l'indéboulonnable
Shinzo Abe"
2017年10月23日、リベラシオン紙駐日記者アルノー・ヴォールランの記事の見出しです。"indéboulonnable(アンデブーロナブル)”は見慣れない形容詞ですが、単語を構成する要(かなめ)は "boulon(ブーロン)"で、これはボルト(雄ねじ)ナット(雌ねじ)のボルトを意味します。"boulonner (ブーロネ)"という動詞はボルトねじを締めるということで、逆にボルトねじを緩めてナットから抜いてしまう意味の動詞は "déboulonner(デブーロネ)"です。接尾詞 " - able"は「〜が可能な、〜できる」、そして頭についている接頭詞 " in - "は続く語の意味を否定する働きをします。"in - déboulonn - able"はすなわち、ボルトが固く締まっていてレンチでいくら頑張って緩めようとしてもビクともしない、そういう状態、転じて(人を)地位から引きずり下ろすことができない、(人の)評判をくつがえすことができない、という意味で使われます。
これは10月22日の衆院選挙での自民党大勝を受けての論評ですが、記事の第1行はこうです。
C'est le paradoxe Abe : impopulaire mais élu et réélu sans discontinuer depuis cinq ans.
安倍のパラドックス、それは不人気であるのに5年間途切れることなく当選を繰り返していることである。
(中略)この「投票所の王様」の新たな成功は全面的なものだったがそれは「ピュロスの勝利」にはならなかった。しかしながら世論調査からは安倍と国民の間の不信度の増大が懸念された。賄賂と身内偏重の2つのスキャンダル、国民に批判された安保法制の強行採決、そして日増しに驕りたかぶっていく国会での態度は、この日本保守政治のリーダーに正当性を与えるものではなかった。しかし彼の資質はもう傷がついた。2006年から2007年にかけて初めて政府首班となって完全に失敗した過去がある、この日本政界の「カムバック・キッド」は今日勝利的であるが、脆弱である。この列島の首相として連続5年、まもなく新記録になるが、安倍晋三は2020年のオリンピックまでもつだろうか?(後略)
リベラシオン紙ははっきりとそのカラーを出している左側の新聞なので、そういう読みなんでしょう。ところで一つこの記事で出てくる「ピュロスの勝利」という表現、初めて知りました。紀元前3世紀の古代ギリシャの王で、戦術の天才と言われたピュロスの故事なんですが、戦うたびに大損害を出して自軍兵の数を減らしていくことから、「損害が大きく、得るものが少ない、つまり割に合わない勝利」のことを「ピュロスの勝利」と言うようになったのだそう(日本語版ウィキペディア)。こんな高尚な喩えを出して、安倍の勝利を語ることなんかないのに。
↓(アベ・モワ!)
↓(アベ・モワ!)
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