2018年3月12日月曜日

通りすがりの女たち 2018

ジョルジュ・ブラッサンス「通りすがりの女たち」
Georges Brassens "Les Passantes"

詩:アントワーヌ・ポル
曲:ジョルジュ・ブラッサンス

 ョルジュ・ブラッサンス(1921-1981)の1972年のアルバム『フェルナンド』(♫フェルナンドを思っただけで、勃っちまう、勃っちまう...)の中の1曲。詩人アントワーヌ・ポル(1888-1971)が1911年に書いた詩が原作。ポルの死の1年前1970年、ブラッサンスが詩人から許諾を得て、9連からなる詩のうち、ブラッサンスは7連を取って曲をつけ、1972年12月ボビノ座で初めて公に歌われた。
 ブラッサンスが歌った7連を対訳してみた。
Je veux dédier ce poème
A toutes les femmes qu'on aime
Pendant quelques instants secrets
A celles qu'on connaît à peine
Qu'un destin différent entraîne
Et qu'on ne retrouve jamais

ほんの短い秘密の時間に愛した
すべての女たちに
知り合ったばかりなのに
運命がわざわいして
二度と会うことができなくなった
女たちに
私はこの詩を捧げたい


A celle qu'on voit apparaître
Une seconde à sa fenêtre
Et qui, preste, s'évanouit
Mais dont la svelte silhouette
Est si gracieuse et fluette
Qu'on en demeure épanoui

窓辺にほんの一瞬現れ
そしてすぐに消えてしまう女
だけどその細いシルエットが
いともすらりと優雅で
見るものがほれぼれしてしまうような

A la compagne de voyage
Dont les yeux, charmant paysage
Font paraître court le chemin
Qu'on est seul, peut-être, à comprendre
Et qu'on laisse pourtant descendre
Sans avoir effleuré sa main

旅の道連れの女
その両目に魅力的な景色が映り
旅の時間は短くなる
一人旅だとたぶんわかる
だけどその手に軽く触れることもせず
降りるのをただ見送ってしまう


A celles qui sont déjà prises
Et qui, vivant des heures grises
Près d'un être trop différent
Vous ont, inutile folie,
Laissé voir la mélancolie
D'un avenir désespérant

あまりに異なる男の傍にいて
灰色の日々を生きる
とらわれの女たち
無用な狂気だが
絶望的な未来への
憂鬱しかあなたの目には映らない

Chères images aperçues
Espérances d'un jour déçues
Vous serez dans l'oubli demain
Pour peu que le bonheur survienne
Il est rare qu'on se souvienne
Des épisodes du chemin

映り出された親愛なる女性像たち
挫かれた未来への希望の数々
あなたたちは明日には忘れ去られるだろう
ほんのすこしでも幸福が生き延びれば
その経過でのいきさつなど
稀にしか記憶されることはない


Mais si l'on a manqué sa vie
on songe avec un peu d'envie
A tous ces bonheurs entrevus
Aux baisers qu'on n'osa pas prendre
Aux cœurs qui doivent vous attendre
Aux yeux qu'on n'a jamais revus

人生に失敗したら
人はすこしだけ羨望を持って夢見るもの
垣間見られた幸福のすべてを
あえてできなかった接吻を
あなたを待っていたに違いない恋人たちを
二度とまみえることのなかったその瞳を


Alors, aux soirs de lassitude
Tout en peuplant sa solitude
Des fantômes du souvenir
On pleure les lèvres absentes
De toutes ces belles passantes
Que l'on n'a pas su retenir

それゆえ 焦燥の夜に
思い出の亡霊たちの
孤独で胸をいっぱいにして
人は声もなく泣くのだ
とどめておくことができなかった
このすべての通りすがりの女たちを思って 

 男が人生で出会う幾多の女性たちへのオード。こういう普遍的なテーマですからね、フランス国内だけでなく世界的に愛され、イタリアのファブリツィオ・デ・アンドレ、米国のイギー・ポップのカヴァーもある。

 2018年3月8日、国際女性権利の日、ベルギー出身の24歳の写真家/映像作家シャルロット・アブラモウの制作によるヴィデオクリップが公開された。2017年秋からの素晴らしい女性たちの性暴力・性差別弾劾運動の盛り上がりを象徴するマニフェスト的な映像作品。ブラーヴァ。ベリッシマ。私はこういう女性たちを愛してやまない。

(↓)"Les Passantes" (Georges Brassens) video clip : Charlotte Abramow

2 件のコメント:

UBUPERE さんのコメント...

こんにちは!UBU PEREです。タイトルを見たてっきりゲーンズブールの話題だろうと思っていたら、何とブラッサンス!洗練された美しいヴィデオクリップから懐かしの歌声が流れてきたとき、40年前のいろいろな出来事が頭の中を駆け巡りました。しばらくブラッサンスを聴いていかなったのでまた聴き始めます。いつも素晴らしい機会を与えてくれるカストール爺さんに感謝!

Pere Castor さんのコメント...

Ubu Père さん、コメントありがとうございます。
昨今の女性たちの勢いには目を見張るばかりです。ブラッサンスの歌も見事に「読み替え」られてしまいました。今後もこのムーヴメントのいいところ紹介できたらと思っています。