2017年2月11日土曜日

むちむちぷりん

Jean Gabin "Maintenant je sais"
ジャン・ギャバン『今や知れり吾』

 無知の知ソクラテス)、クセジュ(われ何をか知る。モンテーニュ)、私は何も知らないということを、60歳になって悟るという歌です。1974年に発表されたシングル盤です。20世紀フランスを代表する世界的名男優ジャン・ギャバン(1904-1976)が歌っています。この歌の2年後にギャバンは72歳でこの世を去っており、この歌の「60歳にして」という内容に関わらず、実際のギャバンは70歳でこの歌を吹き込んでいます。
 作曲は英国人コンポーザー、フィリップ・グリーン(1911-1982)ですが、仏ウィキペディアではなぜかフランシス・レイ作曲と記述されています。 作詞は、2008年からフランス学士院(アカデミー・フランセーズ)会員という国家的賢人となっているジャン=ルー・ダバディー(1938 - ) (ミッシェル・ポルナレフ「哀しみのエトランゼ」、ジュリアン・クレール「マ・プレフェランス」...)です。歌ったギャバンは70歳でも、書いたダバディーはこの36歳。年齢を見たら、何でおまえがこんな知ったような口を、と思いたくなるような詞です。
リンゴ3個分ぐらいの背丈しかなかったガキの頃
俺は一人前に思われたくていつも大声でこう言ってた

「知ってるよ、知ってるさ、知ってるとも!」
 

それが始まりだった、春みたいなものさ
18歳になった時、俺は言ったもんだ
「さあ大人だ、今こそ俺は何でも知ってるんだ」
 

そして今、俺は昔の日々を思い返している
俺が何百歩と毎日踏むしめてきた地球だが 
それがどうやって回っているかなんて未だに知らないんだ
 

25歳頃、俺はすべてを知っていた
恋、バラの花々、人生、金
特に恋は俺は一通り全部やってみたさ!
 

幸いにして,他のダチたちと同様で、
俺は自分のパンを食べ尽すことはなかった
人生の半ばで、俺が知ったことだってある
俺が知ったそのことは短い言葉で言えばこういうことさ
 

「だれかがおまえを好きになってくれた日、それは快晴の日だ」
これ以上俺はうまく言えない、それは快晴の日だ!

 今や人生の秋にある俺にさえ、

まだ人生で驚くことがあるんだ
悲しみの夜の多くは人は忘れてしまうもんだ
だけど優しい朝のことは決して忘れないんだ!

若い時は、俺は「知ってるさ!」とばかり言いたかったんだ
ただ、探せば探すほど、俺が知ってることなんて少ないものなんだ

今や時計は60の時を告げて鳴ってしまった

俺は窓辺に立ち、外を眺め、自分に問うてみる

俺は今わかった、

「人は決して知ることなどないのだ」ということを
 

人生、恋、金、友だち、バラの花々
これらのことの音も色も、人は決して知ることなどないのだ
それが俺が知っているすべてのことだ!
そのことは俺は今知っているよ!
年齢がものを言わせるような詞ではありますが、70年代では60歳というのは本当に人生の秋という感覚だったでしょう。21世紀的今日、60歳がまだ「働き盛り」のような扱いを受けて、社会のど真ん中に踏みとどまっています。それは私は間違ってると思う。60歳ぐらいになったら、やはり過去を振り向いていろいろ悟って、次世代にいろいろ譲って、違う余生に進んでいくべきだと思っています。かく言う私はもうすぐ63歳になります。私は何も知らないということを、ようく知っています。むちむち爺。

(↓)ジャン・ギャバン「マントナン・ジュ・セ」


(↓)イオソ、イオソ、イオソ! 珠玉のカヴァー、ジノ・パオリ「イオ・ソ・ケ・ノン・ソ」(1996年)



(↓)映画スターの語りソング・ヒット曲の元祖、アンソニー・クイン「アイ・ラヴ・ユー、ユー・ラヴ・ミー」(1967年)。同志たち、よい聖バレンタインを。


(↓)ギャバン "je sais je sais"とアンソニー・クイン "I love you"をイントロでパロったアラン・スーション(&ヴールズィのコンビ)の佳曲 "Y a d'la rumba dans l'air" (1977年)


(↓) I know, I know, I know...

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