2007年12月27日木曜日

山師トマ



 トマ・フェルセン『ノミ掻きの歌』(ポケット版ベストアルバム)
 Thomas Fersen "Gratte-moi la puce"(Best of de poche)


 ウクレレレレのレ。ホノルルルル。
 爺も子供の頃弾いてました。「カイマナヒラ」やら「竹の橋の下」やら。もちろん「タフアフアイ(ああやんなっちゃった)」も。牧伸二とタイニー・ティムね。牧伸二の女性版は? マキシン・ナイチンゲール!.... (頭いた。こういうのを北中さんは”オヤジギャグ”と言っていたんだろうな,と今急に自覚しました)。
 減ることを知らぬフェルセン。これが何枚めのアルバムでしょうか。ポケット版(文庫版)ベストアルバムと副題された,トマ・フェルセンの自選ベスト/ミニマル再録アルバムで,トマ(ウクレレ+ヴォーカルと相棒ギタリストのピエール・サングラ(バリトン・ウクレレ,マンドリン,バックコーラス)の二人だけの演奏です。「レ・パピヨン(蝶々)」,「ラ・ショーヴ・スーリ(こうもり)」,「ル・シャ・ボテ(長靴をはいた猫)」,「イヤサント(ヒヤシンス)」など,ライヴでやったら大合唱になってダンスが始まるような曲が,小音量撥弦楽器とトマの自然体ヴォーカルで聞こえてきます。これをレ・ザンロキュプティーブル誌のジョアンナ・セバンは「ストリップ・ショー」なんてうまい表現で評していました。確かに歌と声が裸にされる感じですね。この裸の感じがすごく良いのですね。こんなにきれいな旋律だったんだ,こんなに優しい言葉だったんだ,というのがくっきり浮き上がってきますね。
 編曲で旧友で偏屈な弦編曲の鬼才ジョゼフ・ラカイユの名前も出ていて,謝辞に「ウクレレ道を伝授してくれてありがとう」と書いてありました。つまりトマにウクレレの道を開いたのはラカイユさんだったのですね。ラカイユさんもドミニク・クラヴィック等のウクレレ・クラブ・ド・パリ(発音にうるさい人はユクレレ・クリュブと言うのかな)のメンバーです。
 聞いているうちに「吟遊詩人」という言葉がこれほどぴったりするスタイルはないのではないか,と思うようになりました。電気のないところでも,通りでも,地下鉄内でも,このスタイルでトマとピエールの二人はかなりの人たちを周りに集めて演奏できると思います。多くの人たちはそこでトマ・フェルセンをじっくり歌詞聞いて味わおうという気になるはずです。裸に近いこのスタイルで,トマは本当に聞かせてくれる芸人ですね。次はもっと脱いでくれるかもしれません。
 ピエールはやはりマンドリンがいいです。あの「鳥の舞踏会」(1993年。爺の本にも出てきた)のマンドリンが秀逸です。

<<< Track List >>>
1. LES PAPILLONS
2. MONSIEUR
3. CROQUE
4. LA CHAUVE-SOURIS
5. PEGASE
6. DIANE-DE-POITIERS
7. HYACINTH
8. JE SUIS DEV'NUE LA BONNE
9. LE CHAT BOTTE
10. ZAZA
11. LE BAL DES OISEAUX
12. LES MALHEURS DE LION
13. PIECE MONTEE DES GRANDS JOURS
14. MON MACABRE
15. GEORGES
16. LOUISE
17. BELLA CIAO
18. BIJOU
19. SAINT-JEAN-DU-DOIGT
20. LA BLATTE

CD TOT OU TARD 2564696890
フランスでのリリース:2007年11月

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