2015年2月28日土曜日

共和国よ、おお僕の共和国よ

アブダル・マリック『共和国広場』
Abd Al Malik "Place de la République"

(著者・出版社の承諾なしに、p12〜P13の27行を日本語訳します)

そして僕はこのシテの小径を歩く。複数の人間たちのひとりとして。僕はここでは一人だけでも徒党なのだ。僕はこのシテの通りを進む。ここではヘルメットなしでバイクに乗り、みんなジミー、ジャメル、アンリなどと名乗り、僕らのヒーローはトニーだ。歩く僕らを見ている湿ったまなざしは、工場で腰をこわした僕らの両親たち、家事手伝い婦たち、失業者たち、僕らが教育システムから逃げ出さないようにと神に祈っている破産した生活保護受給者たち。歩く僕らに儀礼的に尊敬のまなざしを注いでいる少年たちは、獄入りの回数で階級を昇進させている僕らの身分の目印を見つけるのに苦労している。僕らはここを歩き、中心街を避ける。あそこではブルジョワがあたかも僕らが卑しい病気を持っているかのような目つきで僕らを睨むから。僕らは警察と法の監視の下で歩く。彼らは僕らが生け贄の色をしているからと僕らをすでに犯罪者と断定している。そして今、僕らのナイキ・エア・ジョーダンはヴァーチャルのシテの中に入り込んでいる。その通りは僕らの住所からアレッポの廃墟までつながっているのだ。誰もが自分の属するコミュニティーを探している。おまえが好きだ、俺たちはおまえを必要としていると執拗に言ってくれる人々を探している。おまえが美しかろうが醜くかろうがそのままのおまえを採ると言ってくれる人々を。共和国よ、おお僕の共和国よ、なぜあなたはその前に僕を愛していると言ってくれなかったのか?

Abd Al Malik "PLACE DE LA REPUBLIQUE"
Editions Indigène刊 2015年2月  30ページ 3,90ユーロ



PS(記:2015年3月3日)アブダル・マリック『共和国広場』に関する向風三郎の記事は、ラティーナ誌2015年4月号に掲載されます。

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは。初めて投稿します。UBUPEREです。8年ほど前にラジオから流れてきた「Gibraltar」を耳にした時の衝撃は忘れられません。あのAbd al Malikが本を出したのですね。興味津々です。

Pere Castor さんのコメント...

Ubu Père 様、コメントありがとうございました。
アブダル・マリックは2010年アルバム『シャトー・ルージュ』以降は、音楽アーチストとしてより、著述家(小説とエッセイで4冊発表)および映画監督(初監督作品2014年映画『フランスにアッラーの祝福あれ』でセザール賞2部門でノミネートされました)としての活躍が目立っています。
著作2篇については、当ブログの2010年10月22日記事『余は如何にしてムスリムとなりし乎 』で紹介しています。読んでみてください。( http://pepecastor.blogspot.fr/2010/12/blog-post_22.html )
なお新著『共和国広場』はラティーナ4月号の向風三郎連載「それでもセーヌは流れる」で紹介します。

匿名 さんのコメント...

カストール爺様、貴重な情報をありがとうございます。アブダル・マリックの新譜の情報は久しく聞こえてこないので、あのスタイルでやり続けていくのは難しいのだろうなと思っていました。ところが、何と著作と監督業に励んでいたのですね。びっくりしました。
さっそく『余は如何にしてムスリムとなりし乎』を読ませていただきました。コメントも残しましたのでご覧下さいませ。私は『おフレンチ・ミュージック』からずーと向風三郎ファンですが、しばらくアクセスしていなかったこともあり、こうした重要な情報を知らずにいました。
ラティーナ4月号は20日に発売ですね。楽しみにしています。

Pere Castor さんのコメント...

Ubu Père 様、ありがとうございます。この小冊子の刊行に合わせて、テレラマ誌の表紙にもなりましたし、テレビ・ラジオにもよく露出するようになりました。スピリチュアルなイスラム者として、1月の連続テロ以降のイスラム叩き風潮に、やむにやまれず声を上げざるをえなかったアブダル・マリックを支持します。雑誌記事でそれがうまく伝わればいいのですが。3月20日売りの号です。

匿名 さんのコメント...

カストール爺様、ラティーナ4月号の記事を読みました。「黒人の顔写真を表紙にしたからという理由で大量の定期購読キャンセル」という噂の話はショックでした。こんな噂が流れるほどフランスは排他的だったのか... そして、B級市民が置かれた状況... フランスが主張する文化の多様性とは、白人のキリスト教文化に限定されていたのか...
マリックの優等生と犯罪者という二重性の解決としてイスラム教と音楽があったのですね。だからあんなに精神性の高い歌が生まれたのですね。
『PLACE DE LA REPUBLIQUE』と『QU'ALLAH BENISSE LA FRANCE !』をさっそく注文しました。ライシテと共和国の精神を擁護するマリックはすばらしい!

Pere Castor さんのコメント...

かの小冊子『共和国広場』はどれほど売れたのでしょうか。発売週にはプロモでラジオやテレビによく出演していましたが。黒人であること、郊外出身であること、イスラム者であること、これを歴史的な「被害者」/「負」のイメージを持たされた者と強調することを避けて(強調すると聖戦肯定論までいきますから)、共和国・人権・スピリチュアリティーの地平でものを言おうとしている。たいへん勇気ある態度だと思います。しかし、現在のフランスではこれで満場一致はありえないのです。だから何冊でも本を書いてほしいと願っています。
DVDになったら映画『フランスにアッラーの祝福あれ』もご覧になったらよろしいと思います。カソヴィッツ『憎しみ』(1995年)の20年後の弟分のような白黒映画です。