La Talvera "A Tu Vai"
ラ・タルヴェーロ『ごたくはたくさんだ』
ラ・タルヴェーロのオリジナルアルバムとしては2014年の『Solelh Solelhaire(ソレルー・ソレライール)』以来、6年ぶりです。ダニエル・ロッドーとセリーヌ・リカールの夫婦が結成したオクシタン・フォークのバンド、ラ・タルヴェーロも今年41周年を迎えた。前作『ソレルー・ソレライール』録音時にモンペリエ大学の学生(音楽治療学musicothérapie専攻)だったアエリス・ロッドー(セリーヌとダニエルの娘)が、ヴァイオリニスト/ヴォーカリストとして全曲参加。まあ正式メンバーということでしょうね。ロッドーヘリテッジ(バンドの未来はアエリスにかかっている。まかせたぞぉ)。Isn't she lovely ? Aelisアエリスというのはとても素敵な名前だと思う。子沢山と聞いているロッドー夫妻に何人子供がいるのか知らないけれど、アエリスの姉エステラはワイン園を営んでいるようだ(FB友なので知っている)。みんなおかあちゃん(セリーヌ)に似て大地の母になるんだろうなぁ。
さて新アルバム『ア・トゥ・バイ』はジャケが色調もデザインもスティーヴィー・ワンダーの超名盤『キー・オブ・ライフ』(1976年)によく似てます。スティーヴィー盤ではグルグル多重円のまんなかはワンダー氏人生の鍵を見つけたような白光の覚醒顔となってますが、ラ・タルヴェーロ盤は真ん中に振り上げられた握り拳が五つ、つまりラ・タルヴェーロの五人の闘志の誇示がシンボライズされてます。改めて五人を紹介しましょう。ダニエル・ロッドー(ヴォーカル、ディアトニック・アコーディオン、コルヌミューズ2種、オーボエ、バンジョー、カバッキーニョ、口琴...)、セリーヌ・リカール(ヴォーカル、フィフル、フルート、オーボエ...)、アエリス・ロッドー(ヴォ^カル、ヴァイオリン、ヴィオラ)、ファブリス・ルージエ(クラリネット、サクソフォン各種)、ジャン=ピエール・ヴィヴァン(ドラムス、パーカッション)。このアルバムの録音にはこの他に多くのブラジル人ミュージシャンが参加しているが、ジャイール・ボルソナーロの暴政とブラジルでのコ禍の猛威のためにブラジルに帰れなくなっていて、このこともロッドー一座のプロテスト心を掻き立てるものになっています。
ラ・タルヴェーロのオリジナルアルバムとしては2014年の『Solelh Solelhaire(ソレルー・ソレライール)』以来、6年ぶりです。ダニエル・ロッドーとセリーヌ・リカールの夫婦が結成したオクシタン・フォークのバンド、ラ・タルヴェーロも今年41周年を迎えた。前作『ソレルー・ソレライール』録音時にモンペリエ大学の学生(音楽治療学musicothérapie専攻)だったアエリス・ロッドー(セリーヌとダニエルの娘)が、ヴァイオリニスト/ヴォーカリストとして全曲参加。まあ正式メンバーということでしょうね。ロッドーヘリテッジ(バンドの未来はアエリスにかかっている。まかせたぞぉ)。Isn't she lovely ? Aelisアエリスというのはとても素敵な名前だと思う。子沢山と聞いているロッドー夫妻に何人子供がいるのか知らないけれど、アエリスの姉エステラはワイン園を営んでいるようだ(FB友なので知っている)。みんなおかあちゃん(セリーヌ)に似て大地の母になるんだろうなぁ。
さて新アルバム『ア・トゥ・バイ』はジャケが色調もデザインもスティーヴィー・ワンダーの超名盤『キー・オブ・ライフ』(1976年)によく似てます。スティーヴィー盤ではグルグル多重円のまんなかはワンダー氏人生の鍵を見つけたような白光の覚醒顔となってますが、ラ・タルヴェーロ盤は真ん中に振り上げられた握り拳が五つ、つまりラ・タルヴェーロの五人の闘志の誇示がシンボライズされてます。改めて五人を紹介しましょう。ダニエル・ロッドー(ヴォーカル、ディアトニック・アコーディオン、コルヌミューズ2種、オーボエ、バンジョー、カバッキーニョ、口琴...)、セリーヌ・リカール(ヴォーカル、フィフル、フルート、オーボエ...)、アエリス・ロッドー(ヴォ^カル、ヴァイオリン、ヴィオラ)、ファブリス・ルージエ(クラリネット、サクソフォン各種)、ジャン=ピエール・ヴィヴァン(ドラムス、パーカッション)。このアルバムの録音にはこの他に多くのブラジル人ミュージシャンが参加しているが、ジャイール・ボルソナーロの暴政とブラジルでのコ禍の猛威のためにブラジルに帰れなくなっていて、このこともロッドー一座のプロテスト心を掻き立てるものになっています。
