようなところが,とてもとても残念です。轟音ギターとピコピコ音とターンテーブルに訛りがないんです。ディストーションにも訛りがない。MCのガリひとりの心意気だけはこのマルセイユ音楽は成立しないのです。ビールのがぶ飲みの音楽には聞こえても,パスティス酒の酔い心地はない,というわけです。
 3曲め「バレティ・アトミコ」は,ご機嫌なエレクトロ・ロックンロールだけど,バレティ(オクシタン・ダンス・パーティー)という言葉だけをさし挟むだけではバレティにならないんじゃないのかしら。
 7曲め「アー・ユー・フロム・マース?」は,ありえない(例にするのも恥ずかしい)マルセイユでのマドンナとの出会いを物語るトーキングものですが,同じような話をするんでも,この話者がリュックスだったら全然違う出来になりそうな気がします。
 10曲め「シェリー」はクロード・シクル(ファビュルス・トロバドール)作の,男女の家事分担をテーマにした日常茶飯事ウンチク歌です。なんか浮いてますけどいい歌です。その他2曲をクロード・シクルが書いています。
 タトゥーとジャリも1曲ずつ詞を提供してます。

 マッシリアの『ワイと自由』では,ガリが二人の間に入ってまとめ役になっているような,今やバンドのイニシアティヴを握っているのはガリのような,そんな大きな大きなガリに見えたのでした。去年見たエリゼ・モンマルトルでのライヴでも,タトゥーとジャリは時々ステージを降りてしまうんですが,ガリはずっと出ずっぱりでしたし。マッシリアはガリの時代だなあと頼もしく見ていたのですが。
 まあ,マッシリアのガリとワイスターのガリは同じことをしてはいけない,という変な使命感もありましょうね。新生ワイスターはちょっとがっかりだけど,この機械音がいつかは訛りを持つに至るかもしれませんし。新しい,全くオクシタニアに拘らないファンを掴むかもしれませんし。

<<< トラックリスト >>>
1. SEME TON CHANVRE PAYSAN
2. JE VEUX FAIRE BRULER LA MER
3. BALETI ATOMICO
4. FEIGNANT & GOURMAND
5. SATURE NIGHTS PART 1
6. FIRE
7. ARE YOU FROM MARS?
8. LA VIE QU'ON MENE
9. ANTIFESTIF
10. CHERI(E)
11. FONKY PLOMBERIE
12. LA BOITE ET LES CLOUS
13. CANADER LOVE
14. SATURE NIGHTS PART 2

OAI STAR "MANIFESTA"
CD WAGRAM 3207812
フランスでのリリース:2009年9月21日


(↓"CHERI(E)"のヴィデオクリップ)

 
(↓おまけ。9月30日パリ,グラザールでのライヴ。"FONKY PLOMBERIE")
video

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