2010年11月29日,ギタリストのセルジュ・テッソ=ゲーが脱退表明。ヴォーカリスト,ベルトラン・カンタとの「情動的、人間的、音楽的な不一致 désaccords émotionnels, humains et musicaux」が原因と言いました。それに加えてセルジュはこの数年間にバンドの中に存在した「ある種の露骨な感情 un sentiment d'indécence」という言葉も使っています。おそらく獄中および出獄後のベルトランの挙動に、もう理解不能のものを見ていたのだ,と解釈できます。 この時点でメディア(ラジオ,新聞雑誌のインターネット速報サイト等)は、もうノワール・デジールの最後を予告していました。単にギタリストの脱退ではなく、バンドがもう立ち行かないことは明白だったようです。 翌日11月30日,ドラマーのドニ・バルトが、他の二人(ベルトラン・カンタとベーシストのジャン=ポール・ロワ)の意向をも代弁する形で、3人からの正式発表として開口一番「Noir Désir, c'est terminé ノワール・デジールは終わった」と告げたのでした。「明白でない理由のために、人工心肺を使ってノワール・デジールを延命させることは不可能だ」と。
平年気温より7度低い数日間で、朝は零下,昼の最高気温でも2度〜4度というのが先週から続いていて,それが今週一杯続くという予報です。私は雪国育ちの分際で寒さにからきし弱く(実は暑さにはもっと弱い)、こういう天気の時は、ヴィヴァルディ『四季』の「冬」を聞きながらこたつで丸くなる、というのが常です。最近,日本茶の茶請けに「ダット」(干しナツメ。北アフリカ系のエピシエで良く売っている)がよく合うというのを発見して、渋茶とダットが午後4時頃の習慣になりました。 昨日の日曜日は午後いっぱいかけて,ゼラニウムやあじさいやラベンダーなどのベランダの鉢植えに越冬用の覆いをかけてやりました。この覆いをかけてやっても、ゼラニウムは翌春まで延命したためしがないのですが、3季節がんばって咲いててくれたんだから、愛情だけはかけてあげませんと。 マルセル・カンピオンがラジオのコマーシャル・スポットで、今年も大観覧車,クリスマス市,氷の彫像館「アイスマジック」があるから,シャンゼリゼにおいで、と宣伝しています。シャンゼリゼは電飾ライトアップがかねてから世界的に有名ですけど、このカンピオンの「クリスマス村 Village de Noel」企画が始まって以来,わしら西洋かぶれだった東北田舎のガキどもが夢見た,まさにそのままの「ウィンターワンダーランド」が現出してしまったのです。 そう言えば,わが家の向かいのドメーヌ・ド・サン・クルーの(冬に何度か雪化粧する)白い森も、ガキの私が夢見ていた「ウィンターワンダーランド」に似ているでしょうね。たぶん雪の精が棲んでたりするんですよね。
PAPET J vs RIT "PAPET J POINT RIT"
パペー・ジ vs リ『パペー・ジ ポワン・リ』
まずニュースから。
マッシリア・サウンドシステムのライヴアルバムが2011年4月4日に出ます。CD+DVDのセットで、CDは1996年の未発表ライヴ、DVDは2008年7月のカルパントラでのライヴ映像。
タトゥー(ムッスー・T)と共にマッシリアの双頭リーダーでMCのジャリ(パペー・J。本名ルネ・マッザリーノ)の、サイド・プロジェクトで「パペー・J & ソレイ FX」に続くアルバムです。ソレイ FXと言っても実体はバンドはないのでほとんどソロ・プロジェクト(機械じかけのラガ)であった前作に対して,今回はマルセイユ1974年生れの若きマルチ・インストルメンタリスト,Rit(リ)とのデュオです。アルバムのタイトル字の大きさや,ジャケの顔写真の大きさから判断しても、リ君の方が同格以上の目立ち方です。
リ君の経歴を見ますと、ブルース/ロックをベースにしながら、ベナンのバンドと共にベナン,ギネア,アルジェリアなどを回ったこともあり、楽器テクとスタジオワークに長けた「ひとりオーケストラ」的なミュージシャンで,ギター使いやオーケストレーションで"-M-”(マチュー・シェディド)に近いものを感じさせます。