というわけでこのアルバムは2020年コ禍の夏に録音された。いつも通りオクシタニア、タルン県コルド・シュル・シエルのアソシアシオン・コルダエ(オクシタニア文化資料館、出版書店、ワークショップ...)のホームスタジオでの録音。 いつもながらのオクシタニアと南米大陸をクロスオーバーするサウンドでバレティ(オクシタニア・フォークダンス)へと誘う軽快で土臭いフォークソングの数々。セリーヌとアエリスの掛け合いとハーモニーで歌われるのは、オクシタン・トルバドゥールの伝統芸である世相風刺や権力批判や自然賛美など。前作と新作の間に起こった最重要事件として、ノートル・ダム・デ・ランド(ナント新空港)空港建設反対の50年以上におよぶ農民(+エコロジスト市民団体)闘争が2018年に(国による建設断念決定をもって)勝利したこと。このアルバムに添付されたブックレットの表紙写真(←)は、ノートル・ダム・デ・ランドの闘争の現場であるZADでデモ行進バンドとして参加したラ・タルヴェーロの面々。アルバム7曲めの"Buta Butèrna"はまさにそのバリケード闘争歌:
Buta butèrna e buta plan 押せよ同志たち、強く押せTenèm las barricadas バリケードを守ろう
Buta butèrna e buta plan 押せよ同志たち、強く押せ
Que non passaràn pas やつらを通してはならない
2020年コ禍で緊急事態宣言から今日まで二度の長期にわたる外出制限があったフランス。外に出るたびに「アテスタシオン(外出特例証明書)」という"パピエ(紙っぺら)”を携行しなければならなかった。この義務を皮肉って、もともとフランスは何にでも"パピエ”が必要な国でそれがどんどんエスカレートする、という内容の歌がアルバム1曲めの"Los papières"(紙っぺら)。その最終リフレイン部:
定年退職するためにパピエ休息するためにパピエ援助してもらうためにパピエ子供扱いされるためにパピエ
延命させてもらうためにパピエ
延命装置を切ってもらうためにパピエくたばるためにパピエ
最期のお水をもらうためにパピエ
遺言するためにパピエ
それで揉め事をこさえるためにパピエ
ミイラにしてもらうためにパピエあるいは埋葬してもらうためにパピエあるいは火葬してもらうためにパピエ
墓に入るのにも許可証がいる
だったら生きていようじゃないか
最後の審判の時まで
("Los papières")
6曲めに"A nuèit a la talvera(今宵タルヴェーロで)"という現役40年選手のバンドのマニフェスト的な歌がある。「ラ・タルヴェーロ」とはオック語で耕された畑地の縁にできる畦(あぜ)のことで、オクシタン作家ジョアン・ボドン(Joan Bodon 1920 - 1975)のことば
"Es sus la Talvera qu'es la libertat !"(ラ・タルヴェーロの上にこそ自由がある!)が、41年前ロッドーたちのバンド名およびアソシアシオン名の由来となっている。
今宵タルヴェーロでは五人のミュージシャンが来て
一晩中音楽を奏でるよ熱情に満ち満ちて
この名高い楽団の音楽をよくお聞きルーマニスクやブーレやブランルーを奏でるよこの勇ましい楽団は犬も踊らせることができるよ論戦ももってこいさ政治のことを歌わせたら
いつも新しい批判の一節を編み出してそれはいたるところに広がっていくよ
("A nuèit a la Talvera")
ロッドー一座版の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」みたいなものでしょう。
