2026年10月17日(土)、(全世界で大ニュースとして報道されたように)高校生・学生・労組・公務員・農民・ジレ・ジョーヌらが連帯して行われた全国統一行動デモ(全国で60万人動員)に便乗した、casseurs(カスール、破壊暴徒)と呼ばれる集団による暴動によって公官庁、市役所、警察、学校、銀行などが攻撃を受け、建物や車などが焼かれ、3000軒を越す商業施設で破壊と略奪が行われ、治安部隊(CRS)との路上での衝突は市街戦(内戦、Civil War)の様相をなして深夜まで続いた。
これは私のFBのタイムラインでも書いたが、私と妻はその夜、仕事でパリに出張で来ていた娘とパリ市内(8区オースマン通り界隈)のレストランで落ち合い一緒に食事していたが、そのレストランに向かう途中に催涙ガスが立ち込めた路上で黒づくめ扮装のカスールたちと機動隊の対峙の現場を見ている。その時はニュース報道をリアルタイムで追っていなくて、23時頃帰宅してニュース専門TV局のライヴ中継を見て、初めて事態の重大さを知り青ざめた。大多数の共和国民は、私と同じように衝撃を受け、この共和国で起こるはずのなかったカオスのシーンを現実として受け止めることが難しかったに違いない。市役所・学校・公官庁など「共和国の象徴」に火を放ち、破壊し、略奪する...。
10月19日(月)、ラジオ・フランスアンテールの朝番組「ラ・グランド・マティナル」にゲスト出演したマルセイユの女優アリアーヌ・アスカリード(私と同じ72歳)は、10月17日の事件を「顔面にストレートパンチを受けたような衝撃」と例えた。イタリア移民の娘、フェミニスト、長年の共産党支持者、マルセイユの映画人ロベール・ゲディギアンの妻・同伴者にして主演女優を続けてきたアスカリードは、全国の主要都市、とりわけマルセイユでも公的施設や商店街がカスール・破壊暴徒たちの破壊行為によって甚大な被害を被ったことを受けて、インタヴュー冒頭で、言葉を選ぶことなくこれらの暴徒たちを「デビル débiles」と決めつけた。首都に次ぐ第二の大都市としてマルセイユを (東京に比した)「大阪」に例える日本人は多いが、「デビル」を罵倒語としての「あほ」と訳すことはできても、大阪弁・関西弁の「あほ」の包含する幾ばくかの憎めなさは一切排除した罵倒語として解釈されなければならない。100%ネガティヴな言葉である。
アリアーヌ・アスカリード : 私は彼らを許すつもりはこれっぽっちもないけれど、深く考えてみたいの。これらの若いデビルたち(これしか呼びようがないのよ、以前は”蛮人 vandale ”とか”未開人 sauvageon ”と呼ばれたこともあるけど)が、店を襲撃し破壊し全ての商品を略奪していく、その小さな小売店は人が生涯かけてやっと帳簿が合うように支えてきたもの、それを襲うなんて、全くもってどうしようもなくデビルなこと。それはつまりこの若い連中には根本的な”共和国的思慮 sens de la république”が完全に欠落してしまっているということ。なぜ彼らには全く”共和国的思慮”がないのか、その理由は40年以上もの長い間、彼らを共和国の中に含めなかったということなの。この若者たち、この子供たちにきみたちは共和国の一部をなすのだということをもはや教えなくなってしまった。だから彼らは共和国のことなんか全く眼中にない。彼らが見ているのは、日がな一日中ソーシャルネットワーク上に流れてくるイメージだけ。高級品。こういうタブレットが手に入ったらなあ、こんなウェアが着れたらなあ、こんなシューズがあればなあ。もうデビルとしか言いようがない。それで彼らは店を襲撃して略奪する。でも彼らが襲っているのは、彼らと似たような境遇の人たち。そのことがどうしようもなく愚かなことなのよ。
(中略)
この問題を社会学を学んだ人間として考察すれば、多くの若い人たちがフランス共和国の内部に統合されることなく外に放置されているということ。
(インタヴュアーのソニア・ドヴィレールの問い):ナポリからのイタリア移民の床屋(優秀理容師としてフランスから表彰されている)の娘、信念に基づいた共産党員、そしてあなたと同じように活動家でもある映画監督ロベール・ゲディギアンと結婚、あなたは若い頃から一貫して闘士でした。あなたは世界を変えたかったのですか?
アリアーヌ・アスカリード : 私が欲したのは "光あふれる未来”(l'avenir radieux)、私にとって正しい表現はこれ。私は”光あふれる未来”が見たかった。私はあなたに誠実に答えますけど、私はその未来を体験できるとは思っていない。私はフランスがこんな状態になったフランスにいることになるとは思っていなかった。まさに今日、今朝のような現実のフランスに。信じられないことよ。私は”光あふれる未来”に向かって進んでいるものと信じていたのよ。とても時代遅れの表現に思うかもしれないけれど、私はこの表現が好き。今日私は自分に問うの、私はもう20歳じゃないの、もう随分遠くに来たの、そして私には一人の孫がいる、私はその孫が暗闇の中で生きて欲しくないのよ。だって彼らがやったことはどういうことなの?どういうことになるの?あれは人々の恐怖心を掻き立てるのよ。それはすべて直接的に極右RN党にとってもっけの幸いなの。RNは何もしなくてもいいのよ、黙ってRNのための王道が開通してしまったのよ。でもね、みなさん(mesdames et messieurs)聞いてくださいよ、RNはあなたたちにとって良いことは何もしませんよ。
10月17日のカスールによる全国規模での大暴動の後、一番元気になった政党はRNである。「秩序」「安全」を確保できないばかりか、国家的大損害にまで陥らせた責任のすべては現政権にあると党幹部が一斉にメディアに大きく露出してがなり出した。国民の恐怖心を煽る暴徒たちの破壊映像は、テレビとソーシャルネットワークを連日独占している。
2027年5月の共和国大統領選挙まで半年、という時点で、それまでも世論調査でダントツの32%の得票予想が出ているマリーヌ・ル・ペンは、この件のあと、強権的「治安」のチャンピオンとしてますます支持率を伸ばしてしまうかもしれない。共和国が”極右の大統領”を誕生させるリスクは極めて高くなっている。
共和国に火を放ったカスールたち、アスカリードの表現では共和国的思慮(sens de la république)が完全に欠落した若者たち、デビルたち... その打撃と衝撃から、私の共和国はレジスタンスできるのか。私は共和国を守りたい。私を47年間守ってくれた共和国を守りたい。職場で、教室で、カフェのカウンターで人々は話し合っている。その輪に私も入ろう。おまえ引っ込んでろ、とは言わせない。私も共和国の成員の一人なのだから。恐怖で人々が話せなくなる社会、それが共和国の死である。アスカリードと同じ年齢(72歳)の私は、彼女が言うように”光あふれる未来”は見ることができないと思う。だが暗闇の中に入るのはなんとしてでも避ける。心ある人々、be united !
(↓)10月19日、ラジオ France Interの朝番組"La Grande Matinale"で語るアリアーヌ・アスカリード。(↑にほぼ翻訳したのは最初の5分間の部分)




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