2009年4月1日水曜日

今朝のフランス語「アヴォワール・ラ・バナヌ」



Avoir la banane 「アヴォワール・ラ・バナヌ」
 くだものです。「バナナを持つ」ということです。3月25日,ニコラ・サルコジは現政権政党(つまりご自分の党)UMPの議員総会の演説で「J'ai la banane(ジェ・ラ・バナヌ)」(私はバナナを持っている)と言ったのです。

 "Je me fais taper dessus mais j'ai la banane. C'est dur pour moi aussi mais en même temps, je rêvais d'être président de la République et je le suis, donc ça va..."
 「私はずいぶん叩かれているが,それでも私はバナナを持っている。私にとっても辛いことだが,それでも私は共和国大統領になることを夢見ていたし,私は今そうなっている。だから,サヴァ...」


 私はバナナを持っているからサヴァ,とサルコジはご自分のバナナを誇示したわけです。
 「俺は大きなバナナを持っている」と言う男がいたら,まあ!!!と驚嘆の声がでますでしょうし,ご婦人に「あなたはバナナを持っていますか?」と聞いたら,平手打ちが飛んでくるでしょう。あらぬ誤解が生じます。だからこの「バナナを持つ」という表現はあまり使われないのです。
 一般に使われる同義のくだもの表現は

Avoir la pêche 「アヴォワール・ラ・ペッシュ」
(桃を持つ)

です。「桃を持つ」は元気いっぱいという意味です。Elle a la pêche(彼女は桃を持っている)は「あの娘,エネルギーではちきれそう」という意味です。La pêche !(ラ・ペッシュ!)と言うと「元気はつらつ!」ということです。男が J'ai la pêcheと言うと「俺,もりもりだぜ」という意味ですが他意はありません。しかし,ご婦人に「よい桃をお持ちですね」と言ったら,平手打ちが飛んでくるでしょう。言葉の使い方はむずかしいものですね。

 さて,どちらもくだけた家族的な表現ですが,一般的に使われる「桃を持つ」ではなく,あまり聞かれない「バナナを持つ」という表現を使って,自分は健康に充ちていてやる気バリバリである,ということをサルコジは言ったのです。この「バナナ」というチョイスが,いろいろと言われるわけですね。
 保守陣営ながら,今や政敵となっている前首相のドミニク・ド・ヴィルパンは「共和国大統領がその地位にあって証明しなければならないのは,バナナを持っているということではなく,賢明さを持っているということである」と,グサっと言ってしまうんですね。
 また野党第一党の社会党(PS)の前第一書記フランソワ・オランドはこう言いました。

 Nicolas Sarkozy a dit avoir la banane, mais les Français ont les peaux de banane eux tous les jours et glissent dans la précarité.
 ニコラ・サルコジはバナナを持っていると言ったが,フランス国民は毎日バナナの皮ばかり踏んでいて,貧困の中に滑り落ちている。


 peau de banane (ポ・ド・バナヌ = バナナの皮)

 これは日本でも世界でも同じような比喩に使われますが,踏むとつるりと滑って,ステンと転んでしまいます。転じてフランス語では「思いがけない落とし穴,罠」といった意味になります。オランドの切り返しには,バナナの中身はサルコジや金持ちたちばかりが食べて,国民には皮ばかり,という含みもありますね。座布団一枚。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

バナナを持つという表現は、そうではなく、笑顔である、という意味です。

Pere Castor さんのコメント...

コメントありがとうございます

ネット上に出ている解釈のリンクを貼ります。http://www.la-conjugaison.fr/definition/avoir_la_banane.php

それによりますとこの表現はこう使われるとあります :

1. familièrement: arborer un grand sourire, avoir la pêche;
2. argotiquement: avoir une érection

ご指摘のように笑顔が表側の意味で、バナナマークは笑顔のシンボルとして使われますが、私たちや当時のマスコミが笑いものにしたのは(2)の意味を含意するからで、「一国の大統領は普通こういう表現を使わないのではないか」ということだったわけです。この大統領は他にも野卑な表現や、過度に直接的な表現を使って国民を驚かすことがままありました。