ガルディアン・ド・ラ・ペ Gardien de la paix フランス語の警官という言葉は直訳すれば「平和の警護者」「平和の番人」である。この美しい名前を持った職業がテロの標的となり、37歳の 「平和の守り人」が命を失った。
4月25日、パリ・シテ島のパリ県警の中庭で開かれたグザヴィエ・ジュジュレの追悼式典には、共和国大統領オランド、首相カズヌーヴとその内閣閣僚、パリ市長イダルゴなどの他に、二日前の大統領選挙第一次投票で上位2位となり5月5日の決選投票に進出したエマニュエル・マクロンとマリーヌ・ル・ペンも参列した。ま、それはどうでもいい。2015年1月のシャルリー・エブド襲撃テロ以来、テロリストによって殺害された警官の数はグザヴィエで6人である。大統領オランドの弔辞はその毎回の追悼式典同様「国民的悲しみ」と「テロとの断固たる戦い」を強調するが、唇寒し。しかしその式典で私たちが最も深い感銘を受けるのは、グザヴィエのパートナー、エチエンヌ・カルディル(外務省勤務の外交官)によるエモーショナルな別れの言葉なのだった。WEB版リベラシオン紙に掲載されたその弔辞の大部分を、以下に(無断で)訳してみる。
グザヴィエ、木曜日の朝、いつものように僕が仕事に出かけた時、君はまだ眠っていた。(中略)君は14時からの街頭保安任務につくために、念入りにこの警護服に身を包んだ。君はいつもその外見は完璧でなければならないと考えていたから。君と同僚たちはパリ8区警察署に赴くよう命令を受けた。(中略)君はその保安警護地点としてシャンゼリゼ大通り102番地、トルコ文化会館前と指定された。僕は君がこの種の任務が好きだったのを知っている。なぜならそこはシャンゼリゼ大通りであり、フランスを象徴する場所だったから。君たちはその文化も防衛していたのだから。
そのまさにその時、その場所で君と君の同僚たちの身に最悪の事態がおとずれた。(中略)僕はその夜君なしで帰宅した(声が感極まって押し殺される)極めて深い苦しみと共に。その苦しみはいつの日にか鎮まるものなのか、僕は知らない。(中略)僕個人のことを言えば、僕は苦しんでいるが憎しみはない。"Vous n'aurez pas ma haine"(私はあなたたちに憎しみを抱かない)というアントワーヌ・レイリス(バタクラン・テロ事件で妻を失った男の手記本の題名) の言葉を僕は借用する。そこに込められた苦しみに立ち向かう計り知れない叡智を僕は称賛し、数ヶ月前にその本を読み直したものだった。その生きるための教訓は僕をかくも成長させ、今日僕を守ってくれている。
シャンゼリゼ大通りで何か重大な事件が起こっていて、一人の警官が殺されたという最初のニュースがパリ市民たちの耳に届いた時、小さな声が僕に殺されたのは君だと告げた。そしてその声は僕にこの寛大さと癒しに満ちた"Vous n'aurez pas ma haine"( 私はあなたたちに憎しみを抱かない)という名言を思い起こさせた。
グザヴィエ、憎しみを僕は抱かない、なぜなら憎しみは君に似つかわしいものではないから。憎しみは君の心を躍動させていたもの、君を憲兵隊員から警察官へと導いていったもののいかなるものにも呼応していないから。公共の利益、他者への奉仕、万人の保護といった君の受けた教育と君の信念、そして寛容と対話と節度が君の最良の武器だったのだから。なぜなら「警官」の殻の中には人間がいるものだから。そしてその人間は他者を助け、社会を保護し、不正と戦うという選択をすることなしには憲兵や警官にはなれないものだから。(中略)
僕たちがこの職業について抱いている見方というこういうものだが、それは君という人間の一面に過ぎない。君という人間の他の面では君は文化と享楽の世界を持っていたし、映画と音楽はその多くの部分を占めていた。(中略)喜びにあふれた生活、いっぱいの微笑み、その世界には愛と寛容が絶対の指導者として君臨していた。まるでスターのような生き方、君はスターのように人生から去っていった。(中略)僕はこのような事件の発生を防ぐために戦っているすべての人たちに言いたい。皆さんがこの事件で罪責感や敗北感を抱いているのを僕は知っています。でも皆さんは平和のためにこの戦いを続けなければなりません。(中略)そして、グザヴィエ、君に言いたい。君は僕の心の中に永遠に残り続ける。Je t'aime. 君を愛している。君と僕は誇り高くあろう、平和に見守ってていよう、平和を守っていこう。
私はこれほど誇り高い Je t'aime という言葉を聞いたことがない。グザヴィエ、安らかに。
(↓)4月25日グザヴィエ・ジュジュレの追悼セレモニーでのエチエンヌ・カルディルによる弔辞。
2 件のコメント:
たまたまツイッターに英語字幕版が流れてきて、読みました。
I'm suffering without hatred
という英訳でした。
もし自分の身に起きたときにこう言える自信はないですが、言える自分でありたいです。
UBUPEREです。
"Vous n'aurez pas ma heine"
これほど崇高な言葉はありません。涙が出ます。
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