2008年3月13日木曜日

バタクランで「シェ・ルプレスト」



 3月12日,パリ11区バタクランで,アラン・ルプレストとそのゲストたちによるコンサートでした。超満員で,外には入れない人たちがかなりいました。うれしいですねえ。年齢層は高いとは言え,本当にシャンソンの好きな人たち。ヴァリエテ系のファン層にありがちなアーチストと一緒に大声で唱和してしまうなどということは皆無の,じっくり聞く人たちばかり。一曲が終わるたびに「ブラボー,ブラボー!」の大喝采でアーチストを讃える人たちばかり。歌が聞こえ,歌詞がわかり,詩情が場を支配していまって,聴衆との交感が大きなヴァイブレーションになってしまうタイプのコンサート。
 舞台の上にビストロがあり,椅子とテーブルが並び,ギャルソンが給仕します。第一部で6曲ひとり(+ピアノ伴奏)で歌ったルプレストが,そのビストロに腰を降ろし,ビールを飲みながら,第二部のアルバム「シェ・ルプレスト」参加のアーチストたちによる歌を聞きます。盟友ロマン・ディディエ(ピアノ&編曲指揮)が,ピアノ,クラリネット,チェロ,アコーディオン。ギターのアンサンブルでゲストたちの歌をサポートします。エンゾ・エンゾ,ダニエル・ラヴォワ,オリヴィア・ルイーズ,エルヴェ・ヴィラール,ジャン・ギドニ,ジェアン,イーヴ・ジャメ(途中で歌詞を忘れて,ルプレストの絶妙の助けで救われている!),モン・コテ・パンク,アニエス・ビール,ニルダ・フェルナンデス,ロイック・ラントワーヌ... シャンソンという名の大家族が集まって,ルプレストのシャンソンを祝福しあっている図です。
 ルプレストは足もとこそ時々不安定になりますが,酔漢の哀歌(ブルース)的なダミ声歌唱は,ぐさぐさと聞く者の胸に突き刺さるパワーにあふれていました。翼から火を吹くボーイング機の中で家族に遺言する「大阪から東京まで」も歌いました。
 4月19日にウーロペアン座でもう一度「シェ・ルプレスト」コンサートが開かれます。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

アラン・ルプレストは、爺がコンサートに
行く事を知っていたのかしら?
それとも、いつも「大阪から東京まで」を演奏するのかしら。
あれから23年、日航ジャンボ機墜落事故のことを
話す日本人は減ってきています。いや、ほとんどいません。
忘れられてきています。遺族も歳をとってきています。
是非とも、彼のアルバムを日本盤で出して欲しい
と思っております。ちゃんと解説と歌詞カードを付けて。

Pere Castor さんのコメント...

さなえもん,おはようございます。
「大阪から東京まで」はルプレスト自身好きなレパートリーで,東洋旋律風なアレンジのピアノで,しっとり歌います。炎につつまれたボーイングの中で落ちていく歌の最終部では,両手を上げて頭上で両手を結んで暗転です。
ただ事実を歌っている歌ではなくて,それにインスパイアされた歌なので,実際の便が「羽田から伊丹」の便だったこともアランは知らなかったのです。歌ですから。それはそれで歌として成り立ちます。海に落ちていく歌ですけど,実際は山に墜落してますし。それはそれでいいんです。

このアルバム『4』の日本盤はかつてオーマガトキが出していて,大野修平が訳しているはずです。中古盤見つけたらゲットするべきでしょう。