2008年5月26日月曜日

クリスタル爺



 『インディアナ・ジョーンズ - クリスタル・スカルの王国』2008年米国映画。
 "Indiana Jones - Rayaume du crane de cristal" スティーヴン・スピールバーグ監督。
 主演:ハリソン・フォード,ケイト・ブランシェット,ジョン・ハート...


 昨日はフランスで「母の日」だったので,娘と二人でタカコバー・ママに高価な贈り物を買い,おまけにこういう超豪華映画にご招待するという,普段ではありえないことをしたのでした。
 その前夜がユーロヴィジョン・コンテストで,数年ぶりで最初から最後まで見るという疲れることをしたのですが,ロシアの人が優勝してしまったのですね。ディマ・ビランという男性歌手の Believeという英語の歌です。フィギュアスケートの元世界チャンピオン(エフゲニー・プルシェンコ)まで舞台に乗せて,国の威信をかけて,みたいな気迫が感じるステージでした。数年前からユーロヴィジョンは「ゲオポリティクス」による点数奪い合い戦争になっていて,大国も小国も同じ持ち点があるので,旧共産圏の新独立小国がこぞって旧宗主国ロシアに高い点を投票しているような政治力の勝利みたいな印象も否めません。
 これは知らず知らずのうちに私たちが蓄積してきたロシアや旧ソ連に対する偏見でもあります。『インディアナ・ジョーンズ』新作も,設定が1950年代ですから主人公の行く手を阻むのはソ連KGBであり,冷血で残忍で狂信集団的に登場します。こういう映画ですからしかたありません。アマゾンの奥地で野営するソ連兵が夜に火を囲んでコサックダンスを踊っている,というのもすごい視点でありますね。
 良い国と悪い国という民の価値観はこういう娯楽スペクタクルの集積によって作られます。国がアプリオリに良い悪いではなく,そのリーダーシップを取る人間や多数派政党の良し悪しで日々変わっているのだから,ということを娘には教えるようにしています。日本は20世紀前半と後半ではずいぶん変わったでしょうし。またダブリュー・ブッシュやサルコジやベルルスコーニがリーダーとして牛耳っている国家が,良い政治を行う国であるはずがない,というのもはっきりしていると思うのですが。ロシアはあの大統領選挙を見たら,自由な国であると信じろと言う方が無理でしょう。われわれ人民はみんな苦闘していますよ。
 それからネバダ砂漠での核実験が出てきます。われらがインディア・ジョーンズは冷蔵庫の中に隠れて,核爆発の超高熱から身を守ります。核実験というのはこうなるとギャグですね。被爆したインディーはシャワーで体を洗って,それで平気なんですから。1950年代のアメリカ人の核兵器観(アトミック・ルックとかアトミック・ヘアーが流行ったり)なんでしょうが,2008年にこれを持ち出すのは許されるでしょうか?この部分は日本の皆さんに注意深く見て欲しいと思います。

 と,まあ,かたい話は置いといて...。
 この映画の中で,インディー・ジョーンズは自分に息子がいることを知らされます。自分の前に唐突に出来の悪い息子が現れてしまいます。娘は,もしも私にこんな隠された息子がいたら,ということを考えてニヤニヤします。「ひょっとして,わたしにお兄ちゃんがいたりして....」と。タカコバー・ママは,1980年代以前のあんたのことは何も知らないんだから,と娘の想像を増長するようなことを言うのです。私は頭部がクリスタル化する思いがしました。
 

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