2013年10月24日木曜日

ミッキー・ベイカー(1925-2012)はフランスで死んだ。

Mickey Baker "Mickey Baker Plays Mickey Baker" + "Mickey Baker Joue La Bossa Nova"
ミッキー・ベイカー『1962年フランス録音集』

 ミッキー・ベイカー(1925年ケンタッキー州生れ、2012年トゥールーズ没)の、1960年フランス移住後の仏ヴェルサイユ・レコードに録音した2枚のアルバム "MICKEY BAKER PLAYS MICKEY BAKER""MICKEY BAKER JOUE A LA GUITARE BOSSA NOVA"(共に1962年録音)とシングル盤ESPERANZA"(仏オデオン1962年)を加えた25CDです。
 両親に見捨てられて孤児院で育ち、42年にNYCに出て石炭運搬人などの職を転々として47年からアポロシアターの楽屋に入り浸るようになり、ミュージシャンを志します。最初はトランぺッターにと思ったんですが挫折、次いで中古のギターを買って日夜練習しまくること3年、当時流行のビバップ楽団ジミー・ニーリー(Jimmy Neely)オーケストラに入団、53年からはNYCの録音セッションギタリストとして、エルヴィス・プレスリー、レイ・チャールズ、リトル・ウィリー・ジョンなどの録音に参加。平行してRB女性歌手シルヴィア・ヴァンダープールとのデュエット・チーム「ミッキー&シルヴィア」として自作曲を歌って成功していき、その中にかのミリオンヒット"LOVE IS STRANGE" 1956年。ボ・ディドリー作)があります。 
  で、その後のシルヴィアの結婚ということが大きな原因なんでしょうが、かなり音楽家として成功していたのに、1960年、アメリカを去ってフランスに渡ってしまう。親友メンフィス・スリム(1915-1988)がフランスに来いよ、と誘っていたという説もあります。このILD盤の解説をILD創始者のイヴ=アンリ・ファジェ翁が書いていて、それによるとアメリカのショービジネスの極端な金儲け主義と、ヒットと成功の度にぶつかる人種差別の問題に辟易してしまったのだ、としています。そういうアメリカ黒人のアーチストがいっぱいフランスに来ました。上のメンフィス・スリムだって、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスだって、古くはジョゼフィン・ベイカーやマイルス・デイヴィスもその例でしょう。
  仏オデオンと独占契約をしたミッキー・ベイカーは, 新進のロック歌手ビリー・ブリッジ(こういう源氏名ですがフランス人です)のギタリスト&編曲者としてダンス「マジソン」を大ヒットさせます。その他ロニー・バード、フランソワーズ・アルディ、シルヴィー・ヴァルタンなど、イエイエの人気歌手たちから引っ張りだこのギタリストになってしまいます。のちにフランスの戦闘的ブルース歌手として知られることになるコレット・マニー(1926-1997)の唯一のヒット曲「メロコトン」にもギターで参加しています。そしてナンタル、ゴヤ、1964年から67年にかけて、シャンタル・ゴヤの編曲家プロデューサー(何曲かの作曲も)となり、ゴヤを主役にしたゴダール映画『男性・女性』(1966年)ではミッキー・ベイカーがレコードプロデューサー役で出演もしているのです!
(↓ゴダール『男性・女性』このYouTube30秒めから57秒めに出て来る指揮振りのおじさん

  イエイエ世代のマスト雑誌「サリュ・レ・コパン(SLC)」の社長ダニエル・フィリパキ(元々はジャズ評論家)の依頼でベイカーはギター教則本("La méthode de guitare SLC" = サリュ・レ・コパン流ギター教本 )を出版するのですが、これが若いギタリストたちの聖書と化してしまうのです。という具合にフランスのショービズ界にも溶け込んでしまったのですが、やはりアメリカでもそうだったように、フランスのショービズにも辟易してしまって、後年ブルースに戻っていきます。78年には来日して高円寺「次郎吉」で吾妻光良らとプレイしたそうです。 - - -   
  だからと言ってブルースアルバムを期待されては本当に困るんですが、アメリカのコレクター諸氏にもあまり知られていなかったフランス62年録音の2枚です。1枚め(112曲め)の方はブルースともジャズとも距離があるエレキ・インストアルバムです。パーティーでジルバを踊るために作られたような。オルガンとピアノにジョルジュ・アルヴァニタス、トランペットにロジェ・ゲラン、ベースにミッシェル・ゴードリー、ドラムスにダニエル・ユメール等々、当時のフランスジャズ界の錚々たるメンツが参加してます。2枚め(13曲め以降)はおそらくフランスで最初の「ボサノヴァ」録音だそうです。パーティーでボサノヴァって新しかったんでしょうね。こちらもオルガン&チェレスタでジョルジュ・アルヴァニタス、コントラバスにピエール・ミシュロなどが参加しているのに加えて、後年にクラシック・フルートの世界的なスターとなるマクサンス・ラリューの名前も。ま、全体的に軽めのヌーヴェル・ヴァーグ映画のサントラのようにも聞こえる若年寄&腕達者インストばかりの25曲です。ILDですから。

<<< トラックリスト >>>
1. ZANZIE
2. OH YEAH, AH, AH 
3. DO IT AGAIN 
4. NIGHT BLUES 
5. FUGUETTA BLUES 
6. DO WHAT YOU DO
7. NO NAME 
8. BAKER'S OTHER DOZEN 
9. GONE 
10. MISTER BLUE
11. STEAM ROLLER
12. BABY LET'S DANCE
13. DESAFINADO
14. DORALICE 
15. O BARQUINHO
16. PARISIAN HOLIDAY 
17. TING TOUNG 
18. ESO BESO 
19. CHEGA DE SAUDADE 
20. SAUDADE DE BAHIMA 
21. DECADO 
22. MEDITACAO 
23. SAMBA DE UNA NOTA SO
24. BRASILIAN LOVE SONG
25. ESPERANZA

MICKEY BAKER "MICKEY BAKER"
CD ILD 642332
フランスでのリリース:2013年10月

(↓上の11曲め、ミッキー・ベイカー「スティーム・ローラー」)
 

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