アルバムは10曲めの"PAUVRE DE NOUS"(マッシリアの2001年アルバム"3968CR13"の中の1曲でジャリ/タトゥーの作品)のリプリーズを除いて,全曲パペー・J/リの共作ということになっています。タトゥー/ブルー組(ムッスー・T&レイ・ジューヴェン)に触発されたのでしょうか、ギターが良く鳴るブルース・ロックが3曲あります。(私の先入観では、ジャリの守備範囲とはちょっと違うような気がします)。
マッシリア流儀に近い「港町シャンソン」系の9曲め「カバノン」(マルセイユ海浜地区の小別荘というよりむしろ小屋住宅)が美しいし、これもマッシリア流儀である世相批判の曲が3曲(3. "PRESSEIONS/REPRESSION", 4. "HUMANITY", 7. "A QUOI BON")。そして前述の"PAUVRE DE NOUS"(10曲め)あたりが、怒れる「マッシリアのジャリ」をモロに感じさせてくれます。
しかしその他は、リ君と全く新しい冒険に挑んでいるような、新しいサウンドに遊ぶジャリの顔です。そりゃあマシーンだらけのラガ仕立てだった「ソレイFX」に比べたら,たいへん多種多様な音楽で、ひとえにリ君の力なんでしょうが、そのヴァラエティーにおいてはムッスー・T&レイ・ジューヴェンとレヴェル的に近いように思えます。願わくば,パペー・ジャリがもっとはっきりした主導権を発揮してくれないと、リ君のサウンド遊びにジャリのキャラクターが希薄化されることになりかねません。
終盤4曲(9-10-11-12)すべて好きです。
<<< トラックリスト >>>
1. RUELLES
2. FIN DE SEMAINE
3. PRESSION / REPRESSION
4. HUMANITY
5. SUR CETTE TERRE
6. JE REVE
7. A QUOI BON
8. VOODOO CHILD'S
9. CABANON
10. PAUVRE DE NOUS / POURQUOI? (VERSION 2010)
11. HEY GUS
12. JE M'ESCAPE
PAPET J vs RIT "PAPET J POINT RIT"
CD ROKER PROMOCION RP1003
フランスでのリリース 2010年10月18日
(↓)『パペー・ジ・ポワン・リ』のオフィシャル・ヴィデオクリップ "FIN DE SEMAINE" Fin de semaine - PapetJ.Rit | Clip officiel envoyé par visiontrouble. - Regardez la dernière sélection musicale.
FAMILY OF THE YEAR "OUR SONGBOOK" ファミリー・オブ・ザ・イヤー『アワ・ソングブック』
タイトルの出典は1971年のコカ・コーラ社のキャンペーンソング"I'd Like To Teach The World To Sing (In Perfect Harmony)"の日本語題で、ザ・ニュー・シーカーズ等が歌っておりました。今聞くと虫酸が走りますが。 ファミリー・オブ・ザ・イヤーは加州のバンドです。中心人物のジョセフとセバスチャンのキーフ(Keefe)兄弟はウェールズ系らしいです。この「キーフ」という名前に、フランスの某音楽雑誌は(こじつけで)反応して、現代フランスの若い衆言葉である「Kif」(キフ = 好き,愛する)と同じ語幹を見取って,新しい時代の「ラヴ&ピース」にふさわしい名前である,なんて言うんですね。 第一音を聞いた時から,けばいフラワー・ペインティングを施したVWミニバスで行く、陽光あふれる加州で出会うインド綿チュニック着た長髪族男女が,半分眠ったような目で微笑みかけてきて、花をめしませ、めしませ花を、なんていう世界へトリップさせる音楽です。スティーヴン・タイラー(エアロスミス)は、このバンドを称して「アシッドをやっているママス&パパス」とたとえました。まさに。この男性4人+女性2人のアコースティック・バンドの第一の武器は混声コーラスハーモニーです。ママス&パパス,ビーチ・ボーイズ,(転向後の)フリートウッド・マック、(転向後の)ジェファーソン・スターシップ,すなわち加州のポリフォニー。 2009年に加州のWashashore Recordsというインディーレーベルから出た4曲入りEP"Through the Trees"とフルアルバム"Songbook"からセレクトした14曲を、フランスのインディーレーベルVOLVOXが新しいジャケットアートで包んで2010年11月にリリースしたのが,この『アワ・ソングブック』というアルバム。 この2〜3年,MGMTやアーケイド・ファイアの台頭をうれしい思いで見ていた爺のような愛サイケの人たちが飛びついたアルバムです。これは決してザ・ニュー・シーカーズあたりにノスタルジー持っている人たちが買ったアルバムではありません。RADIO NOVAは夏頃からエレクトロ・サイケな "PSYCHE OR LIKE SCOPE"をヘヴィー・ローテーションで、このバンドをいち早くフランスで紹介しました。もろビーチ・ボーイズな"SUMMER GIRL"も夏の終わりに聞いたら涙ものでしょう。来年夏,ROCK EN SEINEに来てくれたらなあ、と密かに期待しております。
<<< トラックリスト >>> 1. LET'S GO DOWN 2. INTERVENTION (STAPLE JEANS) 3. STUPIDLAND 4. PSYCHE OR LIKE SCOPE 5. FEEL GOOD TRACK OF ROSEMEAD 6. SUMMER GIRL 7. THE PRINCESS & THE PEA 8. CASTOFF 9. TREEHOUSE 10. SURPRISE 11. CHUGJUG 12. THE BARN 13. NO GOOD AT NOTHING 14. HERO
FAMILY OF THE YEAR "OUR SONGBOOK" CD VOLVOX VOL1008 フランスでのリリース:2010年11月
(↓ "STUPIDLAND" オフィシャル・ヴィデオクリップ)
PS : 2011年1月10日。 Radio Novaで昨秋おおいに流行った「サイケ・オア・ライク・スコープ」のオフィシャル・クリップが完成。往年のニュー・エイジっぽさが...。マジなんでしょうか。
早いものです。バベットのソロアルバム『Drôle d'Oiseau奇妙な鳥』は3年前(2007年)のことだったのですね。その年最も印象に残ったアルバムの1枚なのに、ブログに紹介されていなかったのは、このブログ開設前に出ていたアルバムだったからでした。
ディオニゾスのヴァイオリン奏者。最初はなぜこんなノイジーなバンドに、普通の娘っぽい佇まいのヴァイオリニストがいるのか、とても不思議でした。超強烈な個性とエゴと才能の持ち主マチアス・マルジウ(ディオニゾスのリーダー)の影で,10年も一緒にやっているのはよっぽどのことだと思いますよ。その間にマルジウはオリヴィア・ルイーズの公私とものパートナーになってしまいましたし。オリヴィア・ルイーズの才能の開花というのはマルジウに超ラジカルに触発されてのこと,というのは疑いの余地がありません。私はオリヴィア&マルジウのカップルは、今フランスで最も輝いているように見ています。
そう言えばマチアス・マルジウの小説『時計じかけの心臓』が,リュック・ベッソンのプロデュースで3Dアニメーション映画化が進行していて、2012年公開だそうです。亡くなったバシュングを除いて、CDアルバムに出演した人たち(オリヴィア・ルイーズ,マチアス・マルジウ,グラン・コール・マラード,エミリー・ロワゾー、ロッシー・デ・パロマ,ジャン・ロッシュフォール...もちろんバベットも)が全部そのまま声優となって出るようです。その映画サントラの音楽の一部をバベットも担当するのだそうです。(リュック・ベッソンという偏見を捨てて)この映画非常に楽しみです。
さてバベットは、そういうマルジウ路線とはっきりと一線を画する,さわやかなフォーク・アルバムをソロ第一作として発表したのですが、2010年のこのセカンドアルバム『ピアノ怪獣』は、ポップで物語性があり、なにか『時計じかけの心臓』にも近いものを感じさせるアルバムになっています。近いもの、と言うよりは、マチアスには『時計じかけの心臓』みたいな大作ができたけれど、私には鼻歌でこんなのができちゃったのよぉ、というお茶目な対抗意識みたいなものが感じられます。
