2020年1月3日金曜日

地響きトーテム

Polifonic System "Totem Sismic"
ポリフォニック・システム『地響きトーテム』


・コール・デ・ラ・プラナ(Lo Cor De La Plana 以下 LCDLP)が結成されたのが2001年のこと。つまり今年で20年。マルセイユの青年美校(ボザール)生マニュ・テロンが旅に出て、イタリアとブルガリアの民謡ポリフォニー音楽を3年間研究した末に、オック語カルチャー(民衆詩、即興討論、フォークダンス...)と融合したオクシタニア/マルセイユの”騒々しい”ポリフォニー男声合唱を編み出したのだった。踊れるを通り越してトランス状態にまで至らせる騒々しい痙攣ポリフォニーは、私たちが2000年代に注目し始めたオクシタニア・ムーヴメントの諸バンド(ファビュルス・トロバドール、マッシリア・サウンド・システム、ラ・タルヴェーロ... )とは異質の、ともすればプリミティヴですらあるシャーマン的なパワーが特徴的だった。
 この20年の間、タンバリン+手拍子+男声ポリフォニーがベースのLCDLPの他に、マニュ・テロンは楽器プレイヤー、女声ヴォーカル、異種フォルクロールなどと交流するさまざまな別プロジェクトをやってきたが、その最新がこのポリフォニック・システム。アンジュ・B(ファビュルス・トロバドール、ヒューマンビートボックス)、アルルの笛吹アンリ・マケ(マルチ・インストルメンタリスト)、セヴェンヌ山中のシャブレット(カブレット=コルヌミューズ)奏者クレマン・ゴーチエ(こちらもマルチ・インストルメンタリスト)と組んだ四人組で、基本は四声(+ヒューマンビートボックス)のポリフォニー合唱、加えて種々さまざまなトラッド楽器、さらにキリシタン・バテレン・エレキの邪法(エレクトロニクス)という三段構えの構造。これまでもそういう試みはあったとは思うが、マニュ・テロン流儀では最も "サイバー・オクシタン"な、エレクトロ・ビート・ポリフォニー。"ダンス・フロアー”(!)という感じでノリがダフト・パンクに近い曲もある。
 ブックレットに歌詞のフランス語訳がないので、詳しいことはわからないが、"RSA(最低所得手当)のポルカ”など社会風刺ものもあって諧謔はいつものマニュ・テロン通り。いつもに増して、歌詞なんざあっちむけホイ、と言いたげな畳み掛けるビート・ポリフォニー(今回は+エレクトロ)で、トランスまでの時間が短いのでは? ただエレクトロの連中がいくらがんばったって、ヴォコーダーのポリフォニーでこれは絶対できっこないのですよ。
 近年はノドの病気などで、心配な状態がしばしばあったマニュ・テロン、元気でなにより。それからファビュルス・トロバドールのアンジュ・Bも存在感十分。早くパリ圏でコンサートやってください。

<<< トラックリスト >>>

1. VAUTRES QUE SIATZ A MARIDAR
2. A DE MATIN
3. RIGODONS UN PEU
4. MA'MI FAGUETZ PAS
5. POLKAMPLOA
6. QUAND IEU ME'N VAU
7. DIVERTIGEM
8. LA PASTORA
9. IEU SOI AMAT
10. MATIN S'EI LHEVAT
11. LA FILHA D'UN PAURE OME
12. LO CAT

Polifonic System "Totem Sismic"
Buda Musique CD 860329
フランスでのリリーズ:2019年12月


カストール爺の採点:★★★☆☆

(↓)"Rigodons un peu" オフィシャル・クリップ


(↓)コンパニー・デュ・ランパロ(マニュ・テロン事務所)によるバンド紹介ヴィデオ




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