2021年4月8日木曜日

Just a rigolo

 Henri Salvador "Homme Studio 1970 - 1975"
アンリ・サルヴァドール『オム・ステュディオ 1970 - 1975』

好調のBorn Bad Records(ジャン=バチスト・ギヨー)から、アンリ・サルヴァドール(1917 – 2008)の自身の独立レーベルRIGOLOの自主録音を集めた編集盤、題して『オム・ステュディオ(Homme Studio) 1970 - 1975』。言うまでもなく"ホーム・スタジオ"との掛け言葉であるが、奥方(2番目の妻)で広い見識と采配力を発揮してサルヴァドールを列強レコード会社(バークレイ、フィリップス、ヴォーグ、パテ...)の旧体制から解放させ、自主管理(マネージメントは奥方)のレコード会社RIGOLOを設立させたジャクリーヌ(写真、1971年ジャクリーヌとアンリ↓)の功が最も光っていた頃。

 1970年ヴァンドーム広場のアパルトマンをDIYで改造したRIGOLOスタジオには、各種ギター(知らないムキはいないだろうが、サルヴァドールはたいへんなヴィルツオーゾ・ジャズ・ギタリスト)、スタインウェイ、キーボード、アナログシンセ、リズムボックスがあり、ヴォーカルとコーラスはいくらでも自身が多重録音する。弱点はベースだったと言われているが、キーボードとギターでカヴァーする。ほとんどひとりで全部やった。お立ち会い、50歳すぎたおっさんが、見よう見真似でトッド・ラングレンになってしまったのだよ。このスタジオ凝り性の極致。こういう角度でアンリ・サルヴァドール聞いたことありますか?
 この絶頂期にジャクリーヌが1976に50歳の若さで病死し、サルヴァドールのRIGOLO期は終焉するのです。それから長い暗黒時代があり、長〜〜〜いトンネルを抜けるには2000年の”Jardin d’Hiver”(ケレン・アン+バンジャマン・ビオレー)まで待たねばならなかったのだよ。

 1969
年から1978年までの録音16曲。未発表曲こそないけれど、みな驚くほど新鮮に聞こえるはず。(テープレコーダによる)サンプリング、テープ回転操作、自作効果音、ヴォイスモジュレーター(ヴォコーダー)など、フランソワ・ド・ルーベ(1939 – 1975)の同時代の実験にも通じる“エレクトロ先駆”の側面も浮かび上がる。詳細で愛情あふれる解説を書き上げたグイド・セザルスキー(ACID ARAB)にもリスペクト。サルヴァドール再発見への格好のガイド。


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トラックリスト >>>

1.Thème du bateau (1971)
2. Siffler en travaillant (1971)
3. Et des mandolines (1974)
4. L’Amour, va, ça va (1977)
5. Kissinger, le duc Tho (1973)
6. J’aime tes g’noux (1975)
7. Sex man (1972)
8. On n’est plus chez nous (1969)
9. Hello Mickey (1971)
10. Pauvre Jésus Christ (1972)
11. Le bilan (1971)
12. Marjorie (1971)
13. Le temps des cons (1975)
14. Rock star (1977)
15. Un jour mon prince viendra (1973)
16. On l’a dans l’baba (1978)

Henri Salvador "Homme Studio 1970 - 1975"
LP/CD/Digital Born Bad Records BB141

フランスでのリリース : 2021年4月2日

カストール爺の採点:★★★☆☆

(↓)"Et des mandolines" (1971年)

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