2016年10月20日木曜日

Yes Oui Can

V/A "Les Artistes Français chantent en Anglais - The French Artists sing in English"
V/A 『英語で歌うフレンチアーチストたち』

 ルシアル・マルチネーのMAGIC RECORDSの2016年9月新譜です。この会社も私の会社同様2000年代に何度か倒産を噂され、その「閉業在庫処分セール」を手伝ったこともあります。奥さんと娘さんと3人企業としてしぶとく残っているところは、私の会社と全く同じで、たまに電話で話すたびに、お互いの連帯・友情を確かめ合う、そんな仲でコラボレーションを続けております。コレクターの琴線をくすぐる60-70年代盤の復刻で大変評価の高い仕事をしているレコード会社ですが、オリジナル盤の復刻よりも、そのサービス精神のためかたくさんのものを詰め込む編集盤が多く、その辺がオリジナル盤を求めるコレクターの欲求とソリが合わなかったり。そして、残念なのは解説や資料が乏しいのです。今日び、インターネットで検索すれば、多くのことは知ることはできますけど、ライナーノーツに解説やデータがあれば、どれだけ助かるか、と思うことしばしばです。マルチネー自身が稀代のコレクターなので、 あまり手の内をバラしたくないのかもしれません。
 この編集盤も、おそらく全曲マルチネーのシングル盤(あるいはLP)コレクションからの選曲だと思います。25曲トータルランタイム78分。なんという気前良さ。2枚に分けて、vol 1, vol.2 として、倍の売上を狙ったっていいところだと思いますよ。太っ腹のCD1枚もので登場。しかし解説が皆無。
 要は60年代から70年代前半にかけて、歌詞を英語で録音したレコードを出したフランスのアーチストたちの珍盤の数々というわけです。かつてはフランスは英語を話すのが不得意な国の代表みたいに言われていましたし、隣国ドイツやオランダや北欧が英語バイリンガルが一般的になった時代にも、パリのような大都市でも英語がほとんど通じなかった。この60-70年代ももちろんそんな時期で、英米アーチストならともかく、フランス人が英語で歌ったら、ひっこめバカヤローと言われてもしかたなかったでしょう。
 英語で歌う理由は多々あったでしょう。フランソワーズ・アルディやサッシャ・ディステルのようにイギリスで人気の出た歌手たちは当然英語を要求されたでしょう。1957年に始まったユーロヴィジョン・ソングコンテストは、欧州各国の大衆歌謡曲を加速度的にショービジネス化して、歌の市場の国境を取り去り、国際ヒットという可能性をもたらしました。あの頃はまだフランス語で国際ヒットというのは可能でしたし、ベコー、アズナヴールといった大シャンソン歌手たちは世界中にファンを持っていましたが、次世代はシャンソンの未来というのはあまり考えられなかったようで、英語というのは「世界」という可能性を与える言語だったのです。そして時を同じくしてやってきた「ロック革命」というのがありまして、若い世代を熱狂させたこの音楽は、やっぱり「英語で歌われてこそ」と思われたのです。日本70年代に「日本語によるロックは可能か」と論争されたように、フランスでも同じようなことがあり、フランス語は全然ロックに乗らない、と否定的なことを言う人たちが多かった。ロックだけでなく、ブルース、R&Bなどから音楽を始めた若い人たちも「フランス語で」などと考えもせず、英語の方が本物なのだから、という感覚。
 そんな時期のフランス人アーチストたちなのです。ここに収められた25曲で、真に世界的ヒットで、今日もナツメロFMの定番となっている曲はたったひとつ、ジルベール・モンタニエの「ザ・フール」(1971年。この年モンタニエ19歳)だけです。
 モロッコ出身のR&B歌手ヴィゴン(フランス人ではないんですけど、まあいいじゃないですか)の「ハーレム・シャッフル」(1967年)もザ・ローリング・ストーンズがカヴァーしたということで時々ナツメロTVラジオに登場しますが、これはヴィゴンがオリジナルヒットというわけではない。
 イエイエの大物たるジョニー・アリディ、リシャール・アントニー、ディック・リヴァース(レ・シャ・ソヴァージュ)も意外な側面と言えないことないけれど、国際色よりもローカル色が出ますね。
 大物で大変驚いたのはクリストフで、ジョルジュ・ロートネール監督の『サリナへの道(ROAD TO SALINA)』(1970年仏伊合作サイケデリック・ミステリー映画。主演にあの『モア』 のミムジー・ファーマー)の映画音楽を担当し、その主題歌「サリナから来た女(The Girl from Salina)」は抒情サイケ・プログレど真ん中の迫力です。
 映画音楽ものではレイモン・クノーの同名小説を映画化した "ON EST TOUJOURS TROP BON AVEC LES FEMMES"(1971年、ミッシェル・ボワロン監督 = 日本ではナタリー・ドロン&ルノー・ヴェルレー主演『個人教授』でことさら有名) の音楽で、クロード・ボーリング作 "A LITTLE PEACE OF MINDE"(歌:Trianglophone)という、カントリー調のサントラ大御所芸の作品も。
 しかし、この編集盤の宝ものは、やはりポップ・ロック系の隠された佳曲の数々で、うれしい発見多々あり。後年映画音楽(特に『37,2 ベティー・ブルー』)で名を成すガブリエル・ヤレドと、後年(スタジオセッション)コーラスデュオとして名を成すコスタ兄弟(ジョルジュ・コスタ&ミッシェル・コスタ)の3人組 COSTA YARED COSTA(1973年)とか。それから後年バシュングの作詞家で名を成すボリス・ベルグマンが、ギリシャのアフロディーテズ・チャイルド(デミス・ルソス&ヴァンゲリス・パパタナシュー)「レイン・アンド・ティアーズ」(1968年) に続く国際ヒットを目指して書いた、(フランス人スタジオミュージシャンの即成バンド)ジュピター・サンセットの "BACK IN THE SUN"(1970年)。フェージングのかけ方があの時代を思わせますよね(バルバラ「黒いワシ」も1970年)。同じくボリス・ベルグマンが、同じようにスタジオミュージシャンかき集めの即成バンドで、当時人気のあったアンデス民謡(コンドルは飛んで行く...)にインスパイアされた曲調で(午後の数時間で)録音したシングルがタイム・マシーン「ターン・バック・タイム」(1971年)。こういうスタジオでバンドでっち上げてシングルヒットを狙うというパターン、よくありましたね。
 北フランス、リール出身のバンドで、当ブログで2009年6月に大きく紹介したアナーキック・システムもこの盤で取り上げられてます:「ロイヤル・サマー」(1973年)
 カヴァーものでは、ビートルズの「エリノア・リグビー」を1971年に CSN風コーラスワークとプログレ・ギターでやっているイルース&ドキュイペというデュオ(Bernard Inous & Patrice Decuyper)。


