7年ぶりのオリジナルアルバム『いまわの際に - In Extremis 』(2015年4月27日発表)は、やっぱりそのタイトルでファンの多くは「これが最後のアルバム」と思って緊張して聴いたでしょう。その週の国営テレビFrance 5のアンヌ=ソフィー・ラピックスの番組"C'à vous"に出演したフランシス・カブレルは、ラピックスの質問に「これが最後のアルバムではない」と言い、ファン代表のようなラピックスの「ほら、それをちゃんと言ってくれなくちゃぁ!」という安堵の声を聞いたのでした。それでも「それほど長続きするとは思わない」という留保つきで、カブレルは静かに引退の花道を準備しているような風情でした。それはそれ。アルバムに関しては遅からず別の機会で必ず書きますので、ややお待ちを。
この13枚目の新アルバムのプロモーション中のフランシス・カブレルが、この3月に出版されたカブレル評伝本の中の記載について、私生活侵害・虚偽文書として訴訟を起こして、この本の販売禁止と回収を要求しています。ただならぬことです。問題の本はアラン・ウォドラスカ著『カブレル Les Chemins de Traverse』(L'archipel社刊 2015年)で、著者ウォドラスカは既に40冊を越えるシャンソン・アーチストのバイオグラフィーを発表していて、カブレルに関しても既に2冊の評伝を出版している多作ライターです。
この人の場合、ほとんどが "biographie non autorisée"(ビオグラフィー・ノン・オートリゼ = 本人の承諾を得ていない伝記)のようです。私は "biographie officielle"(ビオグラフィー・オフィシエル = 本人公認のバイオ)よりも、 ライター視点で雑多な情報が多い「ノン・オートリゼ」の方が面白いものが多いと思いますよ。この本も「ノン・オートリゼ」とは言えども、出版時にちゃんとアーチストに1部送って目を通してもらっている(という著者の弁)ようです。
では問題の箇所です。私はこの本買ってないので、雑誌や新聞のインターネットサイトで引用されているものをそのままコピペします。
"La notoriété a fané les amours printanières. Elle a mis sur la
route du chanteur d'autres visages en fleurs. Tandis que la muse s'est
changée en muselière, les deux amants ont scellé un second pacte, qui a
garanti à Mariette le pouvoir de diriger la carrière de l'artiste, le
privilège d'incarner pour lui un repère affectif"