終曲14曲めに、世界中の暴君を叩くちょっと壮大な歌 "Lo Reiet Dels Cons"(愚者たちの王)がある。この歌は南仏トルバドゥールの偉大な後裔ジョルジュ・ブラッサンス(1921 - 1981)の歌「Le Roi des Cons (愚者たちの王)」をリファレンスとして、若き王のように振る舞う現フランス共和国大統領だけでなく、世界の愚権力者たちをこき下ろしていて、中間メロディーにヴェルサイユの宮廷音楽家ジャン=バチスト・リュリー(Jean-Baptiste Lully 1632 - 1687。ちなみに現代日本の高名な女性政治学者が、お名前アルファベット表記を Lully としているが、権力を持ち上げる音楽家と学者という点で結ばれているのか)の「トルコ人の儀式のための行進曲」を導入している。
愚者たちの王がまだ死んでいないんだよ、ジョルジュそいつは玉座にしっかり居座っている
愚者たちの王がまだ死んでいないんだよ、ジョルジュ
このバカを倒そうじゃないか
アメリカには既にバカがいて
世界を牛耳ろうとしている
南米のバカどもは
そいつに手名付けられた
ロシアには執念の塊がいて
同じような夢を持っていて中国の偉大な指導者は慈善家の役を演じている("Lo Reiet dels Cons")
と、まあ、14曲の新アルバム、風刺とダンスとオクシタニア愛に満ちたトルバドゥール節満載。ダニエル・ロッドーが合いの手で奇声やルルルル....という舌音で場を盛り上げる(アニマシオンする)のが重要な効果になっているのだけれど、ダニエル(全盲です)のイマジネーションではダンスの輪はどんな図となっているのだろうか。スティーヴィーとダニエルは似たようなインナーヴィジョンズがあるのかもしれない。同じように(楽器の種類こそまるで違えども)マルチインストルメンタリストであることだし。セリーヌ・リカールはすっかり肝っ玉かあさんだけど、野鳥のような歌声の可憐さは全然変わっていない。アエリスにはこの可憐さが欲しいところであるが、追々田舎味/野性味も出てくることだろうと信じている。41年間、コルドという小さな町から世界に向けてオクシタニア視点からの世界読みのメッセージを送り続けている。世界のどこにもない刺激をわれわれに与えてくれる。ありがたいことです。ずっと続けてください。できればね、次作はもうちょっと00年代にやっていたような実験的サウンドの遊び心を復活させてくれると、私のうれしさは舞い上がるんですけど。
<<< トラックリスト >>>
1. Los papièrs (紙っぺら)
2. Un jorn en pssejada (ある日のお散歩)
3. N'i a pro gadan (たくさんだよ、ろくでなし野郎)
4. Libertat Liberdade (自由、自由*)
(*オック語とカタロニア語)
5. Carnaval (カルナヴァル)
6. A nuèit a la talvera (今宵タルヴェーロで)
7. Buta Butèrna (きばれよ同志)
8. Triste lo cèl (悲しい空)
9. Sus la rota de las chicanas (ジグザグの道で)
10. Tot ço qu'ai (私が見たすべてのこと)
11. M'es contrari (私に反して)
12. Lo rossinhol salvatge (野生のロシニョール)
13. A tu vai (ごたくはたくさんだ)
14. Lo Reiet dels Cons (愚者たちの王)
LA TALVERA "A TU VAI"
CD CORDAE/LA TALVERA TAL21
フランスでのリリース:2020年12月
カストール爺の採点:★★★☆☆
(↓)2020年9月発表のラ・タルヴェーロ最新クリップ "LA FEMNA DEL FABRE"。ただしこの曲は(↑)のアルバムに入っていない。
(↓)2020年9月発表のラ・タルヴェーロ最新クリップ "LA FEMNA DEL FABRE"。ただしこの曲は(↑)のアルバムに入っていない。
(↓)2020年11月発表のラ・タルヴェーロ最新クリップ "SENHER FRANCES" 。ただしこの曲も(↑)のアルバムに入っていない。
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