2014年12月12日金曜日

僕になついちゃった猫

多分、少なからぬ数のフランス人と同じように、私はこの歌をフランス国営ラジオ局FIPで耳にし、耳から離れなくなったのでしょう。21世紀のこの世の中だから、気に入った曲ならば、ラジオ局に問い合わせたり、そのインターネットサイトで情報を得て、CDを手に入れることもMP3でダウンロードすることもできると軽く見ていたんですね。ところが見つけるのは大変でした。CDはもう廃盤になっていました。私は熱心なコレクターではないので、ラジオその他で耳にした音楽で、大好きで大好きで絶対に媒体(レコード、CD、カセット、MP3...)で手にしてやろうと思っても、手に入らなければ、簡単に諦めて、記憶の中のメロディーとしてしばらくとどめておいて、やがて忘れてしまう、という曲がずいぶん多くあったと思います。この歌もそのひとつのはずだったんですが、私は救済しましたよ。
 ジャック・ドミー映画の一シーンのような男女かけあいのデュエットでした。音符がたくさんあって歌いづらそうなワルツ曲でした。美しいフランス語でした。今日も明日もわからないのに、愛し合っている男女の歌でした(アズナヴール「ラ・ボエーム」の伝統を思わせました)。シャンソンっていいなぁ、と思いました。こういう歌が人知れず生まれては消えていく。私は記録したいなぁ、と思ったのです。私のブログというのは、少しは役に立っていると、思える瞬間があります。

(男女)今日も明日も
    この地球上で僕のものなど何もないんだ
    僕の手の運命線や生命線がきみの手のそれを混じり合うよ
(女)あなたは優しいけれど冷めちゃってる
(男)僕はきみを拒むすべを知らない
(男女)僕たちはすべてを分かち合っている。クロワッサンも、問題も、お金も、カフェ・クレームも。

(男女)僕にとってきみ以外のものなんか何も興味がないってことを
    きみはよく知ってる、ってことを僕は知ってる
    あまり遠くに行かないで
    僕の心臓はきみの心臓なしには鼓動しなくなってしまうんだから
    恋人よ、きみは僕になついちゃった猫
    羽根をやすめようとしていたチョウチョ
    僕が調和させたばかりのメロディー

(男)きみは水のほとりにいて、無造作に裸で横たわっている
   背中の下の方に見えるそそるような窪みが
   僕の頭をかき乱す
(女)あなたは頭の中で歌が生れそうになると、あわてて調子っぱずれの口笛を吹く
   あなたは目覚めたまま夢を見て、数々の浮き島を訪れてまわる
(男女)思いの中で自分を見失い
    タンポポの花をもぐもぐ咬みながら
    きみは僕たちのベッドの上で雲が流れていくのを見つめている
    恋人よ、きみは僕になついちゃった猫
    僕たちの視線が交わった時から
    すべてはとてもシンプルで、なんでも即興でできちゃう

(男)きみはすばやく動く美しさ、反り身になっても目の端で僕を見つめるんだ
   きみは新米のスターレットのように、僕を虜にするすべを知っている
(女)あなたは私にそれを語らずに、9月になったらパリから出て行こうと思っている
   あなたは目覚めながら夢を見て、流れ星と普通の星を見分けている

(男女) 今日も明日も
    この地球上で僕のものなど何もないんだ
    僕の手の運命線や生命線がきみの手のそれを混じり合うよ
    恋人よ、きみは僕になついちゃった猫
    羽根を休めようとしていたチョウチョ 
    僕がきみの唇の上にキスを軟着陸させようとしたように

 この数年で聞いた最も美しいシャンソンの一曲です。このYouTubeがなくならないうちに、たくさんの人たちに聞いてほしくて、わがブログにシェアします。

カミーユ・クトー(Camille Couteau)作詞作曲・歌
「僕になついちゃった猫」(Un chat que j'ai apprivoisé)



    
   

1 件のコメント:

ayumingo さんのコメント...

男と女の感性がずれていく、フランスシネマの一コマに迷いこんだようなすてきなシャンソン、ありがとうございました。
ふたりの声もバックの楽器の音色も柔らかなアンニュイ感とケルト音楽みたいな素朴さがあって、でも暗くない清潔感が漂って、いいな。