2018年3月2日金曜日

ポルト・ド・ラ・シャペル、赤信号待ち

ポルト・ド・ラ・シャペル、赤信号待ち
Au Feu Rouge

詞:グラン・コール・マラード
曲:アンジェロ・フォレー

アルバム Grand Corps Malade『Plan B(B案)』より

「幸いにして私には子供がいない」よくヤナはこんな独り言を言う
子供がいたらもっとつらいだろうし、もっと屈辱的だろう
どうやって身の回り品と同じように赤ん坊を扱えるのか
そんなことしたらこの長旅の末にその子は生きていられただろうか
ヤナは彼女の国の戦争と爆弾から逃れてきた
大統領軍と反乱軍と西欧軍の銃弾攻撃に
彼女は恐れをなしたが、一体誰が敵で誰が味方か分からなかった
ダーイッシュとクルド人軍、彼女は風がどっちから吹いてくるのか分からなかった
彼女の村を焼き払った火薬がどこから来たのか分からなかった
これらすべての顔を消し去った銃弾を誰が撃ったのか分からなかった
彼女は人間が狂ってしまったということだけは知っている
それがかの地、シリアだ
そこで狂気の震源が少しずつ形成されていたのだ
僕の車のウインドウに近づきながら、ヤナはそんなことを思っていた
僕はと言えば、「ノン」と手で拒絶して、車を再始動させてそそくさと去っていく
僕には多分少しばかりの小銭はあったはずなのに、急いでるんだ、行かなきゃ
僕は彼女の視線を忘れない、僕は赤信号待ちにヤナと目を交わしたのだ

あまりにも軽すぎる船は波に乗り越えられ
残忍な越境手引き人たちと仮留置センターの間を行き来するうちに
ヤナは彼女と一緒に国を逃げた人たちを全て見失ってしまった
彼女は今や一人になり恐れを抱き、いつも空腹だ
彼女と同じように逸れてしまった見知らぬ人たちだけが道連れだ
何週間も歩き続け、悪党に大金を払って
真っ暗なトラックの後ろに身を隠す権利を手に入れる
何ヶ月もの地獄の末、彼女は弾ボールの上で夜を過ごす
彼女のエルドラードはポルト・ド・ラ・シャペルの陸橋の下
僕の車のウインドウに近づきながら、ヤナはそんなことを思っていた
僕はと言えば、「ノン」と手で拒絶して、車を再始動させてそそくさと去っていく
僕には多分少しばかりの小銭はあったはずなのに、急いでるんだ、行かなきゃ
僕は彼女の視線を忘れない、僕は赤信号待ちにヤナと目を交わしたのだ

夜眠ればいつも強制送還の悪夢ばかり見る
彼女は避難民の資格が得られることを待っている
彼女は猿轡をはまられたような苦痛を感じながら、赤信号に立って物乞いする
ボロをまとった小さな王女、彼女はその権利について情報を集める
時々彼女は故国での学生生活のことを想像してみる
もしも正義が目を見開いてくれたら、もしもシリアに平和が訪れたら
彼女に考える力が戻った時には、彼女は微笑みさえもする
彼女はシリア語で夢を見るが、フランス語で泣いている
赤信号が緑になった時、僕は一瞬ヤナが目に止まった
僕は胸に小さな痛みを感じたのだが、遅れてるんだ、急がなきゃ、とアクセルを踏む
最も大きな悲劇の数々が僕らの目の前で起こっているのに、みんな急いでるんだ、行かなきゃ…
この視線のうしろには人間がいるんだ、僕は赤信号待ちにヤナと目を交わしたのだ


(↓)「赤信号待ち」オフィシャルクリップ。
出演者はすべて市民団体エマウス・ソリダリテの施設に収容されている難民たち。出身国と職業が記されている。弁護士、会計士、ITエンジニア、電気技師、学生、主婦、ダンサー...。「この視線のうしろには人間がいるんだ」!



 

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