2020年12月13日日曜日

トービラ+スリマニ、若い世代へつなぎたいこと

 女性雑誌の世界的リーダーにして、明確なエディトリアルをもって女性史と共に歩んできた「エル」誌が創刊75周年を記念して特別号(2020年12月11日付)を。表紙は7種類用意され(ジェーン・バーキン+二人の娘、イザベル・アジャーニ+娘、イザベル・ユッペール+娘...)その中のひとつが、クリスティアーヌ・トービラ(元法相)とレイラ・スリマニ(ゴンクール賞作家)のツーショット。当然写真撮影だけではなく、この記念号のために二人の特別対談も掲載されているわけだが、誌面の都合なのか対談部分はたったの3ページ(美しい写真を含めると6ページ)の扱い。同記事の前置きで「(同誌のパリの撮影スタジオの)スタッフがいなかったら、会話は何時間も続いていただろうし、この二人の夜更かし好きのことだから、ひと晩徹してでも...」と言い訳してはいるが。さて同誌75周年の特集テーマは「トランスミッシオン (Transmission)」世代から世代への伝達である。ELLE誌が媒体となって75年間女たちが伝え継いできたことの総括のような特別号にあって、この68歳と39歳の女筆闘士が次世代につなぎたいことは何か。その記事の一部を以下に(無断)翻訳してみましょう。
エル「15歳から25歳までの若いフェミニスト世代とあなたたちはどんなつながりの関係があると思いますか?」
レイラ・スリマニ:この若い世代の方が私に教えてくれるものがたくさんある!彼女たちには大胆さがあり、自分たちの権利とその正当性への強い意識があり、一緒に行動する能力がる。これは私の時代に体験したこととはまるで違う。彼女たちは往々にしてラジカルさを帯びてしまうけど、それは今の社会には必要なことよ。彼女たちは私を笑わせることもできる。そのユーモアで私を感動させたりもする。彼女たちのトーンの自由さね。
クリスティアーヌ・トービラ:私が付け加えるとすれば、彼女たちが動機や主義をかき混ぜたり、混ぜ合わせたりすることは全く正しいことであるということ。たまに混同したり、間違ったりすることもね。そして私は若い男の子たちのことも考える。彼らにはその父親や祖父の世代が持っていた幻想がない。女の子たちが自分たちより優秀な成績を取り、クラスの代表となり、権力を持つに至って、男の子たちは自分たちが弱体化したとは感じなくなっている。これは非常に未来への期待を抱かせることよ。私はバラ色の未来図を描こうとしているのではないのよ、でもこれは重要な傾向よ。私がむしろ問題にしたいのはこわれやすくもろい女の子たちのこと。ブルドーザーのように胸を張って突き進む少女たちではない子たち。この世代にあっても人間は控えめである権利はあるし、弱さの中で身動きが取れなくなっている場合もある。ひとりひとりが充実して生き、罪悪感なく人間として開花していくにはどうすればいいのか?これは現代社会が人の運命を細かく個人化していく傾向が強くなるほどより重要な問題となっていっている。あなたが強くて、前に進めるのだったら、それはすばらしいこと。だけどもしもあなたが弱かったら、あなたに手を差し延べる人はいるの?
レイラ・スリマニ:そうよ、強い女性たちに光を当てることだけで満足していてはいけない。たくさんの目に見えない力というのがあり、それがその形となって見えるべき力なのだけれどそうなってないものがある。私の夢は取締役会のトップとなって、テーブルの上に足を上げて、葉巻を吸うことではない! 個人の力など社会のプロジェクトになり得ない、その力は共同のものでなければならない。

(ELLE 2020年12月11日号 p140)

(↓)クリスティアーヌ・トービラ「若い世代へのメッセージ」(BRUT 2019年2月)

0 件のコメント: