2015年4月3日金曜日

今朝のフランス語: Du temps de cerveau disponible

HK & Les Saltimbanks "RALLUMEURS D'ETOILES"
アシュカ&レ・サルタンバンク『星に灯を点す男たち』


 今朝のフランス語:Du temps de cerveau disponible (デュ・タン・ド・セルヴォー・ディスポニブル)

 HK(アシュカ)の新アルバムの中の曲、"SANS HAINE, SANS ARME ET SANS VIOLENCE"(憎しみも武器も暴力もなく)の歌詞に出て来る言葉です。最重要の単語は "disponible"という形容詞です。手元のスタンダード仏和辞典では
a. 1. 自由に処分(使用)しうる; (商品が)入手できる。 Ce produit n'est pas 〜 en ce moment. その品は今は手に入りません。 place 〜 空席。valeurs 〜s 【商】換価資産;【経】流動資産 2. 【行政、軍】待命中の。 3. 手があいている、暇がある。Je ne suis pas 〜 ce soir. 今晩はふさがっている。
といった訳語が出ています。これに従うと Du temps de cerveau disponible は「頭脳が自由に使える時間」「頭脳が空いている時間」というような意味になりましょうか。この言葉を発したのはパトリック・ル・レイPatrick Le Lay)で、時期は2004年、当時この人はヨーロッパ最大の民放テレビ局TF 1の社長でした。当時の第一線企業の経営者の談話を集めた本『Les digigeants face au changement(変動に立ち向かう企業トップたち)』の中で、ル・レイはこう言っています。
Il y a beaucoup de façons de parler de la télévision. Mais dans une perspective business, soyons réaliste : à la base, le métier de TF 1 c'est d'aider Coca-Cola, par exemple, à vendre son produit. Or, pour qu'un message publicitaire soit perçu, il faut que le cerveau du téléspectateur soit disponible. Nos émissions ont pour vocation de le rendre disponible : c'est-à-dire de le divertir, de le détendre pour le préparer entre deux messages. Ce que nous vendons à Coca-Cola, c'est du temps de cerveau humain disponible.
テレビを語るにはいろいろなやり方がある。しかしビジネスというパースペクティヴにあっては現実的であってほしい。基本にあるのは、TF 1の仕事というのは、例えばコカ・コーラ社がその商品を売ることを補助してやることである。ある広告メッセージが知覚されるには、テレビ視聴者の頭脳がそのために空いていなければならない。わが社の番組というのは、それを空けさせる(別訳すれば、自由に使える状態にさせる)任務があり、そのために二つの広告メッセージの間にそれを楽しませたり、リラックスさせたりして、広告知覚の準備をしてやることである。すなわち、わが社がコカ・コーラ社に売っているのは、この人間の頭脳が自由に使える時間なのである。
今から10年以上前のことですが、当時この発言は、商業目的のためにテレビ視聴者を洗脳・白痴化させることがテレビの仕事、という巨大テレビ局トップの本音として大変な物議を醸したものでした。
 私はこの騒動は知りませんでした。2日前に受け取ったHKの新譜の中の曲"SANS HAINE, SANS ARME ET SANS VIOLENCE"(憎しみも武器も暴力もなく)で、この「頭脳が自由に使える時間」という言葉が2回繰り返されていて、一体何のことだろうか、と調べたら、こういう事情がわかったのです。HKのおかげでひとつ博識になりました。ありがっとう。

憎しみもなく、武器もなく、暴力もなく
抵抗から不服従へ
俺たちの夢が石油の値段によってスライドするようになってから
俺たちの人生なんて何の意味もない それは明白だ

この広場から反乱が始まる
重装備隊が俺たちに対峙する
俺たちがそれと対決するのは狂気の沙汰
憎しみもなし、武器もなし、暴力もなし
俺たちは保護されていない動物
俺たちの廃棄はプログラムされている
やつらの商品棚から消え去らなければならない
在庫全品処分の前に

収入の条件など一切なく
やつらは俺たちを追い立てるんだ
最初の銃声を合図に
大量消費材を購入するんだ
やつらのためにこの商品を運ぶんだ
やつらのたいせつな、やつらのハートのターゲット
テレビに洗脳された頭脳の時間 (Du temps de cerveau disponible)
やつらはとても大事にしてるんだ
ハートのターゲットと
このテレビ漬けの頭脳をね (Ce temps de cerveau disponible)

憎しみも武器も暴力もなく
経済成長に麻薬漬けになった
神聖なる財界の説教者たちよ
俺たちはおまえたちに服従しない
俺たちは冒瀆の民である
俺たちに侮蔑を投げつけるがいい
石を投げつけるがいい
おまえたちの催涙弾が俺たちを黙らせるのに十分だと思うか?
俺たちの戦いが「賞味期限つき」だと思うか?
俺たちの意思表示が「使い捨て」だと思うか?

憎しみもなし、武器もなし、暴力もなし
憎しみもなし、武器もなし、暴力もなし

(Sans haine, sans arme et sans violence)




<<< トラックリスト >>>
1. SUR LA MEME LONGUEUR D'ONDE
2. MISTER JUKE (avec DJ BOULAONE)
3. PARA CHUANDO LA VIDA ? (avec LEON PENA CASANOVA)
4. RALLUMEURS D'ETOILES (avec LES MINI-SALTIMBANKS)
5. DOUNIA (avec ABOUBACAR KOUYATE)
6. SANS HAINE, SANS ARMES ET SANS VIOLENCE
7. LE MANOUCHE DU GHETTO
8. MERCI
9. Y A PAS D'PROBLEME
10. THE OLIVE BRANCH
11. SI UN JOUR JE TOMBE
12. JE TE DIS NON
13. A NOUS D'JOUER
14. UN GARS PAS TRES FREQUENTABLE
15. FUKUSHIMA MON AMOUR


HK & LES SALTIMBANKS "RALLUMEURS D'ETOILES"
CD BLUE LINE 
フランスでのリリース:2015年4月20日



PS (4月6日)
このアルバムとその中の曲(最終曲15曲目)の「フクシマ・モナムール」に関する、HK自身のコメントをメールでもらいました。その全内容は、パリの日本語新聞OVNIの2015年4月15日号の記事で書きました。ぜひ読んでみてください。

PS(4月17日)パリの日本語新聞OVNIの2015年4月15日号掲載の記事は(↓)のリンクで読むことができます。
http://www.ovninavi.com/784zizique



1 件のコメント:

UBUPERE さんのコメント...

HKのことを初めて知りました。そして、遅ればせながら「ON LACHE RIEN」も。
OVNIの記事も素晴らしいです。いつも貴重な情報をありがとうございます。