2018年7月14日土曜日

思えばマッケイよ

(予告)
ムッスーT&レイ・ジューヴェン『オペレット 第2集』
Moussu T & Lei Jovents "Opérette vol.2"

フランス発売:2018年10月19日

これはマニヴェット・レコーズ(Manivette Records)によるプレスリリース全文です。文中にあるクロード・マッケイ著『バンジョー』(1929年)については、後日、本ブログにて紹介します。お楽しみに。


えばムッスーT&レイ・ジューヴェン(1)というバンドの成り立ちはひとりのジャマイカ人に負うものであった。その人は偉大なる作家クロード・マッケイ(1889-1948)であり、その小説『バンジョー』との出会いがわれらがバンドに、世界に開かれた大港湾都市としてジャズを受け入れた頃のマルセイユの音楽史をより深く知りたい、その豊かな音楽性とミクスチュアを再現してみたいという強い欲求を抱かせたのだった。あれから15年近い日々が流れ、ムッスーT&レイ・ジューヴェンは今や押しも押されぬオクシタニアのシャンソンの「顔」となり、オクシタニアの都市的詩情とクレオールのリズムとバンジョーとブルージーなギターを混ぜ合わせた今日的なブルースを生み出している。マッシリア・サウンド・システム(2)MCとギタリストであるタトゥーとブルーによって結成され、当初はマッシリアのサイドプロジェクトのひとつにすぎなかったのだが、それは少しずつフランスの音楽シーンで最も刺激的なバンドのひとつとなっていった。

クロード・マッケイの60周忌に当たる2008年、マルセイユの歴史学者ピエール・エシナールの尽力により、二人はアメリカのジャズがマルセイユ港に上陸した頃の豊富な演奏演目資料を探求することができ、この頃のプロヴァンス地方のアーチストたちの才能と驚くべき新しさをさらに発見するに至ったのである。2014年、誇り高くも『オペレット』と名付けられたアルバムの第1集を掲げ、かねてよりマルセイユのシャンソン伝統に色濃く染まっていたムッスーT&レイ・ジューヴェンは、ようやくにしてその偉大なる先達たちにオマージュを捧げることとなった。「マルセイユの大衆音楽の歴史の中に参画すること、それはとりもなおさずこの1930年代のマルセイユ歌謡と出会うことであり、このマルセイユ歌謡は結果としてマルセイユ文化として全国規模の大成功を収めた最後の文化表現となった(中略)。このマルセイユの人々は世界に向かって耳を開き、今の俺たち自身も日々試みていることだが、港の波止場に陸揚げされる音楽と土地の伝統的な歌謡を混ぜ合わせた新しい音楽ジャンルを創造したということがはっきりとわかった。このマルセイユの音楽ジャンル(すなわちオペレット)は、プロヴァンスの伝統とイタリア大衆歌謡とベル・カントとアフロ・アメリカン音楽の出会いの産物であった、ということが俺たちには明白になったんだ。」

マルセイユのオペレット楽曲を集めたアルバム今回の第2集にあたって、ムッスーT&レイ・ジューヴェンは二つの世界大戦に挟まれたこの文化的に実り豊かな時期の重要さを重ねて強調し、その甘美さと技巧とユーモアセンスで今日の好みに合わせて再現されたあの時代のレパートリーを(再)発見する旅へと私たちを誘う。第2集に収められた13曲のうち、12曲は当時の楽曲のカヴァー、そして1曲はオリジナル新曲。ここでムッスーT&レイ・ジューヴェンはヴァンサン・スコット、ルネ・サルヴィル、アリベール、ジョルジュ・セレルスといったオペレットの創始者たちに素晴らしいオマージュを捧げているだけでなく、いくつかの希少な真珠のような曲も発掘し、さらに1曲サプライズとしてモリアーティのローズマリー・スタンレーがゲストとして参加、J'ai rêvé d'une fleur(「私は花の夢を見た」曲ヴァンサン・スコット、詞ルネ・サルヴィル、創唱アリベール&ジェニー・エラ、1932年)をタトゥーとデュエットで披露している。私たちが喜んで口ずさむことになろうこれらのメロディーは、往々にして私たちの日常を写す鏡であり、今日的に時事的であったりもする。結びとしてムッスーTの言葉を引用しよう:「このオペレットの大きな浴槽に浸かっていくにつれて、われわれの先達たちの歌はどんどん今日の日常生活のありように近づいていって、果てにはその歌を演奏しながら俺たちは俺たち自身が作った歌を演っているような気がしてくる。このエスプリに則って、学術的かつ文化保存の見地からは遠く離れて、俺たちはこのささやかなマルセイユ・シャンソン名曲集を世に送り出す。それは俺たちにとっては博物館の陳列品ではなく、俺たちの毎日に役に立つ道連れとなるはずだから。」  
(↓) "Opérette Vol.2"のティーザー。


追記(2018年7月30日)

クロード・マッケイの小説『バンジョー』については、月刊ラティーナ誌2018年9月号(8月20日発売)の拙連載「それでもセーヌは流れる」の『マルセイユ1920年代のブラックネス』という記事で長々と論じています。そちらを参照してみてください。

それからムッスー・テ&レイ・ジューヴェン新作『オペレット第2集』 に関しては、同じくラティーナ誌の2018年10月号(9月20日発売)に詳細紹介すると、予告してしまいました。爺ブログでなくてゴメンなさい。

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