2017年11月12日日曜日

マンチェスター娘モディアノを歌う


The Chanteuse "Modiano"
ザ・シャントゥーズ
『モディアノ』

 テレラマ誌2017年11月8日号で紹介されていた英国マンチェスターの女性シンガー、ルーシー・ホープ(ステージ名「ザ・シャントゥーズ」)の8曲入りミニアルバム。タイトルが示すように2014年度ノーベル文学賞受賞作家パトリック・モディアノ(1945 - )が、作家デビュー(1968年『エトワール広場』)する前に、リセ・アンリ・キャトル校のダチだったユーグ・ド・クールソン(70年代プログレッシヴ・フォークバンドのマリコルヌ)と作詞作曲コンビを組んでいた時期のモディアノ作詞の歌8曲のカヴァー。この辺の事情は拙ブログのここにその中の1曲「サン・サルバドール」(映画『禁じられた遊び』テーマで知られる曲「愛のロマンス」にモディアノが詞をつけたもの。このザ・シャントゥーズのアルバムの2曲め)の日本語訳つきで紹介されているので、参照のこと。
 一般に世に知られているのはフランソワーズ・アルディによって歌われた「驚かせてよブノワ(Etonnez-moi, Benoît)」(1968年録音)の1曲のみ。
 ちなみにモディアノ最新小説『眠れる記憶(Souvenirs Dormans)』(2017年10月刊)の中で、作詞作曲家協会の会員になりたての頃、パリ13区にあった大手レコード会社ポリドールの録音スタジオに出入りしていたこと、そこで秘書として働いていた女性「ジュヌヴィエーヴ・ダラム」と接していたこと(小説の要!)が記述されている。
さて、ザ・シャントゥーズはオクスフォード大学で現代フランス文学を学び、パトリック・モディアノを卒論にしたのだそう。地元のサイケデリック系のバンド The House Of Glass のヴォーカリスト/作詞家であるほか、ホラー映画の映画音楽を担当したり。本業のスペシャリティーはフランス語シャンソン/ヴァリエテのカヴァーであるよう。レパートリーとして挙げられているのは、ブレル、ピアフ、ブラッサンス、バルバラ。YouTube に発表されている動画を見ると、フレンチ・シクスティーズ (アルディ、ゲンズブール、バルドー...)を売り物にしているよう。
 まあ、それを「おしゃれ」と思っているのか、フランスにはゲンズブールしか天才はいないと思っているのか、そういう浅薄な動機で発表される(外国の)カヴァー作品はとても多い。英国のザ・シャントゥーズのこのアルバムも「68年5月」「メロディー・ネルソン」「ジャン=クロード・ヴァニエ」などのリファレンスが。厚みのある声、クラシカル(古風なストリングス)な編曲、わずかにキャバレー歌手風な英語訛り.... 行ったことないけれど、英国大都市の小さなシャンソン酒場のショーみたいなものを想像してしまう。あの頃の日本のようにフランソワーズ・アルディを「アンニュイ」と言うなら、このルーシー・ホープの声は「スプリーン」と言えると思う。

<<< トラックリスト >>>
1. LES OISEAUX REVIENNENT
2. SAN SALVADOR
3. LES ESCALIERS
4. A CLOCHE-PIED SUR LA GRANDE MURAILLE DE CHINE
5. L'ASPIERE-A-COEUR
6. JE FAIS DES PUZZLES
7. LA COMPLAINTE DE ROLAND GARROS
8. ETONNEZ-MOI, BENOIT

CD/LP/Digital  UK Metropolis Labels
英国でのリリース : 2017年10月7日

カストール爺の採点:★★★☆☆

(↓)ザ・シャントゥーズ「鳥たちは戻ってくる Les Oiseeaux Reviennent」のクリップ。

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