2026年10月2日金曜日

ライク・ア・ヴァージン

”Mémoire de fille"
『娘の記憶』

2026年フランス映画
監督:ジュディット・ゴドレッシュ
主演:テス・バルテレミー、ヴァレリー・ドレヴィル、ヴィクトール・ボネル
原作:アニー・エルノー『娘の記憶』(2016年)

フランス公開:2026年9月30日

ノーベル文学賞作家アニー・エルノーの自伝的小説『娘の記憶』(2016年刊、なんで日本語訳刊行されてないのぉ?)の映画化。近年は女優としてよりも映画界MeToo運動の騎手/大物フェミニストとして名を上げているジュディット・ゴドレッシュが脚本/監督(監督作品としては2作目)し、ゴドレッシュの娘テス・バルテレミー(現在21歳)が主演(アニー役)している。

 時は1958年、ノルマンディー地方の田舎の畜産食料品店の娘アニー(自己紹介の時”17歳半”と強調している)(演テス・バルテレミー)が、夏休みバイトで地方の城館を宿舎とするコロニー・ド・ヴァカンス(子供たちのヴァカンス合宿滞在)のお世話係(アニマトリス)として現地に赴く。窮屈な親元から離れて、ひと夏の間、(子供たちが寝静まったあと)同世代のアニマトゥール/アニマトリスたちといろいろ(いけない遊びも含めて)享楽しよう、あわよくば“出会い”もあるだろう、あわよくば“性体験”もあるだろう、とも思うのだが、聡明で感受性の強いアニーには想像と違う現実があった。同意も不同意もなく“成り行き上”の初の性体験は、天井の電球を見つめるだけの数分間で、結局“失敗”に終わる。それでも逞しい肉体と高圧的で身勝手な性格の男H(アニマトゥールのリーダー、23歳、フィアンセあり、未来の高校教師、演ヴィクトール・ボネル)を恋してしまい、それは成就するわけがない。孤立を恐れ、みんなと同じようでありたい、という弱さのあるアニーは成り行きで夜遊びの中に入り浸って、男たちに弄ばれ、女たちから軽蔑され、それでも…。巨食・拒食・生理不順… 精神を病んで夏は終わり、貧乏な家から独立自立するために、成績抜群にもかかわらず進学を捨てて家庭科教師になると、進路を変えた頃、リセの女哲学教師の講義で実存主義を知り、ルーアンの本屋でボーヴォワール『第二の性』を万引きする…。
 あの時代、多くの娘たちが同じような体験をしたかもしれない。決して楽しかったことばかりではなく、“性”のことも含めて、さまざまな抑圧と対峙していた青春期。1968年(5月革命)はその10年先のこと。田舎、封建的でカトリック的な環境、男たちだけが(若くから)勝手にふるまえた時代に生きていた17歳の夏。そういうことがよく浮き彫りにされている映画。テス・バルテレミー、素晴らしい熱演。

カストール爺の採点:★★★☆☆

(↓)『Mémoire de fille 娘の記憶』予告編

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