2016年4月11日月曜日

坂の上のマシュマロ

クリオ「シャマロウズ・ソング」
Clio "Chamallow's song"


 2016年4月1日発表のクリオのファーストアルバム『クリオ』の3曲めに入っている歌。左の写真が示すように、ブルターニュ地方アルモール海岸にある海浜城壁都市サン・マロを舞台にした、恋の別れの歌。"Chamallow"(シャマロウ)は手っ取り早く言ってしまえば「マシュマロ」のことなのですが、 19世紀フランスの菓子職人がウスベニタチアオイ(フランス語で "Guimauve"ギモーヴ、英語で "Marsh Mallow"マーシュ・マロウ)と蜂蜜と砂糖と卵白から作ったものがオリジナルとされていて、フランスでの名前は「ギモーヴ」でした。しかし、欧州駄菓子界の寡占的大企業である Hariboが、これを "Chamallow"(シャマロウ)という名で商品化した結果、フランスでもこのマシュマロ菓子は「ギモーヴ」よりも「シャマロウ」が一般的な名称になってしまったのです。英語文化がオリジナル名を凌駕してしまった感じで、ちょっと悲しい。
 日本では普通にマシュマロですが、その始まりについて、日本語ウィキペディアにこういう記述があります。
1892年(明治25年)に、風月堂が日本で初めてマシュマロを製造・販売した。その際、「真珠麿(マシュマロ)」という漢字が当てられた。
真珠(しんじゅ)に麿(まろ)と書いて、マシュマロと読ませた。卵白色に淡く紅や草色が混じった色は、まこと真珠に似ております。真珠(マシュ)麿(マロ)とは、風雅なお名前ですことよ。ほほほほほ....。
 そしてこの歌の別れの町がサン・マロです。この歌でサン・マロとマシュマロ(原詞はシャマロウ)の脚韻踏みは誰もが了解するところです。
 サン・マロは私にとっても親しい町で、ブルターニュで最も頻繁に行っている海浜リゾート地です。1977年のローラン・ヴールズィの「ロック・コレクション」では、年寄りたちがルイス・マリアノの歌に合わせて踊るような時代遅れな浜辺のように歌われますが、夜になってサン・マロが寝静まると、ラジオからヴァン・モリソン&ゼムの「グローリア」が聞こえて来るのです。そしてクリオの関連から言いますと、エリック・ロメール監督の1996年の映画『夏物語』は、ディナン、ディナール、サン・マロのアルモール海岸を舞台に展開します。この歌に出て来る「マシュマロ君」は『夏物語』のメルヴィル・プーポー演じるガスパールに似ているかもしれません。ガスパールは3人の娘に気がありながらも、その3人から絶縁されるのですから。
 下(↓)の歌詞試訳で、その箇所を「マシュマロ君」としたのは、日本のシクスティーズにヒットしたジョニー・シンバル「僕のマシュマロちゃん」(1964年)とジョニー・ティロットソン「涙くんさようなら」(1965年)を私が勝手に想起したからで、クリオはそういう昭和感覚はありませんよ。ただ、このマシュマロ君(厳密にはシャマロウ君)は、サン・マロの城壁内を涙の洪水にしてしまうのです。ほっぺたの上を次から次へとマシュマロがころがり落ちていくイメージ。粘土アニメのようなダイナミックさです。

サン・マロでのそぞろ歩き
祭りの翌日
パンタロン、薄荷水(マンタロー)
嵐がやってくる直前

私たちは城壁に沿って歩く
それぞれの手は離れたまま
スナックバーで最後の一杯
何も言わずに

波を見つめながら煙草を吸う
マシュマロ君は夢見る
波を見つめながら煙草を吸い
何も消し去るまいと

あなたの優しい顔に
高潮が入り込む
潮が上ってきて拡がっていく
今にあなたの長い睫毛まで届くわ

あなたの目がしみるのは
ジントニックのせいじゃない
二人の別れの席は
プラスチックのガーデンチェア

波を見つめながら流れ出るもの
マシュマロ君は泣く
頬の上でジグザグに転げ回って
彼は胸が苦しくなる

一羽のかもめが飛び去ると
あなたはまたアルコールを
少しずつ口にする
悲しみが過ぎ去るようにと

でもそんなに深く苦しまないで
あなたの小さなウールのセーターや
あなたのブロンドの髪を
愛してくれる人たちがきっといるから

城壁の中を流れていくもの
マシュマロ君は泣く
頬の上でめちゃくちゃに転げ回って
彼は胸が苦しくなる

波を見つめながら流れ出るもの
マシュマロ君...
(Clio "CHAMALLOW'S SONG")





<<< トラックリスト >>>
1. HAUSSMANN A L'ENVERS
2. ERIC ROHMER EST MORT
3. CHAMALLOW'S SONG
4. DES EQUILIBRISTES
5. SIMON
6. LE BOUT DU MONDE
7. PRINTEMPS
8. TU PEUX TOUJOURS COURIR
9. PLEIN LES DOIGTS
10. LE COIFFEUR
11. ERIC ROHMER EST MORT (duet with FABRICE LUCHINI)

CLIO "CLIO"
CD UGO&PLAY AD3637C
フランスでのリリース:2016年4月1日

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