2011年9月21日水曜日

しかし何はともあれ Mais malgré tout


 そのリフレインはこうなってます。
しかし何はともあれ
Mais malgré tout,
僕はいつもつとめるようにと自分にこう言い聞かせるんだ...
je me dis toujours d'essayer que...
太陽は歌い 鳥たちは輝き
Le soleil chante, les oiseaux brillent
草原は僕に微笑みかけ 人生は緑だ
L'herbe me sourit et la vie est verte

 何かがおかしいでしょう。「太陽は歌い 鳥たちは輝き」は「太陽は輝き 鳥たちは歌い」であるべきだし、「草原は僕に微笑みかけ 人生は緑だ」は「草原は緑で、人生は僕に微笑みかける」というのが筋でしょう。その前の「僕はいつもつとめるようにと自分にこう言い聞かせるんだ」は、「僕はいつも自分にこう言い聞かせようとつとめるんだ」となりましょう。
 イニアテュス・ジェローム・ルッソーの最新アルバム『ありがたき偶然(タマタマ)』(2009年)の3曲め「太陽は歌う Le Soleil Chante」に、またまた素晴らしいアニメーション・クリップができました。制作はデルフィーヌ・ビュリュス。紙製のマリオネットや背景セットを使ったシュールで童話的な作品です。上のリフレインの説明で述べたように、歌詞はキーとなる言葉の語順を逆にしています。しかし「それでいいのだ」というバカボンのパパ的な思想があります。「太陽は歌い 鳥たちは輝き」で何がおかしいのだ? 「人生は緑」で何がおかしいのだ? そうです、間違いとは言わせない魅力があり、こういう世界観があってもいいじゃないか、と思いましょう。デルフィーヌ・ビュリュスのアニメーションはそれをできるだけ忠実に動画化しています。過度に説明的にならずに。

太陽は歌う Le Soleil Chante

僕の「味」の中に
変な「口」が残っているような
「ちょっと気になる」目をした
「アーモンド型をした」娘の記憶

僕の「かきまわす」中に
残っている「頭の」ようなもの
どうしようもなく そいつは僕を「めちゃくちゃに」し
僕を「酔わせて」くすぐるんだ

僕は彼女を「試し」たいのに
何度「忘れ」てもだめなんだ
その「僕の心」のような微笑みは
「からかい」を蹂躙した

しかし何はともあれ
僕はいつも「つとめる」ようにと「自分にこう言い聞かせる」んだ...
「太陽」は歌い 「鳥たち」は輝き
「草原」は僕に微笑みかけ 「人生」は緑だ



 これをここまで訳すだけで、レイモン・クノーを無理矢理日本語にするような楽しい苦悩がありました。無駄な努力ですけど。気が向いたら、後半の3ストローフも訳してみましょう。それまでは、この珠玉のアニメーション・クリップを楽しんでください。

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