13曲中6曲がデュエット曲(12曲め"TES YEUX DANS CE BAR"では、マチアス・マルジウとアンディー・メストルとバベットの掛け合いなのでトリオ曲ですね)という構成では、どうしてもソロアルバムというより,ミュージカル仕立て/昔のジャック・ドミー映画風な雰囲気がまさります。前作のような生ギター主導のフォーク風な音が後退して、ピアノ(まあ一種の主役ですから)やストリングスが小アンサンブルとなってバックを固め,その上に少女の物語がモノローグやダイアローグになって歌われる,という作りです。ディヴァイン・コメディー(ニール・ハノン)みたいでもあり、小劇場のオペレッタみたいな雰囲気もあります。
ピアノ弾きの少女はたった一度の弾き間違いのために、ピアノ怪獣に囚われてしまいます。アルバムはこう始まります。こういう始まりですと、少女がさまざまな知恵を働かせて,いろいろな人たちの助けを借りて,このピアノ怪獣から逃げ出す冒険物語のようなものを期待するじゃないですか。ところが進行していく歌の歌詞を追っていくと、そういう筋書きのはっきりしたストーリーではなくて、夢の中の話のように、いろんなところに飛んでしまうので、絵本的結末などなく、拡散してしまうのです。あるいは、このアルバムは来るべき大作『ピアノ怪獣』物語の断片的挿入歌集なのかもしれません。
共演するメンツはヒュー・コルトマン(英国のフォーク・アーチスト,元THE HOAX)、アンディー・メストル(モンペリエのバンド,フーディーニのリーダー)、男優エドゥアール・ベール,アルチュール・アッシュ,そしてディオニゾスのマチアス・マルジウ。
ベース(ステファン・ベルトリオ)とドラムス(エリック・セラ=トジオ)はディオニゾスのメンバー。そしてこのアルバムのバベットに次ぐ準主役とでも言うべきピアニスト氏はシルヴァン・グリオット(クラシック/コンテンポラリー/エクスペリメンタル系のピアニスト/作曲家のようです)。プロデューサー(フランス語で言うところのréalisateur)は超売れっ子のジャン・ラモート(バシュング,ラファエル,ノワール・デジール,ヴァネッサ・パラディ,サリフ・ケイタ....)。
マルジウの『時計じかけの心臓』に比べてはいけないのでしょうが、物語という点では全然弱いものの、不思議の国のアリスみたいな飛び方はバベットの個性とよくマッチしていると思います。この個性的な鼻歌ヴォーカルと、マルジウより豊かであろう楽識がしっかり裏打ちしたようなメロディーが、バベットという不思議なキャラクターを作っています。
ベストトラックはエドゥアール・ベールとのデュエット『Le Miroir』(7曲め)。11-12-13曲は3つともとても好きな曲ですが、もっと工夫があってほしい(もっとドラマティックであってほしい)。ひょっとしてバベットはソングライター/コンポーザーとしての方が資質がもっとはっきり発揮できるかもしれない、とも思いました。これは前々からケレン・アン・ゼイデルに対して思っていたことでもあります。
<<< トラックリスト >>>
1. PIANO MONSTRE
2. LES AMOURATIQUES (feat. HUGH COLTMAN)
3. LA COULEUR DE LA NUIT
4. JE PENSE A NOUS
5. CIEL DE SOIE (feat. ARTHUR H)
6. LA CHAMBRE DES TOUJOURS
7. LE MIROIR (feat. EDOUARD BAER)
8. MEXICO (feat. ANDY MAISTRE)
9. LAIKA (feat. ARTHUR H)
10. LONDON INEDITE
11. LE BEL ETE
12. TES YEUX DANS CE BAR (feat. MATHIAS MALZIEU, ANDY MAISTRE)
13. UNDERWATER SONG
BABET "PIANO MONSTRE" CD V2 / UNIVERSAL MUSIC FRANCE 2749783 フランスでのリリース 2010年9月27日