 それでもやっぱりイギリス人にはかなわない、と思わせるのが、60年代からシルヴィー・バルタンやジョニー・アリディのライター/コンポーザー/アレンジャー/バンドマンとして活躍していたイギリス人二人、ミッキー&トミー(ミッキー・ジョーンズ&トミー・ブラウン)の手になる曲で、ここでは「フランスのブライアン・ジョーンズ」ロニー・バードが歌っています:「サッド・ソウル」(1969年)。



 と、まあ、いろいろと発見のある盛り沢山の1枚。マルシアル・マルチネーに最敬礼。

<<< トラックリスト >>>
1. JOHNNY HALLYDAY "SHAKE THE HAND OF A FOOL" (1962)
2. JOEL DAYDE "DO IT NOW" (1972)
3. GILBERT MONTAGNE "THE FOOL"(1971)
4. JUPITER SUNSET "BACK IN THE SUN" (1970)
5. HECTOR & LES MEDIATORS "WHOLE LOTTA SHAKING GOIN' ON"(1963)
6. VIGON "HARLEM SHUFFLE" (1967)
7. ALAN JACK CIVILISATION "SHAME ON YOU" (1969)
8. LES 5 GENTLEMEN "DAYTIME" (1968)
9. CENTURY "WHY (DID YOU TAKE SO LONG)" (1970)
10. LES VARIATIONS "COME ALONG" (1968)
11. TRIANGLE "BLOW YOUR COOL" (1970)
12. RICHARD ANTHONY "PERSONALITY" (1959)
13. COSTA YARED COSTA "GOT ME" (1973)
14. DOC DAIL "SAD HAROLD" (1969)
15. TRIANGLOPHONE "A LITTLE PEACE OF MIND" (1975)
16. ZOO "HARD TIMES GOOD TIMES" (1971)
17. MORRIGANN "MY LADY NEVER SAID GOOEBYE" (1972)
18. CHRISTOPHE "THE GIRL FROM SALINA" (1971)
19. HOLLY GUNS "CRAZY WEEK" (1969)
20. CLASSICAL M "SUCH A LOVELT VOICE" (1970)
21. ANARCHIC SYSTEM "ROYAL SUMMER" (1973)
22. RONNIE BIRD "SAD SOUL" (1969)
23. ILOUS & DECUYPER "ELEANOR RIGBY" (1971)
24, LES CHATS SAUVAGES "I'M A PRETENDER" (1962)
25. TIME MACHINE "TURN BACK TIME" (1972)

V/A "LES ARTISTES FRANCAIS CHANTENT EN ANGLAIS"
CD MAGIC RECORDS 3931014
フランスでのリリース : 2016年9月 



PS : これなんかも本当に大好き。ZOO "HARD TIMES GOOD TIMES" (1971)


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