Calogéro "Le monde moderne"
From album "LES FEUX D'ARTIFICE"(2014)
2016年4月25日にVEVOに新しいヴィデオクリップが発表になりました。同日にそのクリップを「独占公開」した日刊紙パリジアンのWEBページによると、2年前に発売されたこの"LES FEUX D'ARTIFICE"というアルバムは、2年間で70万枚を売っている大変なヒット作品です。ヒットもさることながら、確かに良い曲の多いアルバムで、拙ブログでちゃんと紹介しなかったことを後悔しています。
で、アルバム3曲めに収められたこの「新しい世界 Le monde moderne」という歌、私は2年前には全然引っかからなかったのですよ。ふし穴の耳。詞は作詞家でカロジェロの伴侶でもあるマリー・バスティードが書いています。彼女はこのアルバムの12曲のうち4曲の詞を提供していて、そのうちの1曲がこのアルバム最大のヒット曲であり、2015年ヴィクトワール賞のオリジナル楽曲賞に輝いた "Un jour au mauvais endroit"(ある日悪い場所で)(2012年グルノーブル郊外で起った2人の若者の惨殺事件をテーマにした歌です。↓ヴィデオはその現地で撮影されていて出演は現地の人たちです)でした。
さて「新しい世界」です。新しい世界というのは、私の年代の人たち(現在60歳代)が作ってしまった世界のようです。1970年代以降。端的に言うと、離婚がとても簡単にできるようになってできた世界です。私自身も1982年に離婚しています。とても簡単でした。子供はいませんでした。しかしいつの間にか子供がいても簡単に離婚できる社会になってしまったのです。離婚権、女性の自立、養育権、保育システム...いろいろなものが整って、離婚が「悲劇的ドラマ」ではなく、ひとつの「手続き」になっていきました。
フランスで娘を育てて、小さい頃から娘の友だちの家庭のことを知るようになったのですが、離婚、再婚、シングルマザー、シングルファザー、普通にたくさんいました。子供たちは週末によって別れた親の新家庭で過ごしたり、ヴァカンスを半分割りにして、向こうとこっちで、というようなことをやっているわけです。特別なことではありません。みんなやってることですから。それほど別離・離婚・再婚は当たり前のことになってしまったのです。不幸になるよりはずっといいですよ。男女の関係が本当におかしくなったら、大不幸を避けて離れるべきですよ。私はそう思います。と、これは大人の理屈です。ところが、この理屈が子供に通るのか、ということです。
親が憎しみあったり、新しい恋が始まったり...。これがこの歌の「新しい世界」なのです。大人はこの「新しい世界」でうまくやっていけるかもしれない。パパとママは別れても、どっちも幸せになれるかもしれない。ところが子供は同じなのだ、とこの歌は歌っているのです。大人は「新しい世界」に順応して、新しい幸せを作ろうとし、それがダメならまた新しい世界へと入っていけばいい。ところが子供は同じひとりの子供なのだ。
この歌に、離婚が簡単になった世の中を疑問視するようなモラリテはありません。子供も「新しい世界」に入っていくのです。傷つくこともあり、うれしいことだってある。しかしこの傷つき方は、「子供だから」という程度のものではない。
素晴らしいアニメーションによるクリップは女流映画作家アメリー・アローの手になるものです。レ・パリジアン紙が「ジョルジュ・メリエスとジュール・ヴェルヌを想わせる」と評してますが、まさに過去から見た近未来が、私たちの「新しい世界」なんでしょう。「ニュー・ファミリー」などという日本語、もはや誰も使わないでしょうが、あの頃の新しさは、一体何だったんでしょうね?
クリスマスと1月1日の間
駅のホームでは子供たちが
学習かばんと歯磨きセットを
パパからママに手渡す
寝る前のおとぎ話は変わった
救い出すべきプリンセスの数は増えた
僕には二人のパパがいて、二人のママがいる
でも僕はいつだってひとりの子供
ここは新しい世界だけれど
人々はみな同じ
喜びだって苦しみだってある
血を流して傷つく心もある
歌だって同じものさ
この新しい世界でだって
愛し合う人たちがいる
ここは新しい世界だけれど
僕は同じ僕さ
僕には喜びも苦しみもある
僕の心は血を流して傷ついている
でも僕には同じこと
きみだって新しい世界に
去っていってしまったんだ
夏の人々でごった返すビーチでは
たくさんの家族が組み合わせを変える
みんなが好きだった女がいて
みんなからその女を奪った男がいる
その男のことをいつか許す日が来るなんて
誰も考えなかっただろう
でも時と共に人はわかってくるんだ
子供たちの喜びが見えてくるとね
ここは新しい世界だけれど
人々はみな同じ
喜びだって苦しみだってある
顔面から血を流すことだってある
歌だって同じものさ
この新しい世界でだって
愛し合う人たちがいる
ここは新しい世界だけれど
僕は同じ僕さ
僕には喜びも苦しみもある
僕の心は血を流して傷ついている
でも僕にはきみは同じきみで
この新しい世界でも
僕はきみを愛していたんだ
ここは新しい世界だけれど
僕は同じ僕さ
僕には喜びも苦しみもある
僕の心は血を流して傷ついている
でも僕には同じことで
この新しい世界でも
僕はきみを愛していたんだ
("Le monde moderne" 詞マリー・バスティード/曲カロジェロ)
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